9月16日(水)、7年8カ月、史上最長(第二次だけで2822日、通算3188日)の第2次安倍晋三政権がやっと終焉を迎えた。そして、やはり最長の官房長官から成り上がった99代菅義偉政権がスタートした。9月12日の日本記者クラブ主催総裁選公開討論会では、自民党内の話ではあるが、3候補のなかで石破議員の主張が圧倒していた。しかし5派閥の合成圧力には勝てない。
東京新聞2020年9月16日夕刊
ただ閣僚は、財務(麻生)、外務(茂木)、経産(梶山)など主要閣僚は留任、ポスト変更が官房長官(加藤)、行革・規制改革(河野)など3人、上川・法務、田村・厚労などかつて同じポストを務めた閣僚もいるので、第4次アベ内閣第3次改造内閣というような顔ぶれである。方針も自分で語るとおりまず「アベ政権の継承」、斎藤美奈子さんが名付けたようにまさに「続・安倍政権」「続・最悪政権」である。
なお、菅は横浜市議になる前、小此木彦三郎(中選挙区時代の神奈川1区)の秘書を11年務めたが、息子の八郎を国家公安・防災大臣、安倍の実弟・岸信夫(岸家への養子)を防衛大臣に任命したが恩返しのつもりなのかもしれない。防衛、国家公安委員長とコワもてセクションに抜擢したのもなにか意味があるのかもしれない。また上川法相はオウム事件の13人も含め16人もの死刑命令を執行し、執行前夜安倍と宴会をやっていたことで有名になった。「死に神」と呼ばれたあの鳩山邦夫ですら13人だから罪深い法相の復活だ。
副大臣、政務官でわたくしが名前がわかるのは三原じゅん子(厚労副)、朝日健太郎(国交政務)くらいだが、堀内詔子(環境副)、葉梨康弘(農水副)、田野瀬太道(文科副)、岩井茂樹(国交副)など二世議員が何人かいることはわかる。
そこで、この菅内閣の今後を考えるにあたりアベ政権がいったいなにをしたかを考えるべきである。第一次では教育基本法改悪を実行し教育の破壊(2006)、第二次はたくさんあり過ぎるが、教育無償化から朝鮮学校のみ狙い撃ちし文部省令を変更して適用除外に(2013)、特定秘密保護法制定(13)、武器輸出三原則の廃止(14)、集団的自衛権の閣議決定による改憲(14)、安保法制強行採決(15)、組織的犯罪処罰法(共謀罪)の強行採決(17)、カジノ・IRリゾート法成立(18)、その他身内優遇の森友学園問題(17)、加計学園問題(17)、桜を見る会(19)など、法律も憲法も無視しやりたい放題のことをし続けた。
9月19日(土)午後、いつもは議員会館前で行っている総がかり行動が拡大され「戦争法強行からまる5年 戦争法は廃止!いのちをまもれ!改憲発議とめよう!9・19国会正門前行動」が開催された。主催者発表で参加3500人。コロナ禍以降、わたくしが参加した集会で最大だった。
憲法共同センター・小田川義和さんの主催者あいさつのあと、スピーチしたのは、議員では福島瑞穂(社民)、辻元清美(立憲民主)、志位和夫(共産)の3人(到着順)。
市民では、新宿などで国会パブリックビューイングを実行し「ご飯論法」を可視化する上西充子さん(法政大学教授)、「止めよう!辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会の木村辰彦さん、安保関連法に反対するママの会の町田ひろみさん(保育士)の3人だった。
議員たちからは、5年前のこの日強行採決で成立させた安保法制、みんなのがんばりで安倍の悲願の改憲は5年経っても実現できなかったこと、ここ数回の選挙で立憲野党共闘の成果が生まれ、今回の首班指名投票で枝野立民党首に票を集中させたこと、1年以内に確実に実施される総選挙での共闘、さらには連合政権の政権構想や政権公約の練り上げ、などのアピールがあった。
市民からは、5年前の体験を原点に自分なりに考え個人としての活動をしていること、継続することの重要性、一人一人が自分らしく生きられる現行憲法の精神に則った社会をめざし、身近な疑問に自分で動いて変えようとするなど、なぜご自身が行動するか語られた。
そのなかから2つのトピックスを紹介する。ひとつは志位委員長の「敵基地攻撃能力」に関するものだ。
