詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

信濃町変よ!<本澤二郎の「日本の風景」(3723)

2020年06月23日 | 政治
信濃町変よ!<本澤二郎の「日本の風景」(3723)
http://jlj0011.livedoor.blog/archives/25263414.html
2020年06月23日 jlj0011のblog

<公明党創価学会監視人からの不思議な報告>
 選挙の都度、妻のところに必ず、知り合いの学会員から「公明党をよろしく」との電話が無くなって数年たつという、夫の公明党創価学会監視人が、興味深い報告を持ち込んできた。

 「珍しく手紙が届いたので、妻に見せてもらうと、中から聖教新聞の切り抜きが3枚入っていた。3枚とも、選挙と関係がない。いずれも池田さんの発言を記録したものばかり。都知事選のことは全く触れてなかった。政党の支持は受けないと宣言した小池に、自民党幹事長の二階も豆鉄砲を食らってしまったようだが、信濃町も同様らしい」というのだ。

 支持母体の都民ファーストの都議は、小池と同じく風で議員になった面々ばかりだ。地に足がついてはいない。連合の一部と公明党都議くらいで、楽勝気分になれそうもない小池陣営を見て取れそうだ。

<戦争三法・カジノ法強行に山口・太田・北側退陣論も浮上?>
 池田の反戦平和路線をかなぐり捨てての、国粋主義者・安倍晋三に食らいついての公明党創価学会執行部も、再び原点に戻ろうとしているのか?聖教新聞など見ようとはしないジャーナリストには、白黒をつけることなど出来ないのだが、冒頭の池田の新聞切り抜きから察すると、学会婦人部を中心に安倍離れも印象付けている?

 それにしても2013年からの7年間の安倍暴政は、悪質で目も当てられなかった。憲法順守の政府が、公然と反憲法路線(戦争三法)を強行した。ついで、やくざを狂奔させるカジノ法の強行である。

 これら悪法のすべてが、公明党創価学会の赫々たる実績で、誰も否定できない。富津市生まれの、やくざ浜名に殺害された戦争遺児が、特定秘密保護法成立の時点で、一人決起して「太田ショウコウの裏切り」と断罪したことを、いつも忘れない。彼女は無念にも、命と財産を根こそぎ奪われただけでなく、母親の戦争未亡人が建立した立派な墓地も掘り返されて、遺骨も消えてしまった。この悲劇に対して、徐々に同情が拡がってきている。

 余談だが、いずれこの「木更津レイプ殺人事件」の悲劇過ぎる悲劇は、新しい創価学会史に記録されるはずである。彼女の友人は、子供たちを教育をした秋田県由利本荘市、戦争未亡人の助産婦が活躍した木更津市、栄養士の資格を取った東京農大OB、そしてネットで事情を知った沖縄など全国の会員にも届いている。

 最近になって、千葉県のやくざ事情に詳しいNさんやA参院議員秘書も、関心を示し始めた。迷宮入りを狙っているような千葉県警の壁も、そんなに強固とは言えない。東京高検検事長の黒川弘務も墜落、安倍・田布施の城を陥落させる勢いなのだから。TBS強姦魔退治に取り組んでいる、伊藤詩織さんとその仲間も注目しているだろう。東京新聞の望月記者も。

 警察検察裁判所を監視するNPO法人設立の動きも、必ずや具体化するに違いない。

 清和会OBの話では、改憲のための国民投票法改正案の成立に狂奔する北側や、太田ショウコウが擁立する山口那津男を引きずりおろす動きも表面化しているという。「安倍が腐ると、山口も腐る」のであろう。

<沖縄から池田親衛隊・野原善正上京!山本太郎応援>
 昨年7月の参院選東京選挙区でナツオに挑戦した沖縄は、池田親衛隊で知られる野原善正が上京すると、山本太郎支持者から電話とメールで知らせが届いた。

 彼は、ネット選挙に対して、山本の街頭演説において花を咲かせるだろう。

 「信濃町駅頭での野原演説に、テレビカメラの放列が関心を呼んでいる」という。都知事選でも、池田裏切り執行部への沖縄からの痛撃は、けだし見物であろう。「公明党職員と創価学会本部職員も結集する賑わいには、護憲リベラルの婦人部も応援するかもしれない」と外野席は騒々しい。

<小池失速か?宇都宮健児との競り合いか?>
 現状での都知事選は、エジプト軍事政権からカイロ大学卒業のお墨付きをもらった小池、とはいえ、彼女の素行が次々と暴かれる中で、学会婦人部の動きは止まっているという。小池失速なのか?

 となると、残るは宇都宮健児と山本太郎の競り合いなのか?共産党と立憲民主党の護憲リベラルの宇都宮と、話し上手の山本の戦いなのか。

 はっきりしたことといえば、告示日のポスター貼り競争では、宇都宮とホリエモンが早かった点である。

<五輪中止で浮く東京都の財政事情>
 興味深い政策というと、五輪中止の山本公約である。新型コロナウイルスを退治するワクチン開発は、到底年内に間に合うことはない。たとえ完成しても、地球の人々に行き渡るのに数年かかる。したがって、延期した来年の東京五輪は開催されることはない。中止が各国五輪関係者の認識であろうから、実施されない幻の五輪にずるずると大金をかけるという小池公約は、都民を冒涜していることになろう。

 五輪予算の執行停止は、電通と新聞テレビ、スポンサー財閥に大打撃を与えることになる。これは自業自得でもあるが、山本報道の行方が気になる。

<「太郎は護憲リベラルにあらず」と参謀役>
 筆者は一つ誤解していた。それは山本も護憲リベラルと信じ込んでいたのだが、参謀役に確かめたところ、違っていたのだ。

 護憲リベラルは宇都宮一人ということになる。玄人筋は、宇都宮に軍配を上げるのだが、山本演説に勢いを感じる。立憲民主党と日本共産党の護憲リベラルの力量が問われそうだ。

 ともあれ、ネット選挙ゆえに誰も予想することが出来ない。信濃町の不思議は、都知事選全体が不思議なのだ。

2020年6月23日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

石垣市議会、「尖閣」の字名変更を決議 力で解決する方向は、ミサイル基地と同じ

2020年06月23日 | 政治
http://www.labornetjp.org/news/2020/1592916327871yumo
石垣市議会「尖閣」の字名変更を決議
力で解決する方向は、ミサイル基地と同じ
動画(石垣市議に聴く・5分52秒)
 
6月22日、慰霊の日の前日、石垣市議会では「尖閣諸島」の字名(町名)を「石垣市登野城(とのしろ)2390~2394」から「石垣市登野城尖閣2390~2394」にするという議案が可決した。(議員出席は議長を除いて21人、反対8人)
花谷史郎議員(無所属)は、「今、中国と緊張度が高まっている中で議決されてしまった。これからが心配だ」と語った。
↓花谷史郎市議

市議会定例会では、「国の主権に関わることは、一切他国に配慮する必要はない」とまで言い放つ字名変更賛成議員もいた。これに対し内原英聡議員(無所属)は、「私は、他者への敬意を市長に求めた」と語った。
↓内原英聡市議

字名変更が議決された直後、中国は外交ルートを通じて日本側に「遺憾と厳重な抗議をした」と発表。台湾は宜蘭県の林姿妙県長が遺憾の意を表明し、同県議会は「尖閣諸島」の台湾名の「釣魚台」を「頭城釣魚台」に変更するように政府に要請することを決めた。
内原議員は、「イージス・アショアの停止は、本土と沖縄の温度差を感じる。南西諸島のミサイル配備計画は、これまでの自衛隊駐屯地とまったく質が異なるものだ。大変危険性が高いもの」語った。字名変更と石垣のミサイル配備は一体の情勢としてみていく必要があるということだろう。(湯本雅典・取材:6月23日、石垣島バンナ公園、戦争マラリア慰霊碑の前で)

