◎エドガー・ケーシーの見たアトランティス
錬金術の12の原理を書いたとされるエメラルド・タブレットは、ギザの大ピラミッドの中に埋葬された、ヘルメス・トリスメギストスのミイラが握っていたという伝説もあるそうだが、エドガー・ケーシーのリーディングでは、ピラミッドは墓ではないとしているので、その伝説は史実ではあるまい。
けれども、ケーシーがリーディングした「沈没したアトランティスの記録」とは、エメラルド・タブレットの内容である可能性がある。つまりエメラルド・タブレットとは、ギザの地下神殿かピラミッド本体に保管されているアトランティス文明の粋を記録したエメラルド板のことなのかもしれない。
巷に出回っているエメラルド・タブレットといえば、2種類あって、ひとつは霞ケ関書房のドーリル博士が編纂したもので、中身はとても霊がかっている内容のものなので、読む人によっては好き嫌いがあると思う。ルドルフ・シュタイナーばりの霊的世界がお好きな方に向く。
もう一つは、錬金術系の伝統の中にあるもので、ヘルメスによって12の錬金術の秘密が刻まれたというエメラルドの碑のことで、太古にエジブトピラミッド内で発見されたというが、現物は存在せず、その写本といわれているものの内容を元にしている。
中身はこれ。
《これは、うそいつわりなく真実、確実にしてこのうえなく真正である。一つのものの奇跡をなしとげるにあたっては、下にあるものは上にあるものに似ており、上にあるものは下にあるものに似ている。
そして万物は、一つのものの和解によって、一つのものから成ったように、万物は順応によって、この一つのものから生まれた。このものの父は太陽で母は月である。風はこのものを胎内にもち、その乳母は大地である。このものは全世界のいっさいの仕上げの父である。その力は、もし大地に向けられれば、完全無欠である。
なんじは、土を火から、精妙なものを粗雑なものから、円滑に、きわめて敏捷に分離するがよい。それは、大地から天へ上昇し、ふたたび大地へ下降して、すぐれたものと劣れるものの力をうけとる。
かくしてなんじは、全世界の栄光を手に入れ、一切の不明瞭は、なんじから消えさるであろう。このものは、すべての剛毅のうちでも、いやがうえにも剛毅である。なぜなら、それはあらゆる精妙なものに打ち勝ち、あらゆる固体に浸透するから。
かくて、大地は創造された。したがって、このものを手段として、驚異すべき順応がなされるであろう。このため私は、全世界の哲学の三部をもつヘルメス・トリスメギトスと呼ばれる。私が太陽の働きについて述べるべきことは、以上で終わる。(平田寛訳)》
(『神秘学の本/学研P104』から引用、平田寛訳)
この文に現れる「このもの」とは、荘子でいう混沌のことや、老子の言う名状せざるもの、言葉で言い表せないものや、大極、第七身体のことではなく、有そのもの、アートマン、第六身体のことを言っているように見える。
なぜならば、このものとは、一つのものだからである。
「このもの」の精妙なる動きをパノラマ的に俯瞰できるポジョンにある者がこの文を書いたものと思われる。全体としては、静的なものでなく、大周天的なエネルギーの動きというダイナミズムを感じさせられる。