7月の参議院外交防衛委員会で河野防衛大臣(当時)は敵基地攻撃は現行憲法で可能と強弁したうえで「一般論として申し上げれば、敵基地攻撃のためには、他国の領域において移動式ミサイル発射機の位置をリアルタイムに把握するとともに、地下に隠蔽されたミサイル基地の正確な位置を把握し、まず防空用のレーダーや対空ミサイルを攻撃して無力化し、相手国の領空における制空権を一時的に確保した上で、移動式ミサイル発射機や堅固な地下施設となっているミサイル基地を破壊してミサイル発射能力を無力化し、攻撃の効果を把握した上で更なる攻撃を行うといった一連のオペレーションを行うことが必要である」と答弁した(議事録より)。
これはミサイルを一発撃つというようなものではない。相手国の領域に乗り込みミサイル基地をしらみつぶしに攻撃し、焼け野原にするという話だ。こんなものが憲法9条の下、認められるわけがない。しかも重大なことは安保法制による集団的自衛権の発動として敵基地攻撃できるのかという質問に対し、否定しなかった。こうなると日本への攻撃がまったくないのに、米軍と自衛隊が相手国の領域に乗り込み、いっしょになって相手国を焼け野原になるまで攻撃することまでできることになる。こんな道は絶対に許せない。やはり安保法制は廃止し立憲主義を回復すべきだ、と強調した。
また沖縄出身の木村辰彦さんから、沖縄県知事へ意見書を提出してほしいという強い協力要請があったので紹介する。
4月21日防衛省沖縄防衛局は、あの辺野古大浦湾の軟弱地盤の改良工事のため設計変更を承認してほしいという申請を知事に提出した。防衛省は選挙で示された民意を踏みにじり一昨年12月と昨年3月辺野古の2つの区域に土砂投入を強行した。残念ながら5割が埋め立てられた。しかし県民の粘り強い闘い、全国の人の支援により工事は大幅に遅れている。防衛省の発表であと1年半近くかかる。さらに埋め立てずみのところでも、土砂はまだまだ規定の高さには達しておらず、工事は行き詰っている。
この申請書には、工事方法は書かれているが、軟弱地盤の面積や深さ、杭の本数などの詳しい説明はない。また工事費は当初の2.7倍、9300億円となり12年かかる。これは知事が承認してからの時間で、不承認で裁判になればもっとかかる。県の試算では2兆5500億の費用がかかる。
9月8日から28日までが告示縦覧期間で、県民だけでなく全国の人びとが納税者・主権者の立場で意見書を提出できる。
大浦湾の海面下70-90mは軟弱地盤なので超難関工事になる。土木専門家は不可能だと言っている。埋立予定地域には2本の活断層がある。地震専門家は震度2以下の地震が起これば軟弱地盤が崩壊するという。2010―20年に震度1の地震が60回、震度2が13回、震度3が3回発生した。この頻度なら、今後10年のあいだに必ず崩壊する。このように辺野古新基地が完成する見通しはまったく立たない。玉木知事や沖縄県民に連帯する意見書を書きぜひ沖縄に送っていただきたい。知事もこれから全国からの意見書を審査し、来年1月下旬ごろ不承認にする。
また10月14日の沖縄県の日本政府に対する3つの裁判支援学習集会のアピールを行った。
最後に、主催者から「今日の行動は、安倍退陣を突破口とし政治を大転換していく新しい闘いの出発点だということをいまここで確認し合いたい。現在のコロナ禍は政治の大転換を求めている。わたしたちはすべての核兵器と武器をガラクタにするような平和を実現し、世界の軍事費を命と暮らしを守る財源に変えるような大転換を日本の政治から切り拓いていこう」とのアピールがあった。
なお、この日の集会の様子はこのサイトで動画を見ることができる。
総がかり行動・菱山南帆子さん
安倍政権は、いくら失政を重ねても支持率は40%を維持し、7回の選挙で大勝した、すなわち「民意」を味方にできたのはなぜだろう。個人的な安倍への不信感は広がっていた。内閣不支持の理由で一番大きいのは「人柄が信頼できない」だった。一方、支持の理由で大きいのは「他の内閣よりよさそう」「実行力がある」だった。
これだけ民主主義、さらには立憲主義に反したことをやり続けたのに最長の総理であり続けられたのは、「人事のアベ」「チーム・アベ」がひとつの要因ではないか、と考えるようになった。
黒子のような「内閣総理大臣補佐官」とか「内閣総理大臣秘書官」というスタッフが実際には政策をつくり、安倍は自分の責任をあいまいにしたまま、スタッフを互いに競わせ果実だけを自分のものにする、これが長期政権の一番の秘密なのではないか、同様に、各種専門家委員会の類も「煙幕」という点では同様ではないかと思われる。