故郷 魯迅 井上紅梅訳

2020年06月23日 | 故郷
 わたしは厳寒を冒して、二千余里を隔て二十余年も別れていた故郷に帰って来た。時はもう冬の最中で故郷に近づくに従って天気は小闇くなり、身を切るような風が船室に吹き込んでびゅうびゅうと鳴る。苫の隙間から外を見ると、蒼黄いろい空の下にしめやかな荒村があちこちに横たわっていささかの活気もない。わたしはうら悲しき心の動きが抑え切れなくなった。
 おお! これこそ二十年来ときどき想い出す我が故郷ではないか。
 わたしの想い出す故郷はまるきり、こんなものではない。わたしの故郷はもっと佳いところが多いのだ。しかしその佳いところを記すには姿もなく言葉もないので、どうやらまずこんなものだとしておこう。そうしてわたし自身解釈して、故郷はもともとこんなものだと言っておく。――進歩はしないがわたしの感ずるほどうら悲しいものでもなかろう。これはただわたし自身の心境の変化だ。今度の帰省はもともと何のたのしみもないからだ。
 わたしどもが永い間身内と一緒に棲んでいた老屋がすでに公売され、家を明け渡す期限が本年一ぱいになっていたから、ぜひとも正月元日前に行かなければならない。それが今度の帰省の全部の目的であった。住み慣れた老屋と永別して、その上また住み慣れた故郷に遠く離れて、今食い繋ぎをしているよそ国に家移りするのである。
 わたしは二日目の朝早く我が家の門口に著いた。屋根瓦のうえに茎ばかりの枯草が風に向って顫えているのは、ちょうどこの老屋が主を更えなければならない原因を説明するようである。同じ屋敷内に住む本家の家族は大概もう移転したあとで、あたりはひっそりしていた。わたしが部屋の外側まで来た時、母は迎えに出て来た。八歳になる甥の宏兒も飛出して来た。
 母は非常に喜んだ。何とも言われぬ淋しさを押包みながら、お茶を入れて、話をよそ事に紛らしていた。宏兒は今度初めて逢うので遠くの方へ突立って真正面からわたしを見ていた。
 わたしどもはとうとう家移りのことを話した。
「あちらの家も借りることに極めて、家具もあらかた調えましたが、まだ少し足らないものもありますから、ここにある嵩張物を売払って向うで買うことにしましょう」
「それがいいよ。わたしもそう思ってね。荷拵えをした時、嵩張物は持運びに不便だから半分ばかり売ってみたがなかなかお銭にならないよ」
 こんな話をしたあとで母は語を継いだ。
「お前さんは久しぶりで来たんだから、本家や親類に暇乞いを済まして、それから出て行くことにしましょう」
「ええそうしましょう」
「あの閏土がね、家へ来るたんびにお前のことをきいて、ぜひ一度逢いたいと言っているんだよ」と母はにこにこして
「今度到著の日取を知らせてやったから、たぶん来るかもしれないよ」
「おお、閏土! ずいぶん昔のことですね」
 この時わたしの頭の中に一つの神さびた画面が閃き出した。深藍色の大空にかかる月はまんまろの黄金色であった。下は海辺の砂地に作られた西瓜畑で、果てしもなき碧緑の中に十一二歳の少年がぽつりと一人立っている。項には銀の輪を掛け、手には鋼鉄の叉棒を握って一疋の土竜に向って力任せに突き刺すと、土竜は身をひねって彼の跨ぐらを潜って逃げ出す。
 この少年が閏土であった。わたしが彼を知ったのは十幾つかの歳であったが、別れて今は三十年にもなる。あの時分は父も在世して家事の都合もよく、わたしは一人の坊ッちゃまであった。その年はちょうど三十何年目に一度廻って来る家の大祭の年に当り、祭は鄭重を極め、正月中掲げられた影像の前には多くの供え物をなし、祭器の撰択が八釜しく行われ、参詣人が雑沓するので泥棒の用心をしなければならぬ。わたしの家には忙月が一人きりだから手廻りかね、祭器の見張番に倅をよびたいと申出たので父はこれを許した。(この村の小作人は三つに分れている。一年契約の者を長年といい、日雇いの者を短工という。自分で地面を持ち節期時や刈入時に臨時に人の家に行って仕事をする者を忙月という)
 わたしは閏土が来ると聞いて非常に嬉しく思った。というのはわたしは前から閏土の名前を聞き及んでいるし、年頃もわたしとおつかつだし、閏月生れで五行の土が欠けているから閏土と名づけたわけも知っていた。彼は仕掛罠で小鳥を取ることが上手だ。
 わたしは日々に新年の来るのを待ちかねた。新年が来ると閏土も来るのだ。まもなく年末になり、ある日の事、母はわたしを呼んで
「閏土が来たよ」と告げた。わたしは馳け出して行ってみると、彼は炊事部屋にいた。紫色の丸顔! 頭に小さな漉羅紗帽をかぶり、項にキラキラした銀の頸輪を掛け、――これを見ても彼の父親がいかに彼を愛しているかが解る。彼の死去を恐れて神仏に願を掛け、頸に輪を掛け、彼を庇護しているのである――人を見て大層はにかんだが、わたしに対して特別だった。誰もいない時に好く話をして、半日経たぬうちに我々はすっかり仲よしになった。
 われわれはその時、何か知らんいろんな事を話したが、ただ覚えているのは、閏土が非常にハシャいで、まだ見たことのないいろいろの物を街へ来て初めて見たとの話だった。
 次の日わたしは彼に鳥をつかまえてくれと頼んだ。
「それは出来ません。大雪が降ればいいのですがね。わたしどもの沙地の上に雪が降ると、わたしは雪を掻き出して小さな一つの空地を作り、短い棒で大きな箕を支え、小米を撒きちらしておきます。小鳥が食いに来た時、わたしは遠くの方で棒の上に縛ってある縄を引くと、小鳥は箕の下へ入ってしまいます。何でも皆ありますよ。稲鶏、角鶏、※鴣[#「孛+鳥」、105-11]、藍背……」
 そこでわたしは雪の降るのを待ちかねた。閏土はまた左のような話をした。
「今は寒くていけませんが、夏になったらわたしの処へ被入っしゃい。わたしどもは昼間海辺に貝殻取に行きます。赤いのや青いのや、鬼が見て恐れるのや、観音様の手もあります。晩にはお父さんと一緒に西瓜の見張りに行きますから、あなたも被入っしゃい」
「泥棒の見張をするのかえ」
「いいえ、旅の人が喉が渇いて一つぐらい取って食べても、家の方では泥棒の数に入れません。見張が要るのは※(「權」の「木」に代えて「豸」、第4水準2-89-10)猪、山あらし、土竜の類です。月明りの下でじっと耳を澄ましているとララと響いて来ます。土竜が瓜を噛んでるんですよ。その時あなたは叉棒を攫んでそっと行って御覧なさい」
 わたしはそのいわゆる土竜というものがどんなものか、その時ちっとも知らなかった。――今でも解らない――ただわけもなく、小犬のような形で非常に猛烈のように感じた。
「彼は咬みついて来るだろうね」
「こちらには叉棒がありますからね。歩いて行って見つけ次第、あなたはそれを刺せばいい。こん畜生は馬鹿に利巧な奴で、あべこべにあなたの方へ馳け出して来て、跨の下から逃げてゆきます。あいつの毛皮は油のように滑ッこい」
 わたしは今までこれほど多くの珍らしいことが世の中にあろうとは知らなかった。海辺にこんな五色の貝殻があったり、西瓜にこんな危険性があったり――わたしは今の先きまで西瓜は水菓子屋の店に売っているものとばかし思っていた。
「わたしどもの沙地の中には大潮の来る前に、たくさん跳ね魚が集って来て、ただそれだけが跳ね廻っています。青蛙のように二つの脚があって……」
 ああ閏土の胸の中には際限もなく不思議な話が繋がっていた。それはふだんわたしどもの往来している友達の知らぬことばかりで、彼等は本当に何一つ知らなかった。閏土が海辺にいる時彼等はわたしと同じように、高塀に囲まれた屋敷の上の四角な空ばかり眺めていたのだから。
 惜しいかな、正月は過ぎ去り、閏土は彼の郷里に帰ることになった。わたしは大哭きに哭いた。閏土もまた泣き出し、台所に隠れて出て行くまいとしたが、遂に彼の父親に引張り出された。
 彼はその後父親に託けて貝殻一包と見事な鳥の毛を何本か送って寄越した。わたしの方でも一二度品物を届けてやったこともあるが、それきり顔を見たことが無い。
 現在わたしの母が彼のことを持出したので、わたしのあの時の記憶が電の如くよみがえって来て、本当に自分の美しい故郷を見きわめたように覚えた。わたしは声に応じて答えた。
「そりゃ面白い。彼はどんな風です」
「あの人かえ、あの人の景気もあんまりよくないようだよ」
 母はそういいながら室の外を見た。
「おやまた誰か来たよ。木器買うと言っては手当り次第に持って行くんだから、わたしがちょっと見て来ましょう」
 母が出て行くと門外の方で四五人の女の声がした。わたしは宏兒を側へ喚んで彼と話をした。字が書けるか、この家を出て行きたいと思うか、などということを訊いてみた。
「わたしどもは汽車に乗ってゆくのですか」
「汽車に乗ってゆくんだよ」
「船は?」
「まず船に乗るんだ」
「おや、こんなになったんですかね。お鬚がまあ長くなりましたこと」
 一種尖ったおかしな声が突然わめき出した。
 わたしは喫驚して頭を上げると、頬骨の尖った唇の薄い、五十前後の女が一人、わたしの眼の前に突立っていた。袴も無しに股引穿きの両足を踏ん張っている姿は、まるで製図器のコンパスみたいだ。
 わたしはぎょっとした。
「解らないかね、わたしはお前を抱いてやったことが幾度もあるよ」
 わたしはいよいよ驚いたが、いい塩梅にすぐあとから母が入って来て側から
「この人は永い間外に出ていたから、みんな忘れてしまったんです。お前、覚えておいでだろうね」
 とわたしの方へ向って
「これはすじ向うの楊二嫂だよ。そら豆腐屋さんの」
