イラン革命防衛隊の司令官殺害後も、米軍、イラクで新たな空爆 シーア派武装勢力の車列狙ったと言う。イランは国連に提訴しているが、報復も準備しているようで、危機一髪の状況。大きな戦争にならなければよいが。フランスの通信社AFPが、解説していたので、引用した。
【1月4日 AFP】(更新)イラク国営テレビは、米軍が4日、イラクのイスラム教シーア派(Shiite)武装勢力の連合体「人民動員隊(Hashed al-Shaabi)」を狙った新たな空爆を実施したと伝えた。この情報について、米軍は今のところコメントしていない。
米軍は前日の3日、4日の空爆のほぼちょうど24時間前に、イラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊「コッズ部隊(Quds Force)」のガセム・ソレイマニ(Qasem Soleimani)司令官を殺害していた。
イラク国営テレビは、4日の空爆はイラクの首都バグダッドの北で実施されたと報じたが、標的となった人物の名前は伝えていない。警察筋はAFPに対し、人民動員隊の車列が空爆され死傷者が出たと述べたが、死傷者の人数は明らかにしていない。
【1月4日 AFP】米国は、イラクの首都バグダッドで行った空爆で、イラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊「コッズ部隊(Quds Force)」のガセム・ソレイマニ(Qasem Soleimani)司令官を殺害した。この前代未聞の作戦は、米国と中東地域の同盟諸国にとって先行きの不透明な状況を生むとともに、作戦がどのように行われたのか、そして次に何が起こるのかという疑問を生んでいる。
■作戦はどのように実施されたのか?
米国防総省は今回の作戦がドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の命令によって実施されたことを明言する一方で、作戦の詳細な内容は明らかにしていない。
空爆は、バグダッドの国際空港に通じる路上にいた車両2台に対して行われ、ソレイマニ司令官はこの車両のうちの1台に乗っていた。
複数の米メディアは、攻撃には無人機が使用されたと報道。一方イランの国営メディアは、米軍のヘリコプターが攻撃を実施したと伝えた。
外国の軍人を空爆で殺害するやり方は、米軍ではなくイスラエル軍の常とう手段だ。米軍は通常、要人を殺害しようとする場合には特殊部隊による精度の高い作戦を実施する。
例としては、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)創設者のウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者や、直近ではイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者の殺害作戦がある。
■なぜ今なのか?
米国はここ数か月間にわたってソレイマニ司令官の動向を注視してきており、より早期の作戦実施も可能だったはずだ。
米国防総省は、同司令官が「イラクと地域各地にいる米外交官・軍人を狙った攻撃を積極的に画策していた」と説明している。
マーク・エスパー(Mark Esper)米国防長官はこれに先立つ2日、米国は攻撃計画の情報があった場合「先制行動」も辞さないと警告。イラク北部キルクーク(Kirkuk)で先週発生した軍事基地に対するロケット弾攻撃で米国人民間業者が死亡したことにより、「情勢が一変した」と述べていた。ロケット弾攻撃は親イラン派勢力が実施したとされている。
■今後の展開は?