さらに、表に出てこない、竹中平蔵や南部靖之といった「お友達」ブレーンも有効に活用したのではないか・・・。
また諸組織のトップのすげ替え、たとえばアベノミクスの立役者・黒田東彦日銀総裁の就任(13年3月)、小松一郎駐仏大使の内閣法制局長官任命(13年8月)、籾井勝人NHK会長の就任(14年1月)、黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題(20年)など目に余る恣意的人事をよくもここまでというくらい、行い続けた。内閣人事局を活用した官僚の人事ポスト操作もおそらく大きな威力を発揮したのだろう。これらもチーム・アベの「成果」だったのかもしれない。
総理交代で、原発再稼働推進の今井尚哉首相補佐官をはじめとする経産省出身3秘書官は退任したが、杉田和博官房副長官(警察庁出身)や厚労省審議官との海外出張コネクティングルーム宿泊で有名になった和泉洋人首相補佐官(国交省出身)は留任した。また省庁出身秘書官6人のうち、自身の官房長官時代の秘書官5人(うち1人は元の秘書官)をそのまま登用した。
立憲野党共闘は、政権交代のための国政選挙の必要条件ではあるが、十分条件ではない。自公の強さの要因を解明しなければ有効な対策は立てられない。また無党派層だけでなく、自公支持者まで取り込めるような闘いを構築できなければ政権交代は難しい。
☆総がかり行動の行動提起で菱山南帆子さんが呼びかけたのは、9月26日(土)のオンライン・シンポジウム、10月8日のウィメンズ・アクション(有楽町イトシア前)、10月13日の新宿西口・緊急署名街頭宣伝などだった。
☆安倍が辞任表明したときの各紙の論調を比較してみた。8月29日朝日「1強政治の『負の遺産』教訓に」(政治部長)、毎日「安倍首相が辞任表明 行き詰った末の幕引き」(社説)、東京「1強と分断の7年8ヵ月」(政治部長)、「首相退陣表明 「安倍政治」の転換こそ」(社説)と批判的総括が並んだ。これに対し日経「政策遂行切れ目なく」(政治部長)、読売「危機対処へ政治空白を避けよ 政策遂行に強力な体制が要る」(社説)、産経「国難に立ち向かう体制づくり急務」(政治部長)と、いま現在や今後に焦点を当てる。やはり安倍政治へのスタンスの違いが表れている。
●アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。
東京新聞2020年9月16日夕刊
ただ閣僚は、財務(麻生)、外務(茂木)、経産(梶山)など主要閣僚は留任、ポスト変更が官房長官(加藤)、行革・規制改革(河野)など3人、上川・法務、田村・厚労などかつて同じポストを務めた閣僚もいるので、第4次アベ内閣第3次改造内閣というような顔ぶれである。方針も自分で語るとおりまず「アベ政権の継承」、斎藤美奈子さんが名付けたようにまさに「続・安倍政権」「続・最悪政権」である。
なお、菅は横浜市議になる前、小此木彦三郎(中選挙区時代の神奈川1区)の秘書を11年務めたが、息子の八郎を国家公安・防災大臣、安倍の実弟・岸信夫(岸家への養子)を防衛大臣に任命したが恩返しのつもりなのかもしれない。防衛、国家公安委員長とコワもてセクションに抜擢したのもなにか意味があるのかもしれない。また上川法相はオウム事件の13人も含め16人もの死刑命令を執行し、執行前夜安倍と宴会をやっていたことで有名になった。「死に神」と呼ばれたあの鳩山邦夫ですら13人だから罪深い法相の復活だ。
副大臣、政務官でわたくしが名前がわかるのは三原じゅん子(厚労副)、朝日健太郎(国交政務)くらいだが、堀内詔子(環境副)、葉梨康弘(農水副)、田野瀬太道(文科副)、岩井茂樹(国交副)など二世議員が何人かいることはわかる。
そこで、この菅内閣の今後を考えるにあたりアベ政権がいったいなにをしたかを考えるべきである。第一次では教育基本法改悪を実行し教育の破壊(2006)、第二次はたくさんあり過ぎるが、教育無償化から朝鮮学校のみ狙い撃ちし文部省令を変更して適用除外に(2013)、特定秘密保護法制定(13)、武器輸出三原則の廃止(14)、集団的自衛権の閣議決定による改憲(14)、安保法制強行採決(15)、組織的犯罪処罰法(共謀罪)の強行採決(17)、カジノ・IRリゾート法成立(18)、その他身内優遇の森友学園問題(17)、加計学園問題(17)、桜を見る会(19)など、法律も憲法も無視しやりたい放題のことをし続けた。