 おおそう言われると想い出した。わたしの子供の時分、すじ向うの豆腐屋の奥に一日坐り込んでいたのがたしか楊二嫂とか言った。彼女は近処で評判の「豆腐西施」で白粉をコテコテ塗っていたが、頬骨もこんなに高くはなく、唇もこんなに薄くはなく、それにまたいつも坐っていたので、こんな分廻しのような姿勢を見るのはわたしも初めてで、その時分彼女があるためにこの豆腐屋の商売が繁盛するという噂をきいていたが、それも年齢の関係で、わたしは未だかつて感化を受けたことがないからまるきり覚えていない。ところがコンパス西施はわたしに対してはなはだ不平らしく、たちまち侮りの色を現し、さながらフランス人にしてナポレオンを知らず、亜米利加人にしてワシントンを知らざるを嘲る如く冷笑した。
「忘れたの? 出世すると眼の位まで高くなるというが、本当だね」
「いえ、決してそんなことはありません、わたし……」
 わたしは慌てて立上がった。
「そんなら迅ちゃん、お前さんに言うがね。お前はお金持になったんだから、引越しだってなかなか御大層だ。こんな我楽多道具なんか要るもんかね。わたしに譲っておくれよ、わたしども貧乏人こそ使い道があるわよ」
「わたしは決して金持ではありません。こんなものでも売ったら何かの足しまえになるかと思って……」
「おやおやお前は結構な道台さえも捨てたという話じゃないか。それでもお金持じゃないの? お前は今三人のお妾さんがあって、外に出る時には八人舁きの大轎に乗って、それでもお金持じゃないの? ホホ何と被仰ろうが、私を瞞すことは出来ないよ」
 わたしは話のしようがなくなって口を噤んで立っていると
「全くね、お金があればあるほど塵ッ葉一つ出すのはいやだ。塵ッ葉一つ出さなければますますお金が溜るわけだ」
 コンパスはむっとして身を翻し、ぶつぶつ言いながら出て行ったが、なお、行きがけの駄賃に母の手袋を一双、素早く掻っ払ってズボンの腰に捻じ込んで立去った。
 そのあとで近処の本家や親戚の人達がわたしを訪ねて来たので、わたしはそれに応酬しながら暇を偸んで行李をまとめ、こんなことで三四日も過した。
 非常に寒い日の午後、わたしは昼飯を済ましてお茶を飲んでいると、外から人が入って来た。見ると思わず知らず驚いた。この人はほかでもない閏土であった。わたしは一目見てそれと知ったが、それは記憶の上の閏土ではなかった。身の丈けは一倍も伸びて、紫色の丸顔はすでに変じてどんよりと黄ばみ、額には溝のような深皺が出来ていた。目許は彼の父親ソックリで地腫れがしていたが、これはわたしも知っている。海辺地方の百姓は年じゅう汐風に吹かれているので皆が皆こんな風になるのである。彼の頭の上には破れた漉羅紗帽が一つ、身体の上にはごく薄い棉入れが一枚、その著こなしがいかにも見すぼらしく、手に紙包と長煙管を持っていたが、その手もわたしの覚えていた赤く丸い、ふっくらしたものではなく、荒っぽくざらざらして松皮のような裂け目があった。
 わたしは非常に亢奮して何と言っていいやら
「あ、閏土さん、よく来てくれた」
 とまず口を切って、続いて連珠の如く湧き出す話、角鶏、飛魚、貝殻、土竜……けれど結局何かに弾かれたような工合になって、ただ頭の中をぐるぐる廻っているだけで口外へ吐き出すことが出来ない。
 彼はのそりと立っていた。顔の上には喜びと淋しさを現わし、唇は動かしているが声が出ない。彼の態度は結局敬い奉るのであった。
「旦那様」
 と一つハッキリ言った。わたしはぞっとして身顫いが出そうになった。なるほどわたしどもの間にはもはや悲しむべき隔てが出来たのかと思うと、わたしはもう話も出来ない。
 彼は頭を後ろに向け
「水生や、旦那様にお辞儀をしなさい」
 と背中に躱れている子供を引出した。これはちょうど三十年前の閏土と同じような者であるが、それよりずっと痩せ黄ばんで頸のまわりに銀の輪がない。
「これは五番目の倅ですが、人様の前に出たことがありませんから、はにかんで困ります」
 母は宏兒を連れて二階から下りて来た。大方われわれの話声を聞きつけて来たのだろう。閏土は丁寧に頭を低げて
「大奥様、お手紙を有難く頂戴致しました。わたしは旦那様がお帰りになると聞いて、何しろハアこんな嬉しいことは御座いません」
「まあお前はなぜそんな遠慮深くしているの、先にはまるで兄弟のようにしていたじゃないか。やっぱり昔のように迅ちゃんとお言いよ」
 母親はいい機嫌であった。
「奥さん、今はそんなわけにはゆきません。あの時分は子供のことで何もかも解りませんでしたが」
 閏土はそう言いながら子供を前に引出してお辞儀をさせようとしたが、子供は羞しがって背中にこびりついて離れない。
「その子は水生だね。五番目かえ。みんなうぶだから懼がるのは当前だよ。宏兒がちょうどいい相手だ。さあお前さん達は向うへ行ってお遊び」
 宏兒はこの話を聞くとすぐに水生をさし招いた。水生は俄に元気づいて一緒になって馳け出して行った。母は閏土に席をすすめた。彼はしばらくうじうじして遂に席に著いた。長煙管を卓の側に寄せ掛け、一つの紙包を持出した。
「冬のことで何も御座いませんが、この青豆は家の庭で乾かしたんですから旦那様に差上げて下さい」
 わたしは彼に暮向のことを訊ねると、彼は頭を揺り動かした。
「なかなか大変です。あの下の子供にも手伝わせておりますが、どうしても足りません。……世の中は始終ゴタついておりますし、……どちらを向いてもお金の費ることばかりで、方途が知れません……実りが悪いし、種物を売り出せば幾度も税金を掛けられ、元を削って売らなければ腐れるばかりです」
 彼はひたすら頭を振った。見ると顔の上にはたくさんの皺が刻まれているが、石像のようにまるきり動かない。たぶん苦しみを感ずるだけで表現することが出来ないのだろう。しばらく思案に沈んでいたが煙管を持出して煙草を吸った。
 母は彼の多忙を察してあしたすぐに引取らせることにした。まだ昼飯も食べていないので台所へ行って自分で飯を焚いておあがりと吩付けた。
 あとで母とわたしは彼の境遇について歎息した。子供は殖えるし、飢饉年は続くし、税金は重なるし、土匪や兵隊が乱暴するし、官吏や地主がのしかかって来るし、凡ての苦しみは彼をして一つの木偶とならしめた。「要らないものは何でも彼にやるがいいよ。勝手に撰り取らせてもいい」と母は言った。
 午後、彼は入用の物を幾つか撰り出していた。長卓二台、椅子四脚、香炉と燭台一対ずつ、天秤一本。またここに溜っている藁灰も要るのだが、(わたしどもの村では飯を焚く時藁を燃料とするので、その灰は砂地の肥料に持って来いだ)わたしどもの出発前に船を寄越して積取ってゆく。
 晩になってわたしどもはゆっくり話をしたが、格別必要な話でもなかった。そうして次の朝、彼は水生を連れて帰った。
 九日目にわたしどもの出発の日が来た。閏土は朝早くから出て来た。今度は水生の代りに五つになる女の児を連れて来て船の見張をさせた。その日は一日急がしく、もう彼と話をしている暇もない。来客もまた少からずあった。見送りに来た者、品物を持出しに来た者、見送りと持出しを兼ねて来た者などがゴタゴタして、日暮れになってわたしどもがようやく船に乗った時には、この老屋の中にあった大小の我楽多道具はキレイに一掃されて、塵ッ葉一つ残らずガラ空きになった。
 船はずんずん進んで行った。両岸の青山はたそがれの中に深黛色の装いを凝らし、皆連れ立って船後の梢に向って退く。
 わたしは船窓に凭って外のぼんやりした景色を眺めていると、たちまち宏兒が質問を発した。
「叔父さん、わたしどもはいつここへ帰って来るんでしょうね」
「帰る? ハハハ。お前は向うに行き著きもしないのにもう帰ることを考えているのか」
「あの水生がね、自分の家へ遊びに来てくれと言っているんですよ」
 宏兒は黒目勝ちの眼をみはってうっとりと外を眺めている。
 わたしどもはうすら睡くなって来た。そこでまた閏土の話を持出した。母は語った。
「あの豆腐西施は家で荷造りを始めてから毎日きっとやって来るんだよ。きのうは灰溜の中から皿小鉢を十幾枚も拾い出し、論判の挙句、これはきっと閏土が埋めておいたに違いない、彼は灰を運ぶ時一緒に持帰る積りだろうなどと言って、この事を非常に手柄にして『犬ぢらし』を掴んでまるで飛ぶように馳け出して行ったが、あの纏足の足でよくまああんなに早く歩けたものだね」
(犬ぢらしはわたしどもの村の養鶏の道具で、木盤の上に木柵を嵌め、中には餌を入れておく。鶏は嘴が長いから柵をとおして啄むことが出来る。犬は柵に鼻が閊えて食うことが出来ない。故に犬じ[#「じ」はママ]らしという)
 だんだん故郷の山水に遠ざかり、一時ハッキリした少年時代の記憶がまたぼんやりして来た。わたしは今の故郷に対して何の未練も残らないが、あの美しい記憶が薄らぐことが何よりも悲しかった。
 母も宏兒も睡ってしまった。
 わたしは横になって船底のせせらぎを聴き、自分の道を走っていることを知った。わたしは遂に閏土と隔絶してこの位置まで来てしまった。けれど、わたしの後輩はやはり一脈の気を通わしているではないか。宏兒は水生を思念しているではないか。わたしは彼等の間に再び隔膜が出来ることを望まない。しかしながら彼等は一脈の気を求むるために、凡てがわたしのように辛苦展転して生活することを望まない。また彼等の凡てが閏土のように辛苦麻痺して生活することを望まない。また凡てが別人のように辛苦放埒して生活することを望まない。彼等はわたしどものまだ経験せざる新しき生活をしてこそ然る可きだ。
 わたしはそう思うとたちまち羞しくなった。閏土が香炉と燭台が要ると言った時、わたしは内々彼を笑っていた。彼はどうしても偶像崇拝で、いかなる時にもそれを忘れ去ることが出来ないと。ところが現在わたしのいわゆる希望はわたしの手製の偶像ではなかろうか。ただ彼の希望は遠くの方でぼんやりしているだけの相違だ。
 夢うつつの中に眼の前に野広い海辺の緑の沙地が展開して来た。上には深藍色の大空に掛るまんまろの月が黄金色であった。
 希望は本来有というものでもなく、無というものでもない。これこそ地上の道のように、初めから道があるのではないが、歩く人が多くなると初めて道が出来る。
(一九二一年一月)

