『不満なのは、X氏を紹介したド・C子爵であった。同子爵はまた、ド・R氏の他愛のない言葉に過剰な反応を示し、二人の紳士は早朝いずれかの場所で剣による決闘をする旨話し合った模様』
『最新ニュース。印刷機に回す直前、以下のニュースが入手された。ド・R氏とド・C子爵の間で決闘が行われ、ド・R氏が脇腹に剣の一撃を受けたが、何ら生命に不安をもたらすものではなかったとの由』
パスカルの手から新聞がすべり落ちた。彼の顔は毒杯をあおったとしても、これ以上にはならないであろうと思われるほど引き攣っていた。
「忌まわしい誹謗だ」喉を締め付けられたような声で彼は言った。「私は無実だ。名誉にかけて誓う!」
相手は顔を背けた。が、その前にパスカルは、相手の目の中に激しい軽蔑の色が浮かぶのを見てとった。彼は自分が有罪の判決を受けたように感じ、取り返しのつかない事態になった今では、もはや希望はないと判断した。
「自分に残された道が何かは分かっている」と彼は呟いた。
ダルテルはすぐさま振り返った。彼の睫毛の間に涙が光っていた。彼は辛そうな感情を表しパスカルの両手を握った。あたかも、死に行く友に対するように。
「気をしっかり持つんだ!」と彼は囁いた。
パスカルは気が狂ったようにそこを飛び出した。
「そういうことだ」と彼はサン・ミシェル大通りを走りながら自分に繰り返していた。「俺にはもうそれしか残っていない」
家に帰り着くと、彼は自分の執務室に入り、二重に鍵をかけた。そして二通の手紙をしたためた。一通は母に、もう一通は弁護士会会長宛てに……。
しばらく考えた後、彼は三通目の手紙を書き始めた。が、書き終える前に、それをズタズタに引き裂いた。それから、決心がついた男の性急さで、机の引き出しから拳銃と弾薬の入った箱を取り出した。
「可哀想なお母さん!」彼は呟いた。「母さんは生きていられないだろうな……しかし、あれを知れば、やっぱり死んでしまうことだろう……苦しみは短い方が良い」
パスカルには思いもよらなかったことがあった。それは、この瞬間、彼がその名を口にした当の母親が彼の挙動の一つ一つ、彼の顔に浮かぶ震えに至るまですべてを見逃していなかったということである。息子が自分を残して裁判所へと駆け出していったときから、哀れな母親は何かとてつもない不幸が起きたことに確信を持ち、すっかり打ちひしがれ、生きた心地がしなかったのだ。パスカルが帰宅し、今まで決してしたことのない行為、執務室に閉じこもるという、その物音を聞いたとき、不吉な予感がまるで弔いの鐘のように彼女の胸を貫いた。本能のようなものに導かれ、彼女は息子の執務室に通じているドアのところまで走っていった。そのドアの上部にはガラスが嵌められており、大部分は曇りガラスになっていたが、目を押し当てて一心に見れば、中の様子を見ることが出来た。