9月19日(土)午後、いつもは議員会館前で行っている総がかり行動が拡大され「戦争法強行からまる5年 戦争法は廃止!いのちをまもれ!改憲発議とめよう!9・19国会正門前行動」が開催された。主催者発表で参加3500人。コロナ禍以降、わたくしが参加した集会で最大だった。
憲法共同センター・小田川義和さんの主催者あいさつのあと、スピーチしたのは、議員では福島瑞穂(社民)、辻元清美(立憲民主)、志位和夫(共産)の3人(到着順)。
市民では、新宿などで国会パブリックビューイングを実行し「ご飯論法」を可視化する上西充子さん(法政大学教授)、「止めよう!辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会の木村辰彦さん、安保関連法に反対するママの会の町田ひろみさん(保育士)の3人だった。
議員たちからは、5年前のこの日強行採決で成立させた安保法制、みんなのがんばりで安倍の悲願の改憲は5年経っても実現できなかったこと、ここ数回の選挙で立憲野党共闘の成果が生まれ、今回の首班指名投票で枝野立民党首に票を集中させたこと、1年以内に確実に実施される総選挙での共闘、さらには連合政権の政権構想や政権公約の練り上げ、などのアピールがあった。
市民からは、5年前の体験を原点に自分なりに考え個人としての活動をしていること、継続することの重要性、一人一人が自分らしく生きられる現行憲法の精神に則った社会をめざし、身近な疑問に自分で動いて変えようとするなど、なぜご自身が行動するか語られた。
そのなかから2つのトピックスを紹介する。ひとつは志位委員長の「敵基地攻撃能力」に関するものだ。
7月の参議院外交防衛委員会で河野防衛大臣(当時)は敵基地攻撃は現行憲法で可能と強弁したうえで「一般論として申し上げれば、敵基地攻撃のためには、他国の領域において移動式ミサイル発射機の位置をリアルタイムに把握するとともに、地下に隠蔽されたミサイル基地の正確な位置を把握し、まず防空用のレーダーや対空ミサイルを攻撃して無力化し、相手国の領空における制空権を一時的に確保した上で、移動式ミサイル発射機や堅固な地下施設となっているミサイル基地を破壊してミサイル発射能力を無力化し、攻撃の効果を把握した上で更なる攻撃を行うといった一連のオペレーションを行うことが必要である」と答弁した(議事録より)。
これはミサイルを一発撃つというようなものではない。相手国の領域に乗り込みミサイル基地をしらみつぶしに攻撃し、焼け野原にするという話だ。こんなものが憲法9条の下、認められるわけがない。しかも重大なことは安保法制による集団的自衛権の発動として敵基地攻撃できるのかという質問に対し、否定しなかった。こうなると日本への攻撃がまったくないのに、米軍と自衛隊が相手国の領域に乗り込み、いっしょになって相手国を焼け野原になるまで攻撃することまでできることになる。こんな道は絶対に許せない。やはり安保法制は廃止し立憲主義を回復すべきだ、と強調した。
また沖縄出身の木村辰彦さんから、沖縄県知事へ意見書を提出してほしいという強い協力要請があったので紹介する。
4月21日防衛省沖縄防衛局は、あの辺野古大浦湾の軟弱地盤の改良工事のため設計変更を承認してほしいという申請を知事に提出した。防衛省は選挙で示された民意を踏みにじり一昨年12月と昨年3月辺野古の2つの区域に土砂投入を強行した。残念ながら5割が埋め立てられた。しかし県民の粘り強い闘い、全国の人の支援により工事は大幅に遅れている。防衛省の発表であと1年半近くかかる。さらに埋め立てずみのところでも、土砂はまだまだ規定の高さには達しておらず、工事は行き詰っている。
この申請書には、工事方法は書かれているが、軟弱地盤の面積や深さ、杭の本数などの詳しい説明はない。また工事費は当初の2.7倍、9300億円となり12年かかる。これは知事が承認してからの時間で、不承認で裁判になればもっとかかる。県の試算では2兆5500億の費用がかかる。
9月8日から28日までが告示縦覧期間で、県民だけでなく全国の人びとが納税者・主権者の立場で意見書を提出できる。