東部労組新着動画 : 6.20全労ユナイテッド闘争団成田空港就労行動

2020年06月23日 | 四要素論
http://www.labornetjp.org/news/2020/1592900956048staff01
2020/6/23
全国一般東京東部労組の矢部です。

新動画を紹介します。

新動画<6.20全労ユナイテッド闘争団成田空港就労行動>です。
https://youtu.be/O7dpHDWAv7M

2月29日に実施して以来、コロナ禍で4ヵ月近く間を空けざるを得なかった全国一般・全労働者組合(全労)ユナイテッド闘争団による不当解雇撤回・原職復帰を求める成田空港就労アピール行動が、6月20日、当該被解雇客室乗務員2名を筆頭に50人あまりの支援で、意気込みも新たに展開されました。

全労所属の客室乗務員のみを解雇するという組合差別を露骨に打ち出すユナイテッド航空を、現在係争中の控訴審でも追い詰めるため、すべての労働者はよってたかって支援していきましょう!

ぜひ、ご覧ください。

新動画<6.20全労ユナイテッド闘争団成田空港就労行動>
https://youtu.be/O7dpHDWAv7M

東部労組動画一覧
https://www.youtube.com/user/The19681226002/videos?view_as=subscriber

世に倦む日日 吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ

2020年06月23日 | 政治
NHKの今月の世論調査が発表され、不支持が49%となり、第二次安倍政権発足以降で最も高い割合となった。支持率も36%で、この4年間で最も低い水準になっている。検察庁法改正案に対する国民の反発が大きく、加えて、政府のコロナ対策に対する不満やコロナ禍による生活不安が影響した結果だ。

そして、ここへ来て俄に解散風が吹き始めた。今週のマスコミ報道はその話題を前面に押し出していて、コロナ感染の警戒や対策への関心が背後に退いた感が強い。国会が開いている間は、政局を問題にせずコロナ一色だったのに、国会が閉じた途端に政局をネタにし始めた。いかに(BS-TBSの松原耕治の報道1930のような)テレビ報道が、安倍官邸の意向に沿った番組作りをしているかの証左である。解散風の第一号は19日(金)の週刊ポストの記事で、「麻生氏、首相に『二階・菅氏の更迭、9月総選挙』を進言か」と題されたものである。どういう背景と意図で書かれたものか不明だが、今節の政局分析として面白い内容だ。

吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14383448.png
私の見通しもこの記事に近い。安倍晋三は解散総選挙で窮地の打開を図ってくるはずで、早ければ7月、遅くとも10月には選挙を仕掛けるだろう。まず何よりも、選挙のタイミングの条件として、11月以降はコロナ第2波が襲来するリスクがあり、11月以降に選挙を予定・実施できない問題がある。コロナ第2波が流行し始めると、収束は来年5月まで待たなければならず、半年間、日本は今年春に経験したコロナ禍の非常事態の中に置かれる。

恐怖と緊張に包まれた社会環境となる。新規の感染者数が一日に500人も600人も増え、病院の院内感染が多発して地域医療がパニックになる中では、選挙戦を行うのは無理である。その可能性のある時期に選挙日程は組めない。したがって、年内解散と言っても11月以降は省かれる。また、季節的にコロナが収まる来年5月以降となると、総裁任期と衆院議員任期の面で完全に追い込まれ解散となり、安倍晋三にとっては最悪の隘路でしかなく、戦略的にその時機の選択はあり得ない。

吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14384651.png
そうした理由と事情から解散は早い時期になる。週刊ポストが書いている線が予測として妥当だ。ただ、ポストの記事もマスコミの政局報道も、どちらも見逃しているのが、解散の動機であり、安倍晋三の置かれた切迫した状況である。政治業界で小銭稼ぎの商売をする政局屋たちが簡単に言っているような、ポスト安倍などというものはないのだ。

先にそちらを説明しよう。例えば、岸田文雄を傀儡のポスト安倍の総理総裁にするとする。どうなるか。3か月後には内閣支持率が30%台前半に落ち、そこから上がらず、閣僚が不祥事や醜聞で週刊文春に次々に首をもぎ取られ、30%を割ったり戻したりの不安定なフロート状態となるだろう。選挙は負ける。岸田文雄で選挙をやったら、自民党は現有から50は減らすに違いない。傀儡で華のない岸田文雄は人気が出ない。保守層(右翼層)から強い贔屓がなく、保守マスコミの持ち上げがない。現在議席を持つ数百人の自民党議員というのは、すべて安倍晋三のおかげで当選させてもらった連中である。


吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14522807.png
特に3回生以下議員には、総理総裁を他に替えるという発想や意識はなく、安倍晋三で4選、5選、終身という将来想定しかないだろう。要するに、ポスト安倍の岸田文雄への禅譲などという絵は、政局商売屋たちの架空の概念なのであり、実体のない物語だ。現実にあるのは、安倍4選の政局であり、安倍4選の成否である。

何度も言っているように、独裁者安倍晋三にとって4選が至上命題である理由は、権力の座から降りた途端に夫婦で手が後ろに回るからであり、チャウシェスク的な破滅の終末を迎えるからである。実際、その条件はひたひたと満たされつつある。黒川弘務という守護神が失われた今、検察は桜を見る会の本格捜査に踏み出す可能性がある。全国の弁護士ら662人による刑事告発を受理して動く気配がある。マスコミなど政局商売屋たちの浮薄なポスト安倍の議論は、安倍晋三の独裁権力の性格規定について正しい認識を持っておらず、従来の自民党総裁や日本国首相と同じ位置づけで捉えているために喋々される、緊張感のない床屋政談だ。

吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14553427.png
安倍晋三は4選を果たさなければならず、そのためには衆院選に圧勝する図を作らなければならないのである。圧勝の意味は、現有284議席と同等の当選者数を獲得する毎度のパターンであり、自公で3分の2となる312議席の線を維持する首尾である。

支持率が低下して、ポスト安倍に石破茂の名前が浮上し、党内外に石破茂後継への期待感が醸成されている現在、安倍晋三が解散総選挙してこの結果を出すのは難しいのではという見方が一般的だろう。だが、必ずしもそうは言えない。世論調査の政党支持率を見るかぎり、自民党は盤石であり、多弱野党は不調である。野党はとても政権交代の選択肢を示せている状態ではなく、小選挙区の一対一の対決構図で優勢に立てる態勢にない。今年のコロナ禍の政治現場で支持率を上げた政党は維新で、吉村洋文が注目されて人気が上昇している。選挙をやれば、維新の会の議席が増えるだろうと予想されている。それ以外には何も変数要因はなく、小選挙区での自民現職と「野党共闘」新人の戦いの情勢に大きな影響はない。

吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14431025.png
簡単に予測すれば、維新が伸びる以外は選挙は無風である。安倍自民は落ち目で展望がないけれど、それ以上に「野党共闘」に期待感がなく、票を集める磁力がない。国民の安倍政権への失望を拾い集める存在感がない。個々の政党が貧弱で、選挙で安倍政権を倒すパワーがなく、その意思や戦略もない。

昨年の参院選時との政党勢力の異同を観察しよう。コロナ対策で失敗を重ねた安倍自民は、昨年よりも党勢は明らかに下落傾向にある。だが、野党はどうかというと、コロナ対策で枝野幸男や長妻昭の出番は皆無で、政策評価上の得点はゼロだった。国民が求めるPCR検査を増やす力にもなり得なかった。立憲民主党はコロナ対策で国民の信頼を得る動きができず、枝野幸男がコロナ問題に関心がないのは一目瞭然だった。それと、もう一つ重大な不具合は「野党共闘」の混乱と亀裂である。具体的に指摘すれば、反安倍陣営の選挙戦で活力源となっていた山本太郎が「野党共闘」から離れつつある。この点は、反安倍左翼はもう少し冷静な思考に即き、客観的に状況を省察し憂慮すべきだろう。

吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14393091.png
山本太郎を貶める木下ちがやとしばき隊の誹謗中傷に乗るべきではなく、謀略工作に踊らされるべきではない。昨年参院選で野党共闘がそれなりに成功を収め、東北諸県の一人区を制することができたのは、やはり山本太郎の群衆動員の殊勲と功績に負うところが大きい。昨年の選挙戦のハイライトは山本太郎のパフォーマンスにあり、宮城選挙区が関ヶ原だったこと、あらためて確認するまでもない。

その後の消費税とMMTの政策をめぐる政治過程で、ハプンしたのはしばき隊(木下ちがや等)による山本太郎排除の策動であり、左翼世界のヘゲモニー固守を目論んで仕掛けた陰湿な内ゲバ騒動であった。現在、その延長戦が都知事選のバトルとなって対立が激化しているが、最初に大きな火が上がったのは2月の京都市長選である。ママの会の西郷南海子らが、参院選のヒーローである山本太郎をシンボルに担ぎ、市長選を盛り上げる戦略行動に出たところ、木下ちがやらが難癖をつけて襲撃と攪乱の挙に及び、市長選は典型的な - そして傍目には何とも愚劣な - 「左翼の内ゲバ」の風景と化した。

吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14500061.png
しばき隊にとって、ヘゲモニーはパンダの笹の餌であり、朝から晩まで貪り食う習性をやめられない。マウント衝動の暴力の病的発現を抑えられない。熾烈で獰猛な内ゲバ(リンチ・誹謗中傷)の連続がしばき隊の歴史であり、近接・類似する諸勢力を挑発・妨害・排撃するのがしばき隊の野性的本能である。しばき隊が暴力左翼セクトである真実が証明されている。しばき隊は分断のプロであり、スターリン・セクトに他ならない。今回、さすがに目に余ったのか、篠藤操が木下ちがやを罵倒して一喝する事件にまで発展した。ここで問題点として挙げたいのは、山口二郎までが木下ちがやの尻馬に乗って、山本太郎叩きの気勢を上げていることである。失態としか言いようがない。市民連合の山口二郎は、本来、仲裁者として二者の喧嘩の間に入り、しばき隊によるれいわ叩きをやめさせないといけない。しばき隊とれいわ信者の軋轢と悶着を止め、二者が反安倍で共闘するよう仕向ける役割がある。それこそが市民連合の雛壇幹部の使命だろう。水をかけて冷やさねばならないのに、一方に付いて煽って燃焼させるとは何事か。立場の自覚を持て。

