◎イエスの生い立ちの真相
(2015-12-10)
ケルソスは、イエス一家の姿について当時の有力説を以下のようなものだと披瀝する。
イエスは、ユダヤの村の出身で、田舎の貧しい糸紡ぎ女から生まれた。
彼女の夫は大工で、彼女は姦淫の咎めにより、夫から追い出された。
彼女は夫に放逐されて恥辱に満ちた放浪を続けているときに、ひそかにイエスを産んだ。
イエスは貧困のためにエジプトに出稼ぎに行き、そこで超能力(奇跡力)を披露して、ユダヤに帰還したときに、この超能力ゆえに神と自称したと。
(出典:キリスト教教父著作集第八巻オリゲネス/日本教文館P35)
この話は、広く伝わっていたがゆえに真相に近いものだったろう。我らは週刊誌ではないので、生い立ちについてはあまり興味はないのだけれど。
2000年前に、すでに救世主イエスは、現代の覚者のように弟子たちを友人として遇した。イエスは、処女懐胎した母から生まれたのでなく、大工の夫の夫婦から生まれたのだろうし、イエスは大工で稼いでいたのだろう。
イエスを個人として見れば、一人の政治的にも無力な、経済的にも取るに足らない人物が、宗教的に頑張りすぎてしまって、官憲に捕まり十字架上で刑死するという非業の最期を遂げた。
神の国を実現するためには、2000年前のようにイエス一人、大工一人にがんばらせるのではなく、多くの人、ほとんどの人が神に近づこうとする努力を日々重ねているようでなくてはならない。
そうでなければ、イエスが、『もはや、わたしはあなたがたを僕(しもべ)とは呼ばない。僕は主人のしていることを知らないからである。わたしはあなたがたを友と呼ぶ。父から聞いたことをすべてあなたがたに知らせたからである。』(ヨハネ福音書15-15)
と呼びかけた甲斐はあるまい。
今の時代に貧しい大工一人ではどうにもならない。皆が神に近づこうとしなければ。