アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

オシリスとホルスの神話

2024-03-23 06:32:00 | ジェイド・タブレット外典

◎ジェイド・タブレット-外典-10-1

◎父なる神オシリスと神の子ホルス

 

古代エジプトの神々の話は、時代が数千年にわたり、かつ主神がラーからオシリスに移ったり、オシリス自体の性質も変遷していったりするので、学者さん以外には精密に読もうとする意欲がわき難いと思われる。ところがオシリスとホルスの神話は、キリスト教の三位一体説の原型となっているということなので、この混乱、爛熟を極める近代西欧文明のそもそもの原因を探るため、ここに上げておきたい。

 

『太陽神ラーは、みずから作り出した世界の直接統治から身をひき、その後は息子のシュウが支配権を引き継ぎ、次いで孫のゲブが跡を継いだ。その次に王位についたのが、ゲブと天空の女神ヌウトの間にできた4人の子供の1人、オシリスである。

オシリスが王になると、弟のセトは嫉妬の炎を燃やし、王位を奪うために陰謀を計画した。ある日セトは、オシリスを含め大勢を宴会に招き、その場でじつに豪華な棺を披露した。そのすばらしさは、一目見た者なら誰もが自分の葬式のためにぜひ所望したいと願うほどだった。セトは、この棺に体がいちばんぴったり納まる者に、これを進呈しようと約束した。そこでオシリスが中に入って横になると、まさしくぴったりと合うではないか。するとセトは棺の蓋をバタンと閉め、そのままナイル川へ投げこんだのである。

オシリスの妹にして妻であるイシスは、夫の遺体を捜しに出かけ、ついに杉林の谷(エジプト学では、これはレバノンの森のことではないかと推定されている)で1本の生きた木の幹に包みこまれているのを発見した。イシスは、魔術的力を使って死んだ夫を生き返らせて、エジプトへつれ帰った。するとセトは、今度は兄の体を細かく切りきざんでふたたび川に投げすてた。バラバラになった遺体は、川の流れに乗ってエジプトの各ノモスに散らばっていった。

これをイシスは、妹にしてセトの妻であるネフティスの助けを借りて1つ1つひろい集め、すべてそろうと、ふたたび魔術的力を使ってオシリスの精力をよみがえらせ、子供を身ごもった。この後、オシリスは冥界の支配者として地下に下り、残されたイシスは、正当な後継者たる息子ホルスを湿地にかくまった。子供時代のホルスは、毒ヘビとサソリの攻撃や、さまざまな病気にさらされていたが、ひたすらイシスの魔術的力のおかげで、身を守り病を癒すことができた。

ホルスは成年に達すると、ラーからゲブをへてオシリスに受け継がれた支配権は自分に帰するはずだとして、セトとの戦いを開始した。この戦いでは互いに姿を千変万化させたが、戦闘中には川の動物に変身することが多く、ある戦闘の真っ最中には、ホルスが銛(もり)打ちになって、カバに姿を変えたセトをしとめようとしたこともある。その場面は、プトレマイオス時代に建てられたエドフのホルス神殿の壁にきざまれている。戦闘は、講和の提案があったり、ラー神を始めとする神々に訴えたりするたびに、一時中断する。

ある中断期間の最中には、セトがホルスを誘惑するものの、後にイシスの魔術によって逆に公衆の面前で恥をかかされるという有名な事件が起きている。最終的に、神々の法廷から妥協案が提示される。ホルスは人々の住むエジプトの土地を支配することとし、一方セトには、砂漠と外国に対する支配権と、太陽の船に乗るラーを悪から守る役割を与えるという案だ。この和解によって停戦が実現したが、外国人となったセトは、末期王朝時代になるとエジプト人の目には悪魔のような姿で描かれるようになる。これは、この時期にエジプトが地理的に孤立した国ではなくなり、外国による占領という過酷な経験をくりかえし受けたためだろう。』(大英博物館図説古代エジプト史/A.J.スペンサー/原書房P86-87から引用)

 

  1. 太陽神ラーは、みずから作り出した世界の直接統治から身をひいたということで、ラーは、キリスト教で言えば聖霊。
  2. オシリスは父なる神。息子ホルスは父の死を踏まえているので神の老いたる子イエスに相当。
  3. 教祖にしか合致しない豪華な棺は、過去数千年の教祖を中心にした組織宗教隆盛を示す。オシリスという組織宗教が死んで、個人であるホルスの覚醒がある。

 

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