そもそも、事の発端は消費税率の政策問題であり、枝野幸男が消費税5%引き下げに頑迷に同意しない点にある。立憲民主党が折れればよいだけで、中間を採って7%とか8%に妥協すればいいだけの話ではないか。共産党は5%減税ですでに一致している。広渡清吾と高田健は、山口二郎に厳重注意を与えて山本太郎攻撃の口を封じた上で、立憲とれいわの間に入って消費税率問題を調整すべきであろう。選挙戦において山本太郎が街頭で創出するモメンタムは重要な武器であり、反安倍側にとって必須の要件に他ならない。すべては目前の総選挙のために。無意味な内紛は禁物だ。安倍晋三を喜ばせるだけである。

吹き始めた解散風と反安倍側の内紛 - 山口二郎は不毛な山本太郎叩きをやめよ_c0315619_14442146.png

LNJ Logo たんぽぽ舎メルマガ NO.3963~東京電力との対話で明らかになった現在進

2020年06月23日 | 歴史
たんぽぽ舎です。【TMM:No3963】
2020年6月20日(土)地震と原発事故情報-5つの情報をお知らせしま                           転送歓迎
━━━━━━━ 
★1.東京電力との対話で明らかになった現在進行形の
   問題点と東電の姿勢(下)
  ・福島第一原発汚染水問題
  増える原因は、失敗した「凍土壁」の間から侵入する地下水と建屋の破損した穴から雨水の浸入 
             山崎久隆(たんぽぽ舎共同表)
★2.6/24(水)講演会のお知らせ
   ~TRICK~
   朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち1923年関東大震災と朝鮮人、中国人、社会主義者らの虐殺
                渡辺マリ(たんぽぽ舎ボランティア)
★3.原発処理水の風評被害対策を 茨城の首長ら、国に要求…ほかメルマガ読者からの原発等情報3つ(抜粋)
                黒木和也 (宮崎県在住)
★4.東京電力本店前抗議(6/3)での申し入れ書です
コロナ対策・被ばく対策・汚染水対策等追及しています。 坂東喜久恵(原子力民間規制委員会・東京)
★5.新聞より2つ
  ◆「関電も森山氏を利用していた」「虫のいい話」
   「世間体のためのパフォーマンス」
   関電旧経営陣提訴決定に原発立地の福井・高浜町は…
     (6/16(火)0:54配信「産経新聞」)
  ◆再生エネルギー、コロナ下で脚光
   太陽光・風力、世界で発電伸びる 人員少数、感染対策で強み
(6月11日、日本経済新聞朝刊5面より抜粋)
━━━━━━━ 
※6/24(水)学習会にご参加を!
 TRICK-トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち
 1923年関東大震災と朝鮮人、中国人、社会主義者らの虐殺
 お話:加藤直樹さん(フリーライター、編集者)
 日時:6月24日(水)19時より21時         
 会 場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F)
 参加費:800円  「予約」は必要ありません。
 ※上記2つの学習会では「新型コロナウイルス」対策を致します。
  ・会場入り口に手指消毒用ボトルを用意します。 
  ・机の上に消毒液を噴霧しペーパータオルで拭きす。
  ・窓をこまめに開けて換気に配慮します。    
  ・「密集」しないように着席していただきます。
  ・体調に不安のある方は、無理に参加しないで下い。
━━━━━━━ 
※7/1(水)2つの抗議行動にご参加を!
1.とめよう!東海第二原発 20年運転延長・再稼働ゆるすな!
  日本原電本店抗議行動
 日 時:7月1日(水)17:00より17:45
 場 所:日本原電本店前(住友不動産秋葉原北ビル 台東区上野5-2-1)
     銀座線末広町駅4番出口より4分
 共 催:「とめよう!東海第二原発首都圏連絡会」
     「再稼働阻止全国ネットワーク」 TEL 070-6650-5549
2.「第81回東電本店合同抗議」東電は福島第一原発事故の責任をとれ!
 日 時:7月1日(水)18:30より19:30      
 場 所:東京電力本店前(千代田区内幸町1-1-3)
 呼びかけ:「経産省前テントひろば」070-6473-1947  「たんぽぽ舎」 03-3238-9035
 賛 同:東電株主代表訴訟など137団体

 ※「新型コロナウイルス」対策を致します。
  ・現場に手指消毒用ボトルを用意します。
  ・「密集」しないように参加者同士の間隔を空けて抗議します。
  ・体調に不安のある方は、無理に参加しないで下い。
━━━━━━━ 
 
┗■1.東京電力との対話で明らかになった 
 | 現在進行形の問題点と東電の姿勢   (下)(了)
 | ・福島第一原発汚染水問題
 | 増える原因は、失敗した「凍土壁」の間から侵入する地下水と
 | 建屋の破損した穴から雨水の浸入 
 └────  山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎福島第一原発汚染水問題
 増える原因は、失敗した「凍土壁の間から侵入する地下水」と
 建屋の破損した穴から雨水の浸入

 東電は、福島第一原発の汚染水について海洋投棄を前提に考えていますが、現段階ではあくまでも「国の方針に沿って」と、経産省が決定することであるとの立場です。
 私たちが検討を求めた「地下埋設」は「固化により体積が3~6倍となり貯蔵継続より敷地が必要」という立場ですが、これは認識不足です。体積が大きくなっても敷地投影面積は地上タンクよりも少なく出来ます。地下深く掘れば地上部分の専有部分を小さく出来ますし、重量構造物でなければ埋設保管施設の上部を使うことも出来ます。

 「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書」では「海洋処分」と「蒸発処分」しか書かれていません。敢えて被ばく評価が海洋処分よりも大きい「蒸発処分」が受け入れられるはずのないことを見越して、海洋処分にならざるを得ない誘導をしていると考えられます。
 東電は「貯蔵継続」について、「メリットとして年月の経過に伴いトリチウム量が約12年でほぼ半分、約24年でほぼ4分の1となる」ことを認めています。

 一方で「デメリットとして貯留する処理水量が増加し続け、発生量が1日当たり150立方メートル/日の場合、12年で約66万立方メートル分(現状のタンクエリアの約半分)、24年で約131万立方メートル分(現状のタンクエリアと同等)のタンクが追加で必要となります。」として、貯蔵場所がなくなること、他の設備を作る場所を圧迫し廃炉処分に支障を来すことを否定的な理由としています。

 そのため『上記の小委員会報告を踏まえつつ』と、責任を国に押しつけつつ『「多核種除去設備等処理水を貯留するタンク」「使用済燃料や燃料デブリの一時保管施設」「今後具体化を検討する施設」も含めて、発電所敷地全体の活用を検討してまいります。』と未だ検討中であることを強調しています。

 既に公表されている東電資料では、海洋投棄のシミュレーションでは40年程度を掛けながら行われるので、その間は貯蔵タンクも維持し続けることになります。
 海洋放出を避けて貯蔵を続けるために、トリチウムを濃縮して減量することもできるから、カナダやフランスで実用化されている技術を使うべきと指摘しました。

 やりとりの中でも指摘し、東電も認めたのは、染水問題の根幹が「今後も汚染水が増える」ことです。
 現状の量で増えなければ問題はさほど大きくはありませんし海洋投棄する必要もありません。

 増える原因は、失敗した「凍土壁」の間から侵入する地下水と、建屋開口部(実際には破損した穴)の閉鎖が進んでいないことで起きる雨水の浸入です。
 昨年の豪雨でも侵入雨水、地下水の量が増加したため、一日当たり150トンの目標は実際には180トンに増えてしまいました。これこそが福島第一原発の汚染防止対策で緊急性が高い問題なのです。

(「脱原発東電株主運動ニュース」No292.
 2020年6月14日発行より転載
(「脱原発東電株主運動ニュース」No292.2020年6月14日発行より転載)


┗■2. 6/24(水)講演会のお知らせ
 |  ~TRICK~
 |  朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち
 |  1923年関東大震災と朝鮮人、中国人、社会主義者らの虐殺─── 渡辺マリ(たんぽぽ舎ボランティア)
   お 話:加藤直樹さん(フリーライター、編集者)
   日 時:6月24日(水)19時より21時
   会 場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F) 参加費:800円  「予約」は必要ありません。

〇 日本帝国主義による朝鮮植民地支配下、様々な理由でやむなく玄界灘を渡ってきた人々を襲ったのは、巨大地震、そして「朝鮮人が暴動を起こしている」などという流言飛語による、軍隊・警察・民間人による虐殺だ
った。
 日本という異国で「何もしていないのに」無惨に朝鮮人は殺された。
〇 忘れてはいけない
 1973年、横網町公園に関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑が建立され、歴代の都知事が追悼文を送ってきた。その誰一人として「虐殺はなかった」などと言う人はいなかった。「史実」だからだ。これを取りやめたのは2017年、小池百合子東京都知事(当時)。
〇 取りやめた理由
 「全ての方々への追悼の意を表しているから」
 「天災による死と、殺人による死とは全く意味が違う」との批判には
 「様々な内容が史実として書かれているものと承知している。だからこそ、何が明白な事実かは歴史家がひも解くもの」
○ 歴史修正主義者の「両論併記」というトリック
 朝鮮人虐殺は「暴動を起こした朝鮮人」に対する「自衛=正当防衛」だった!??
 諸説あるから(小池百合子氏の発言→様々な内容が史実として書かれている)、虐殺が本当の事なのかどうか分からない→史実の否定
(そうすると)分からないものを教科書に載せたり、公的施設での展示はできないことになる。

 諸説があるかのような(両論併記)空気を作り出し、公的な場から消し去ろうとする歴史修正主義者の手口を加藤直樹さんにお話していただきます。

 
┗■3.原発処理水の風評被害対策を 茨城の首長ら、国に要求…ほか
 |  メルマガ読者からの原発等情報3つ(抜粋)
 └──── 黒木和也 (宮崎県在住)

