国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ユーゴスラビア紛争は誰が何のために計画し実行したのか?

2007年10月05日 | 欧州
「世界覇権国オーストリア」シナリオを前提に考えると、ユーゴスラビア紛争は非常にわかりやすい。ユーゴスラビアはセルビアが中心となった南スラブ人の国家であったが、第一次世界大戦でオーストリアの皇太子夫妻を暗殺したセルビアの民族主義は二重帝国の平和にとって非常に危険なものである。従って、セルビア民族主義を徹底的に叩き潰すために、オーストリアによってユーゴスラビア紛争が計画・実行されたのだと私は想像する。いわば、第一次世界大戦に対する復讐、第一次世界大戦の戦争責任に対する処罰と言えるかもしれない。紛争の期間中、セルビア陣営は常に悪者扱いされてきた。そして、セルビアの覇権の元に形成されたユーゴスラビアは解体され、言語や宗教を同じくするモンテネグロまで分離独立したことでセルビアはバルカン半島の小国に落ちぶれた。セルビアの将来を見限って、言語や宗教で近い関係にあるブルガリアの大学に進学するセルビア人高校生も国境沿いで出始めているという。「大セルビア主義」を唱えるセルビア民族主義は根絶されつつあり、バルカン半島に於けるオーストリアの優越が明瞭になりつつあると思われる。EU加盟問題でも、既に加盟済みのスロベニアに加え、クロアチアの加盟交渉が始まっており、近い将来の加盟は確実だろう。セルビアの加盟はモンテネグロやマケドニアより後回しになるかもしれない。 しかし、バルカン半島にはセルビア民族主義の他にオーストリアにとっての重大な敵が存在すると思われる。それは、かつて二度に渡ってウィーンを包囲したオスマントルコの後継国家であるトルコと、トルコによってイスラム化されたボスニア人・アルバニア人である。ボスニア人の文化にはトルコの影響が色濃く残っており、彼らは「イスラム化」されたというよりも「トルコ化」されたと言うべきかと思われる。ボスニアとアルバニアはいわばトルコが欧州内に持つ文化的飛び地であり、ロシアの沿ドニエストル共和国やカリーニングラードと似た状態とも言える。今後トルコが大国化するならば、彼らはボスニアやアルバニアという橋頭堡を利用して再びバルカン半島に勢力を伸ばし、ウィーンを包囲するかもしれない。欧州にはトルコ系移民労働者が多数存在しており、彼らがトルコ政府に呼応して活動する危険すら考えられるのだ。 . . . 本文を読む
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