”御茶ノ水 聖橋から”
昨日、新年会で御茶ノ水まで出てきた。
いつものことで多少早めに来てスナップする。
(醜態もまた良し)
新年会がお開きになって、「酔い覚ましにちょうど良いね」
などと夜道を歩き地下鉄で池袋駅まで約30分、
西武池袋線に乗り換えた。
急行飯能行は、発車すると所沢まで停車する三駅を、
およそ10分間隔で止まる。
発車して最初の石神井公園で、ちょっと息苦しさを感じた。
次のひばりが丘で、ドアが開いた時涼しい風に体が楽になった。
ところがいけない、次の所沢まで10分間が、
汗が出てきて、目まいがするのだ。
友人は私の数倍酒が強く私の酒は承知している。
彼に断って、彼とドアの間にしゃがむと、
目まいはすっと止んで正常になる。
普段酔っ払いを見てみっともないと思う状態に自分がなっている。
所沢でかなりの人が降りた。
ドアに近い私の前ではなくその横の席が空いた。
空いた席の前に立っているのは若い女性である。
私は斜めに分け入って座るほどはしたなくない。
ところがその座席はしばらく空いたままだ。
私が顔を上げて席の前の人を見ると、
その女性は、私に座るように勧めているではないか。
お礼を言ってその席に座り、
女性は一つ横にずれて友人が私の前に立った。
体はずっと楽になったが汗がかなり出ていた。
手でおでこの汗をぬぐったら右手がびっしょりだ、
ハンカチは座ってしまったのでズボンから出せない。
そのとき、席を勧めてくれた女性が
やわら、鞄からペットボトルを出して、
私に飲んだらどうかと勧める。
もう栓を開けんばかりだった。
思いもよらぬ心遣いに、私はうろたえんばかりに驚いた。
大丈夫ですからとお礼を言いながら断った。
年の頃二十代半ば位か。
コバルトブルーの入った落ち着いた服装の女性だった。
決して押しつけがましくなく、また周りを気にしする様子もなく、
実に自然な振る舞いだったのです。
夜の混んだ電車の中で、自業自得の酔っ払い。
他人の冷ややかな視線を浴び、
無視されるのが普通と思っていたのに。
こんな心遣いができる人がいるとは。
そして、私がまだ気にかけてもらえる対象だったことに、
すごく幸せを感じたのです。
帰宅したのは午後10時を少し回っていた。
「ずいぶん遅くまで飲んでいたのね」。
私はこの出来事をカミさんに話そうとしたのだけれど、
言わないでおこう。