1.原発処理水の風評被害対策を 茨城の首長ら、国に要求
 6/19(金) 17:12配信「共同通信」
 https://news.yahoo.co.jp/articles/61f1e51cf5ac0a98f9b932ee5684b63298f6a502

2.脱原発の河合弘之弁護士、関電株主総会で大阪市代理人に
 6/19(金) 19:21配信「朝日新聞デジタル」
 https://news.yahoo.co.jp/articles/59a314d6bbc3d4113edf14772497abb07dbc175e

3.フジテレビと産経新聞の政治世論調査
 委託先の下請けが回答2500件デッチ上げ 徹底した検証が必要だ
 「木村正人」 在英国際ジャーナリスト6/19(金) 17:25
 https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200619-00184159/


┗■4.東京電力本店前抗議(6/3)での申し入れ書です
 |  コロナ対策・被ばく対策・汚染水対策等追及しています。 
 └──── 坂東喜久恵(原子力民間規制委員会・東京)

 毎月の東電本店合同抗議で、「原子力民間規制委員会・東京」は申し入
れ(勧告)を実施しています。
6月3日(水)の第81回東電本店合同抗議で出した申し入れ書(質問書)
です。

◆東電本店合同抗議での申入書
                          2020年6月3日
東京電力ホールディングス株式会社 
代表執行役社長 小早川智明 様
                     原子力民間規制委員会・東京
                           代表 岩田俊雄

     福島第一原発事故加害企業東京電力への質問書

2011年3月11日の大災害から9年を越えました。福島第一原発4基の大事
故については、10年目に入った現在でも収束には程遠い状況であり、この
先の見通しについても机上の空論状態が続いています。事故炉は石棺化等
で封印する等実行の伴った、被ばく労働を最小限にする方針をきちんと打
ち出すべきです。
 また、汚染水もしっかり保管する方針を早急に打ち出すべきです。コロ
ナ感染の危険も含め重大な時期を利用したどさくさに紛れた海洋放出等、
許されるものではありません。
貴社は柏崎刈羽原発の再稼働を計画しているにようですが、コロナ感染
の収束も見えぬ中、すべての工事を中止すべきです。また、今後はますま
す電力消費の減少は避けられない状況になるでしょう。原発に将来の見通
しはありません。
合わせて近年の知見でも新潟は地震発生の要素が多いことがよりわかっ
てきています。経済性も含め、柏崎刈羽原発はすべて廃炉にすべきです。

また貴社は日本原子力発電株式会社(日本原電)に資金援助をすること
を決定したと発表しています。また、青森県六ケ所村の再処理工場にも電
力会社として一番資金を投入しています。
先の見通しのない危険な事業から早急に撤退することを勧告します。
〇質問
1.今後の福島第一原発事故の収束作業に当たり、コロナ対策や労働者
  の被ばく防止対策はどのようにするのですか。
2.IAEAレビュー報告は、汚染水の発生につながる燃料デブリ冷却水の
  注水量を削減するか、ある時点で注水による冷却を終了するか、また
  は閉じた冷却ループを確立することを推奨しています。これに対し、
  どのように取組みを進めますか。
  海洋放流以外の解決策を早急に取り組むべきです。具体策、スケジ
 ュールを示してください。
3.福島第二原発の廃炉に44年かかるとのことです(現時点)。柏崎刈
 羽原発はやめましょう。

福島第一原発事故の収束はのめどもつかず、先の見通しもままならなら
ず、福島の放射線量もまだまだ高いままなのに、被害者への補償は次々と
切り捨てようとする政府と東京電力の対応は許されるものではありません。
貴社は原発事業を早急に廃止し、福島の本当の復興に全力を投じるべき
です。
東電行動憲章にある「いかなる差別も行わず」の原則にのっとり、民間
規制委員会への回答拒否を撤回し、質問書への回答を 6月24日(水)
までに、Eメールで送ってください。
※次回第82回東電本店合同抗議は7月1日(水)18時30分より
 
┗■5.新聞より2つ
 ◆「関電も森山氏を利用していた」「虫のいい話」
  「世間体のためのパフォーマンス」
  関電旧経営陣提訴決定に原発立地の福井・高浜町は…

 旧経営陣提訴を決めた関西電力の高浜原発が立地する福井県高浜町の
野瀬豊町長は15日、「関電内部の問題となるためコメントを差し控えさせ
ていただく」とした上で、「信頼回復に向けた業務改善の取り組みが着実
に実行されているか、今後とも注視したい」と述べた。
 問題を調べた第三者委員会の報告書では、同町元助役、森山栄治氏(故人)
が役員らに多額の金品を渡し、関電から森山氏が関係する企業に不適切な
工事発注があったとされる。
 自営業の男性(73)は「関電も森山氏を利用していた部分がある。森山氏
や前の社長らに責任を押し付けるのは、虫のいい話だ。今の経営陣も責任
の自覚を」と注文を付けた。
 旅館経営者の70代男性は「世間体のためのパフォーマンスではないか」
と冷ややか。「旧経営陣が賠償金を支払えば、会社に責任がないと納得す
るものではない」と突き放した。

6/16(火)0:54配信「産経新聞」
 https://news.yahoo.co.jp/articles/3f7b16aef28c6e43f0ef1850fec51626d7479d10

 ◆再生エネルギー、コロナ下で脚光  太陽光・風力、世界で発電伸びる
  人員少数、感染対策で強み
 新型コロナウイルスの感染対策で世界の電力需要が落ち込む中、太陽光
や風力など再生可能エネルギーの発電量が伸びている。再生エネは多くの
作業員が要らず、感染症にも比較的強い。
 国際エネルギー機関(IEA)も2020年は再生エネだけ増加を予測する。
 意図せず起きたエネルギー構造の変化がコロナ後のニューノーマル(新
常態)となるか注目される。(後略)
  (6月11日、日本経済新聞朝刊5面より抜粋)

緊急報告:「コロナ禍で加速する女性労働問題」(伊藤みどり)

2020年06月23日 | 政治
http://www.labornetjp.org/news/2020/1592873959222staff01
皆様
コロナ時代、多くの差別問題が発生しています。働く現場の性差別問題の現状を、伊藤みどり(はたらく女性の全国センター ACW2事務局) さんが緊急報告します。また単発も受講可能ですので、午後5時までの申し込みで受付可能かと思います。宣伝・受講などよろしくお願いします。李。

一緒に学ぼう!ジェンダー問題 ― ジェンダー問題は「女性だけの問題だ」と思っていませんか?

ジェンダーとは、生まれ持った身体的な違いによる性(sex)ではなく、文化・社会の中で後付けされた性(gender)のことを指します。例えば、「女の子はピンク、男の子はブルー」、「女は家事育児、男は仕事」というような考え方です。そしてこの考え方によって、男の子がピンク好きだからといじめにあったり、女性が出産育児を理由に仕事を辞めなければいけなくなってしまったりすることが、ジェンダーによる差別問題です。

このような“押し付けられた幻想”に気づき、ジェンダーによる差別をなくすことは、女性だけでなくすべてのセクシュアリティの人々が自分らしく生きるためにとても重要なことなのです。この講座では、多様な視点からジェンダー問題について学び、私たちのなかに知らず知らずのうちに刷り込まれた“ジェンダー”に気づくことを目標とします。

◆ 第1回 2020年6月23日(火)
「コロナ禍で加速する女性労働問題」
新型コロナウイルス感染拡大の影響による雇用情勢の悪化により、特に女性の非正規労働者に深刻な影響が出ています。その他にも、セックスワーカー(性風俗従事者)への偏見や差別発言、外出自粛要請により仕事と育児で板挟みになるワーキングマザーなど、女性の労働をめぐる問題が深刻化するなか、ポストコロナ時代の女性労働問題について考えます。

講師:伊藤みどり(はたらく女性の全国センター ACW2事務局)
開催方法オンライン
開催日
全6回・原則として隔週火曜日 (19:00~21:00)
定員50名
コーディネーター:ミホ(梨の木チャンネル運営委員)

申し込み方法https://peaceacademy-apply.nashinoki-sha.com/ (単発の方は1講座を申し込んでください)
*申し込みの方へZOOMのリンクと資料を送ります。
コース希望者の場合は、コース1を選択してください。

梨の木ピースアカデミー(NPA)HPhttps://peaceacademy.nashinoki-sha.com/

◆ 第2回 2020年7月7日(火)
「DV『加害者』を知る~被害者支援のために」
新型コロナウイルスの感染拡大によって要請された外出自粛が影響し、日本だけでなく世界各国でもDV被害の増加や深刻化が懸念されています。
報道等では依然として被害者にばかり焦点が当てられますが、DV問題を解決するためには、社会が加害者を放置せずに対応することが重要ではないでしょうか?
長年にわたりDV加害者側の言葉を聞き、加害者プログラムを実施してきた山口さんにお話をうかがいます。

講師:山口のり子(アウェア代表)

◆ 第3回 2020年7月27日(月) この回のみ月曜
「『戸籍』ではなく『個籍』という考えはどうですか?」
※ コース2「憲法改正問題を考える」の第3回と合同クラス
日本国憲法において、個人の尊厳と両性の平等はその理念に照らして十分であったでしょか。
身分登録を「夫婦と氏を同じくする子」という家族単位の「戸籍」としたことの弊害がみえてきました。10万円のコロナ給付金が世帯主の一括申請で、個人が受け取れないという深刻な事態が明らかになってきました。今こそ、「戸籍」と「個籍」を区別し、自分らしく生きる意味を考えてみます。

