◎13番目の係累
(2015-12-26)
「原典 ユダの福音書」からイスカリオテのユダについてイエスが言及している部分。
※[]は、英訳者が推定して復元した部分。
イエスは、弟子たちに、あなた方には、私がわからないだろうと、やや挑発する発言をした。
『これを聞いて弟子たちは腹を立て、怒りだし、心の中でイエスをののしり始めた。
彼らが[理解]していないのを見ると、[イエスは]彼らに[言った]。
「なぜこの興奮が怒りに変わったのか。あなたがたの神があなたがたの内にいて、[・・・]があなた方に心魂の[中で]腹を立てさせたのだ。あなたがたの内にいる、[勇気のある]完全なる人を取り出して、私の眼前に立たせなさい。」
彼らは口を揃えて言った。「私たちにはそれだけの勇気があります」
しかし彼らの霊は、イスカリオテのユダを除いて、[イエス]の前に立つだけの勇気がなかった。ユダはイエスの前に立つことができたが、イエスの目を見ることができず、顔をそむけた。
ユダはイエスに[言った]。「あなたが誰か、どこから来たのか私は知っています。あなたは不死の王国バルベーローからやって来ました。私にはあなたを遣わした方の名前を口に出すだけの価値がありません」』
(原典 ユダの福音書/編著者ロドルフ・カッセル他/日経ナショナルジオグラフィック社P27-28から引用)
「あなたがたの内にいる、[勇気のある]完全なる人を取り出して、私の眼前に立たせなさい。」とは禅問答でよくある質問。これに対してユダだけが出てきたのも、師イエスに近い悟境の人物がまともな回答をしてくるという頻出パターン。彼らのグループが自由で真剣な冥想修行の場であったことがうかがわれる。
ユダが目をそむけたのは、この時点では、師より一段遅れていることの自覚であろう。
この問答のあと、イエスはユダだけに「王国」の秘密を教えてくれる。王国とは不死の王国だが、当然来るべき千年王国のことでもある。秘密を教えられてユダは王国に達することはできるが大いに嘆くことになるだろうと、イエスは不気味な予言を残す。
イエスは、その嘆きの原因を、12使徒が再び全員揃って神とともにあるために、だれかほかのものがユダにとって代わるからだと、説明する。これによってユダは、王国側に入りながら13番目の使徒という位置づけになった。
ユダが、イエスの磔刑のプロデュースができるには、そうした高みが必要だったが、嘆きという代償を払う。いわゆるメジャーな社会組織の側には居られないということなのだろう。これは13番目の係累はいつもそうなのだということを示す。
不死の王国バルベーローとは、言葉で表現できないからバルベーローなのだろうが、正統的表現である。