大浦湾の海面下70-90mは軟弱地盤なので超難関工事になる。土木専門家は不可能だと言っている。埋立予定地域には2本の活断層がある。地震専門家は震度2以下の地震が起これば軟弱地盤が崩壊するという。2010―20年に震度1の地震が60回、震度2が13回、震度3が3回発生した。この頻度なら、今後10年のあいだに必ず崩壊する。このように辺野古新基地が完成する見通しはまったく立たない。玉木知事や沖縄県民に連帯する意見書を書きぜひ沖縄に送っていただきたい。知事もこれから全国からの意見書を審査し、来年1月下旬ごろ不承認にする。
また10月14日の沖縄県の日本政府に対する3つの裁判支援学習集会のアピールを行った。
最後に、主催者から「今日の行動は、安倍退陣を突破口とし政治を大転換していく新しい闘いの出発点だということをいまここで確認し合いたい。現在のコロナ禍は政治の大転換を求めている。わたしたちはすべての核兵器と武器をガラクタにするような平和を実現し、世界の軍事費を命と暮らしを守る財源に変えるような大転換を日本の政治から切り拓いていこう」とのアピールがあった。
なお、この日の集会の様子はこのサイトで動画を見ることができる。
総がかり行動・菱山南帆子さん
安倍政権は、いくら失政を重ねても支持率は40%を維持し、7回の選挙で大勝した、すなわち「民意」を味方にできたのはなぜだろう。個人的な安倍への不信感は広がっていた。内閣不支持の理由で一番大きいのは「人柄が信頼できない」だった。一方、支持の理由で大きいのは「他の内閣よりよさそう」「実行力がある」だった。
これだけ民主主義、さらには立憲主義に反したことをやり続けたのに最長の総理であり続けられたのは、「人事のアベ」「チーム・アベ」がひとつの要因ではないか、と考えるようになった。
黒子のような「内閣総理大臣補佐官」とか「内閣総理大臣秘書官」というスタッフが実際には政策をつくり、安倍は自分の責任をあいまいにしたまま、スタッフを互いに競わせ果実だけを自分のものにする、これが長期政権の一番の秘密なのではないか、同様に、各種専門家委員会の類も「煙幕」という点では同様ではないかと思われる。
さらに、表に出てこない、竹中平蔵や南部靖之といった「お友達」ブレーンも有効に活用したのではないか・・・。
また諸組織のトップのすげ替え、たとえばアベノミクスの立役者・黒田東彦日銀総裁の就任(13年3月)、小松一郎駐仏大使の内閣法制局長官任命(13年8月)、籾井勝人NHK会長の就任(14年1月)、黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題(20年)など目に余る恣意的人事をよくもここまでというくらい、行い続けた。内閣人事局を活用した官僚の人事ポスト操作もおそらく大きな威力を発揮したのだろう。これらもチーム・アベの「成果」だったのかもしれない。
総理交代で、原発再稼働推進の今井尚哉首相補佐官をはじめとする経産省出身3秘書官は退任したが、杉田和博官房副長官(警察庁出身)や厚労省審議官との海外出張コネクティングルーム宿泊で有名になった和泉洋人首相補佐官(国交省出身)は留任した。また省庁出身秘書官6人のうち、自身の官房長官時代の秘書官5人(うち1人は元の秘書官)をそのまま登用した。
立憲野党共闘は、政権交代のための国政選挙の必要条件ではあるが、十分条件ではない。自公の強さの要因を解明しなければ有効な対策は立てられない。また無党派層だけでなく、自公支持者まで取り込めるような闘いを構築できなければ政権交代は難しい。
☆総がかり行動の行動提起で菱山南帆子さんが呼びかけたのは、9月26日(土)のオンライン・シンポジウム、10月8日のウィメンズ・アクション(有楽町イトシア前)、10月13日の新宿西口・緊急署名街頭宣伝などだった。
☆安倍が辞任表明したときの各紙の論調を比較してみた。8月29日朝日「1強政治の『負の遺産』教訓に」(政治部長)、毎日「安倍首相が辞任表明 行き詰った末の幕引き」(社説)、東京「1強と分断の7年8ヵ月」(政治部長)、「首相退陣表明 「安倍政治」の転換こそ」(社説)と批判的総括が並んだ。これに対し日経「政策遂行切れ目なく」(政治部長)、読売「危機対処へ政治空白を避けよ 政策遂行に強力な体制が要る」(社説)、産経「国難に立ち向かう体制づくり急務」(政治部長)と、いま現在や今後に焦点を当てる。やはり安倍政治へのスタンスの違いが表れている。
●アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。