講師: 坂本洋子(ジャーナリスト、NPO法人mネット・民法改正情報ネットワーク理事長


◆ 第4回 2020年8月4日(火)
「これからの日本のフェミニズムムーブメント ― #KuToo運動から考える」
近年、SNSの普及により個人レベルでの発言が増え、ジェンダー問題を含むさまざまな問題が少しずつ可視化される時代になりました。
しかし、それでもなお問題が解決される段階には至らず、むしろ「誰でも匿名で発言できる」SNSの利点によって、被害を訴える人々がアンチフェミニストによって執拗に攻撃されるという構造ができてしまっています。この
ような“SNS時代のフェミニズム”の今後について考えます。

講師: 石川優実(俳優、アクティビストで#KuToo署名発信者)


◆ 第5回 2020年8月18日(火)
「韓国フェミニストが語るジェンダー問題の現状と課題」
※ 講師は韓国現地から参加 / 日韓逐次通訳あり
2016年に起きた江南駅殺人事件をきっかけに、韓国のフェミニズム運動に大きな変化がおきました。韓国では最近、国内史上最悪といわれる性犯罪“n番部屋事件”が起きましたが、この事件に対するフェミニストらの怒りが児童・青少年の性保護に関する法律改正につながるなど、大きな動きが出ています。
連帯が高まる韓国フェミニズムの現状と課題について、韓国のフェミニストにお話をうかがいます。

講師: シン・ジヨン(女性労働者会2030女性会 / 中央大学反性暴力反性売買の会代表)


◆ 第6 回 2020年9月1日(火)
「『ジェンダー』への壁を取り除こう ― 『もしかして自分のことかも』への一歩」
最近よく耳にするようになった「ジェンダー」という言葉、なんだか難しそうだなと思ったことはありませんか?
ジェンダー問題が訴える本質である「それぞれに違いがあることを理解し、互いに尊重しよう」というメッセージを、どのようにすれば聞く人々が壁を作らずに伝えられるのか、教育現場で学生たちに向けてデートDVやいじめ、性暴力などについて語ってきたNPOスタッフの方と共に考えます。

講師: 栄田千春(NPO法人レジリエンス)

ーーお知らせ*ご声援のおかげで、6月20日(土)のオープン記念スペシャルトークには200名以上の参加者がおりました。ありがとうございました。You Tube ライブの映像が見られますので、ご覧になってください。https://www.youtube.com/watch?v=8EWt3Q
BbiEs&feature=youtu.be

*受講関連問い合わせNPA HPの問い合わせフォームにお願いしますhttps://peaceacadem
y.nashinoki-sha.com/

或る通訳的な日常 米原 万里

2020年06月23日 | 政治
http://bungeikan.jp/domestic/detail/832/
 目次
 罵り言葉考
強みは弱みともなる
アゼルバイジャン・コニャックの味
 モテル作家は短い!
 ちゃんと洗濯しようよ!
 犬猫の仲

 罵り言葉考
 
 アンドレイ・サハロフ(砂糖)博士がゴリキー(苦い)市に流刑になったころ、市の名称をスラトキー(甘い)に改めるべきだ、などという小話が流行ったものだが、ご存知のとおり、最近現実の出来事として、長年公式筋に「ソビエト文学の父」視されてきたこの作家のペン・ネームは、「ソビエト水爆の父」の流刑先となったヴォルガ河畔の市の名称から外された。作家の生まれ故郷だった市は、作家の生まれた頃も、またその作品の中でもそう呼ばれているニジニイ・ノヴゴロドという昔の名前に戻った。

 スターリン時代の粛正への関与などの資料が白日のもとに晒されたこともあって、モスクワの目抜き通りの名称からも、「ロシア文学の父」プーシュキンの横顔と並んでワンセットになっていた、文学新聞のロゴからも姿を消してしまったゴリキーだが、その作品の全てが無価値になってしまうものでもあるまい。捨てがたい逸品がいくつもある。捨てがたい言葉もある。

 たとえば、ロシア語について、「世界に類を見ない罵り言葉の宝庫」と絶賛している。

 もっともロシア語しか知らなかったはずのゴリキーに、最低一千五百から最高六千ほどの言語があるといわれているこの世界に「類を見ない」などと言う資格があるのかと、至極当然な疑問がわいてくる。でありながら、一方で、妙な説得力を持っているから困る。

 たしかに言語によって、あるカテゴリーの語彙が極端に多かったり、少なかったりすることは度々ある。例えば、農耕菜食民族としての過去が長い私たち日本人のボキャブラリーには、肉体の各パーツを現す単語が狩猟民族だったアイヌの言葉などと較べてみても極めて貧弱で、内臓の各器官の呼称は、ことごとく中国語からの借用である、と金田一晴彦先生がどこかでおっしゃっていた。あるいは、遊牧肉食生活の伝統が長いモンゴル人の多くは、あらゆる種類の野菜をいとも簡単に無造作に「草」と呼んでしまう。そんな場面が、司馬遼太郎「街道を行く」シリーズの白眉「モンゴル紀行」に活写されている。

 今は主権独立宣言して「サハ共和国」と名乗るようになったかってのヤクート自治共和国を十年ほど前に訪れたとき、ヤクート語にはほとんど罵り、貶し、謗る言葉が欠如しているのでヤクート人は喧嘩をするときだけロシア語でやると伺った。これなど、ゴリキーの説を大いにバック・アップしているように思える。

 旧ソ連で日本向け書籍の出版社で長年編集者を勤めていらした関係で、多くの日本人翻訳者と交流し、奥様も日本人でいらっしゃるという、生きた日本語の格好の観察者の立場にあるP.トマルキン氏も、ご自身の体験から次のように述べておられる。

 

 日本人なら、単に首を傾げるか、せいぜい『そうかなあ』という言い方で相手に同意しかねる旨表現するところを、ロシア人なら十倍二十倍の罵り貶し言葉を口走る。水谷 修氏が『日本語の背景に腹芸と相手に対する思いやりがあるのに対して、英語はより相手に対して攻撃的であり過激である』(月刊「日本学」一九九一年十月号所収)と記されているが、英語に関する所見はそのままロシア語に当てはまる。

 (ロシア語通訳協会主催第四十一回学習会:一九九三年十二月十一日 於上智大学)

 

 また、ロシアの小説などに登場する数々の悪罵、愚弄の中でその80%は翻訳不能だと、著名なロシア文学者の先生方がボヤいらっしゃるのは事実だ。他の種類の単語なら、該当する日本語の単語が見あたらない場合、定語を付けたり、言い替えたりするのが常套だが、罵倒言葉を説明訳にしたのでは迫力が失われてしまうから悩みの種なのだという。さもありなんと同情しつつも、では、「このとんとんちき」とか「おたんこなす」とか「おまえなんか豆腐の角に頭ぶっつけて死んじまえ」なんていう言い回しを前にして、世界各国の日本文学翻訳者が途方にくれる姿をも同時に思い浮かべてしまうと、いやわが日本語も罵倒語の世界選手権では結構健闘しておるのではと、ついついひいき目にみてしまう私は、国粋主義の気があるのだろうか。

 ところで、書かれた言語よりも文章化されない言語の方にこの種の言葉の種類も豊富だし、使用頻度も高いのは、万国共通。といっても、私のような通訳者が、そういう場面に出喰わすのは、殆ど皆無に近いほど稀なことである。通訳者を介して意志疎通をはかる以上、決裂寸前の交渉であれ、非難と中傷合戦に終始する会談であれ、そこはお互い外国人相手であることを念頭に置くこともあって、最低の品位は保とうとする潜在意識が働くものらしい。

 実は通訳者にとってこの極めて貴重な、罵り言葉の通訳という体験をしたことがある。いや、正確には、通訳する羽目になって、できなかったことがある。日本のテレビ局が現在はサンクト・ペテルブルグと名を改めたレニングラードでのバレーボールの国際試合をソ連のテレビ局の協力を得て日本に生中継することになった。試合会場の八台のカメラから中継車に送られてくる映像に関する日本側ディレクターの様々な注文をソ連側ディレクターを通じて各カメラマンに伝え、また八つの映像の中からどの一つを選んで日本に送るかという指示を伝える。それを通訳するのが、私の仕事だった。初めのうちは、気取っていたソ連側ディレクターもカメラマンが指示通りの映像を送ってこないと言って苛立ち始めるや、たちまちよそゆきの仮面をかなぐり捨ててカメラマンたちとの激しいやり取りに没頭して行くのだった。それが、

 「ちゃんとボールを追って撮れ!」

 と言えば済むところを、その10倍の時間と語彙を駆使してこれでもか、これでもかという具合いに貶し、罵るのである。「糞」系と「ちんぽこ」系の単語を、まるで間投詞のようにふんだんに惜しみなく散りばめた罵り雑言もこれほど密集すると、憎悪よりも滑稽をもよおすというのが、この時の発見。完全に忘れ去られた格好になった日本側ディレクターが、

 「ネエネエ、なに言ってんのか教えてよおーっ」

 と私にせがむので、訳そうとしたものの絶句してしまった。対応する日本語が見当たらないのである。通訳不能にはなったものの、意味が分かったのは、ロシア人の悪友たちの薫陶のおかげと秘かに感謝した。

 しばらくして、このロシア人ディレクターとカメラマンたちとのやり取りにそっくりな会話が日本のテレビで流れた。しかも、NHK。大韓航空機を撃墜する前にソ連軍が放った偵察機のパイロット同士の会話を日本の自衛隊機が傍受し、それをそのまま日本語字幕を添えて放送したのである。覚えておいでの方も多いと思うが、もちろん、罵り言葉の部分は省略した翻訳ではあった。しかし、音で聞く限り、口汚くも限りなく豊かな罵詈雑言は、自衛隊が必要としている情報を担う言葉の量を圧倒的に凌駕しているのだった。それは、文字化するならば、おおよそ次のような様相をていしていたと思われる。

