◎非人間的な心の絶対
ダンテス・ダイジの詩から
『「奥深い心」
すでに人間はいない
あらゆるものを構え
その中でとりとめもない
人間の喜びと人間の悲しみとを持つ
そのものはすでにいない
人間の喜びと悲しみとから生れる
あのしみじみとした心の果てには
すでに人間はいない
人間にとってあるというすべてのものは
ことごとく消え果て
ただその奥深い心だけが
何の束縛もなく現前している
それは人間の心ではない
人間の喜びも悲しみも
その心のどこにもないのだから
人の子の悲惨な死も
甘美な恋慕も
その心には見えない
また その心は
石ころと人間とに区別がつかない
めくらで不人情な心だ
だが その非人間的な心の絶対から人間の喜びと悲しみとを
しみじみと眺めあたたかく包む
何ものかが
限りなくあふれ出す』
(ダンテス・ダイジの詩集『絶対無の戯れ』/森北出版から引用)
本当の他人のへの思いやり、親切、無私の愛など、この社会に足りないもののほとんどが、石ころの心、この非人間的な心の絶対を体験することなしには、わかるものではない。