ソレイマニ司令官の死亡を受け、原油価格は中東地域の緊張が高まるとの懸念により4%以上上昇した。
イランは報復を宣言。同国と緊密な協力関係にあるレバノンのイスラム教シーア派(Shiite)政党・武装組織ヒズボラ(Hezbollah)は、ソレイマニ司令官殺害の責任を負う者に対する処罰は「世界中のすべてのレジスタンス戦士の任務」となると表明した。
中東には親イラン派勢力が多数存在し、湾岸諸国の米軍基地やホルムズ海峡(Strait of Hormuz)を航行する石油タンカーや貨物船を標的とした攻撃を遂行する能力を有している。またイランは、すぐにでもホルムズ海峡を封鎖することが可能だ。
親イラン派勢力の攻撃対象としてはこのほか、イラクやシリアに駐留する米兵や、その他の中東諸国の米大使館がある。あるいはイスラエルやサウジアラビア、さらには欧州諸国など米国と同盟関係にある国々が標的となる恐れもある。
米シンクタンク「カーネギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace)」のキム・ガッタス(Kim Ghattas)氏によると、今後の展開については多くの可能性があり、予測は困難だという。ガッタス氏は「戦争か、混沌か。限定的な報復か、あるいは何も起こらないのか。それは中東や米国の誰にもわからない。これは前例のないことだから」と述べた。(c)AFP/Sylvie LANTEAUME

イラクの首都バグダッドの国際空港の道路で、ガセム・ソレイマニ司令官が殺害された米空爆を受けて炎上する車。イラク軍の公式フェイスブックページより(2020年1月3日撮影)。(c)AFP PHOTO / HO / IRAQI MILITARY
AFPが、米による司令官殺害 イラン報復の選択肢は、サイバー攻撃、ホルムズ海峡封鎖かと解説していたが、大きな戦争にならなければ良いが。
【1月4日 AFP】米軍がイラン革命防衛隊(IRGC)の対外工作を担う精鋭部隊「コッズ部隊(Quds Force)」のガセム・ソレイマニ(Qasem Soleimani)司令官を殺害したが、中東の同盟勢力の結集から海上交通の要衝の封鎖、国境を越えてのサイバー攻撃まで、イランは宿敵・米国に報復する選択肢に事欠かない。
イランは、非対称戦争(戦力的にかなり優勢な敵に仕掛ける戦争)のメリットをイラン・イラク戦争(1980~88年)の死闘を通じて学んだ上、イラクやシリア、レバノンなどに強い影響力を有しているため、中東に駐留する米軍への対抗手段も複数ある。
イランがソレイマニ司令官殺害の報復として取り得る主な選択肢を以下にまとめた。
■代理勢力を利用
イエメンのイスラム教シーア派(Shiite)反政府武装組織フーシ派(Huthi)からイラクのシーア派武装勢力、レバノンのシーア派政党・武装組織ヒズボラ(Hezbollah)まで、イランは中東各地に大惨事をもたらし得る勢力を支援している。
主戦場はイラクになるとみられている。親イランのシーア派武装勢力は、駐留米軍の撤退を目指して活動したり、イラン政府を揺るがしたりすることで、新たな政治危機を生み出す恐れがある。
米シンクタンク「ワシントンインスティテュート(Washington Institute)」の対テロ活動、情報活動の責任者マシュー・レビット(Matthew Levitt)氏は、「イスラエルも標的となる可能性がある。イランはイスラエルを米国の手先にすぎないとみなしているからだ」と指摘する。
■サイバー攻撃
イランが取り得るより巧妙な対抗手段としてサイバー攻撃がある。専門家の見方によると、イランは欧米の主要なサイバーインフラストラクチャーを攻撃する能力を増強し、同国に忠誠を誓った「サイバー軍」さえ作り上げたという。
フランスの情報セキュリティー専門家団体CLUSIFを率いるロイク・ゲゾ(Loic Guezo)氏は、イランのサイバー攻撃の第一目標は、ダムや発電所といった産業基盤になるとの見解を示している。
■石油輸送の大動脈の封鎖
ソレイマニ司令官殺害により中東からの石油供給が寸断されるとの懸念から、原油価格は一時4%超急騰した。イランが世界的な海上交通の要衝ホルムズ海峡(Strait of Hormuz)を封鎖するのではないかという懸念は大きい。
■軍事攻撃
最も破局的なシナリオは、イランによる軍事攻撃だ。イランが中東の米国とイスラエル、サウジアラビア勢力に対し弾道ミサイルを使用すれば、中東での全面的な紛争に発展する恐れがある。
独立系シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」のイラン専門家ネイサン・ラファティ(Naysan Rafati)氏は、イランが米国領を攻撃する可能性は小さいと指摘している。専門家の間では、イランがどんな措置を講じようと米国の存亡を脅かすことはないとはみられている。
ICGのイラクとシリア、レバノンのプロジェクト総括責任者ハイコ・ウィメン(Heiko Wimmen)氏は、「今のところは、米・イラン両国が直接的な戦争よりも相手が引き下がることを望んでいるというのが基本的な想定だ」と指摘した。
米首都ワシントンに拠点を置く中東研究所(Middle East Institute)のアレックス・バタンカ(Alex Vatanka)氏は、「チャンスがめぐってくれば、イランは乗じる」と述べ、イラン指導部は「自滅的」はなく「チャンスをうかがっている」との見方を示した。(c)AFP/Didier LAURAS and Stuart WILLIAMS with Ivan COURONNE in Washington