「xxxxxxxxxおいxxxxxおれだxxxxx○○○○○だ。xxxxxきこえるか。xxxxxxxxxx」

「xxxxxxxxxああxxxxxxきこえる。xxxxxxxxxxxx○○○○○だ。xxxxxxxxxxxx」

「xxxxxxxxxみえたか。xxxxxxありゃxxxxxxKだぜ。xxxxxxKだ。xxxxxxx」

 つまり、xxxxx部分が全てこれ罵り言葉だったのである。それはきっと暗号だったのではないか、と思われる方もいらっしゃるだろう。99・9%違う、と私は思っている。というのは、偵察機のパイロット同士のやり取りで想定され得る内容は、量的には少ないものの罵倒語に分類されない言葉で言い尽くされていたからである。傍受されているとはゆめゆめ思わないからこそ、当人達はあれほど濃密な罵倒言葉を交わし得たのであろう。

 それよりも、こうして貴重この上ないロシア語での罵りあいの場面に接して、この種類の言葉が、親密さの表現に大いに貢献しているという感を濃くした。他人の入り込む余地のない仲間内の雰囲気を創り出してくれるのだ。なかでも卑猥な罵り言葉、紳士淑女が間違っても口にすべきでない表現にその機能が強い。実は、バレー・ボールの生中継の際のディレクターとカメラマン達との掛け合いも、自衛隊が傍受したソ連軍偵察機のパイロット同士のやりとりも、まさにこの種のボキャブラリーにウンザリするほど満ち満ちていたのだった。

 このカテゴリーのなかで比較的、あくまでも比較的なのだが、品のいい罵倒語に「雌犬」あるいは「雌犬の息子」というのがある。ロシア語にも英語にもあるこの言い回しでは、言うまでもなく、女性に対して罵るときには前者を、男性に対しては後者を使う。「雌犬」というのは、相手構わず身を任せる、つまり身持ちの悪い、ふしだらな女を意味する。要するに「ズベ公」、「ズベ女」、「あばずれ」。「あばずれの息子」とは、父親が不明、つまり「父無し子」、「どこの馬の骨かも分からない奴」ということになる。

 イタリア語やスペイン語だと、「売女」とか「売女の息子」という言い方のほうが人口に膾炙しているらしいが、主旨は同じ。

 ところで、この「あばずれ」とか「ふしだら」、言い替えれば「男に対する門戸が広い」ことが女性のマイナス・イメージに、そして「処女」や「貞淑」、すなわち「男に対する門戸の狭い」ことがプラス・イメージになっていくプロセスは、おおらかな母権制社会が崩壊し、私有財産制を基盤とする父権制社会の確立と軌を一にしている、というようなことをエンゲルス先生が「家族・私有財産・国家の起源」の中で述べていたような気がする。母権制のもとでは、どの男の子どもであるかなど全く問題にもならなかったことが、財産権や相続の発生とともに血で血を洗うような重大事になってくる。男は財産を自分の血を分けた子にのみ継承させたいという排他的願望の虜になる。これを擁護し、正当化する制度が確立する中で、男の単なる独占欲は法や道徳律に「昇格」してしまい、「あばずれ」や「ふしだら」は、この排他的財産権を侵害する侮り難い脅威として罪悪視されるようになってしまった。

 先に紹介した「姦りたくてしかたない女」を意味するスペイン語の慣用句「走る女」も、このカテゴリーに分類される貶し言葉であろう。

 そういえば、私の幼年時代「おまえの母ちゃん出べそ」というのがなかなかポピュラーな罵り言葉として子どもたちの喧嘩の最中に愛用されていた。かく言う私も、随分お世話になった記憶がある。母親を貶すことによって、当の相手を罵るという点では、この「雌犬の息子」というのも、同じ手法である。これは相当頭にくるものらしい。スペイン語では、「お前の母親」と言っただけで、相手は青筋がぶっちぎれるほど怒り狂うものだと伺った。ロシア語には、この母親中傷路線上に「おまえの母親を姦った」というのがある。随分と物騒で過激で、わが日本語の「おまえの母ちゃん出べそ」なんて、これに較べると実に無邪気でたわいもない。

 さて、とある年輩の日本人が中国を訪問し、滞在中大変世話になり、親しみを感じるようになった中国人の青年に心からの感謝と親愛の気持ちを込めて、「君は、私の息子だ」と言ったところ、相手は喜ぶどころか、たちどころに怒りの余り顔面蒼白になり席を蹴って出て行ってしまった、という話を中国帰りの友人に伺ったことがある。「私の息子」とは、まさに「おまえの母親を姦った」という意味であって、最高のというか、最低の侮辱なのだそうだ。

 ああ、さすが中国四千年の歴史、「おまえの母親を姦った」といういかにも下品で直截的な物言いが、こんな迂遠な言い方に変わっていくのだなあ。これこそ文化というものではなかろうかと、それを知った瞬間、私は震えが止まらなくなるような感動の波に包まれたものである。

そして、少し落ちつきを取り戻したとき、今度は一種の閃きにも似た仮説が私の心を捉えて離さなくなってしまった。「おまえの母ちゃん」が「出べそ」であるのを知るには、やはりそのような状況にならねば果たせないのではないだろうか。ということは、これもまた「おまえの母親を姦った」の一変種で、余韻を尊び、語り尽くしてしまうことを無粋とする日本文化の特徴を見事に映し出しているのではないだろうか。 

 以上見てきたように、慣用句、成句、熟語に機械的対応は禁物。簡単に他の言語にコード転換できないものである。なぜか。それは、その慣用句や成句や熟語が成立した背景、すなわち過去の文脈を共有していない以上、通常の語彙と文法の知識だけでは理解不可能だからだ。普通文脈というと、単語や、ひとまとまりの表現の前後関係を意味するのだが、前後関係というときに、文章の中だけの前後関係だけではなく、この言葉が発せられた全体の状況、この言い方が誕生した遠い遠い過去の背景、これをも含むことがあったりするのだ。

 そんな事情から、次の機会には「文脈」に捧げることにする。

 ─「罵り言葉考」。1994年『不実な美女か貞淑な醜女か』(徳間書店)に初出。新潮文庫『不実な美女か貞淑な醜女か』所収─

 
 強みは弱みともなる
 *モスクワのインドネシア人

 最近、ドギツイものの何となく間の抜けた話を自動小銃から乱射するような友人を得た。仕事がら海外に行くことの多い人で、仮に須藤敏夫さんと名付けよう。この人は哲学徒にして神学徒で、しかも自称スパイでもあるからして、皮肉屋で偽悪的なところと、いやに説教くさく正義漢ぽいところとが奇妙なごった煮状態になっている。近頃この国ではなかなか見かけない青年で、話していて退屈しない。いつも少し気取って、普遍的抽象的命題を投げかける形で話を始める。たとえばある時、こんなことを言った。

 「人間にとって弱みとは、何だと思う?」
 いきなり、そんなこと問われて、
 「さあー」
 なんて、ちょっと困惑したふうに頭を傾げると、嬉しそうに鼻の穴を膨らませながら、物々しいテーゼを口にする。

「どの人間にも共通する弱みなんて存在しないのよ。弱みとは、その人間が弱みと思いこんだ時点から弱みとなるんだなあ」

 「アレッ、そうだろうか」
 などと、こちらが一瞬考え込んだりしようものなら、ギョロ眼を輝かせる。

 「インドネシアのスカルノ大統領がね」
 「ああ、あのデビさんを第3夫人にした、インドネシア建国の父ね」
 「そうそう。その故スカルノ大統領がモスクワを訪問したとき...」

 須藤さんは言いたくて言いたくて仕方ないのに、こちらをじらそうと勿体つけている。でも結局自分の方がじれったくなったらしく、一気に話を吐き出した。あまりに急ぐものだから、息継ぎもできない様子である。

 「ソ連のKGBが近づけた美女に引っかかって、その美女と過ごしたベットでの一部始終をバチバチ写真に撮られちゃってね。もう、ありとあらゆる狂態、尻の穴までしっかりカメラにおさめられちまった。この写真を見せてスカルノを脅し、ソ連の思い通りに動く傀儡に仕立て上げようと、KGBは考えたわけね。

 写真を見せつけられたスカルノは、震えが止まらなくなったんだけど、それは怖かったせいじゃなくて、喜びのあまりだったの。キャーキャーはしゃいじゃって、写真持ってきた男抱きしめんばかりにして言ったそうだよ。

 『いやあ、素晴らしい写真をありがとう。ほんとにありがとう。おかげで明日から今までの十倍楽しめるよ』

 これ以後KGBは、相手を脅そうとするとき、女だけでは、相手を落とせないこともある、と学んだみたいなんだ。酒に睡眠薬入れて酔い潰して、眠っているところを裸にして男と絡み合ってる写真もバチバチ撮るようになったらしい。こんな写真、本国の本社に送りつけると脅されたらビビるでしょう、普通?」

 それにしても、したたかな政治家とは、一流の脚本家兼演出家兼俳優である。たしかに、一夫多妻を公認されているイスラム教徒であり、その艶福家ぶりを自他ともに認めるスカルノではある。しかし、いやしくも一国の元首である彼が、国賓として迎えられているはずの国の政府機関に女との濡れ場の写真を撮りまくられて、内心ムッとしなかったはずはない。それでも米中ソという各大国との距離を巧みにとりながら、建国途上の自国の独立を維持していかなければならない彼は、激して我を忘れることなく、とっさの判断で巧みにKGBの矛先をかわしてしまった。さすが数えきれないほど多くの修羅場をくぐり抜けてきたスカルノは、KGBより何枚も上手だ。彼なら、男との濡れ場写真を突きつけられても、屁とも思わないんではなかろうか。

 というわけで、わが友須藤さんの導き出した、

「弱みとは、その人間が弱みと思いこんだ時点から弱みとなる」

なる戒めは、脅迫された場合の心構えとしては、実に有効と思われる。