元和十五年 西暦820年

元和十五年　西暦820年
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憲宗皇帝の強力な統治により淮西・淄青・河北三鎭のうち魏博・成德を制圧し、幽州もまた帰服しようとしており、全国の再統一が間近でした。反面財政は疲弊し、憲宗当人は道教に凝り水銀を含む金丹を常用したため精神障害をおこし、突然激怒して側近の宦官を処罰することがありました。また無能な皇太子［穆宗］を廃し、寵臣吐突承璀の推す澧王惲を立てようとする動きを示しました。そのため皇太子の外戚たる郭釗［元老子儀孫］一族が策動しました。

正月庚子，憲宗崩，陳弘志殺吐突承璀及澧王。
辛丑，遺詔皇太子即皇帝位於柩前。
宦官陳弘志一党は憲宗を殺害し、承璀及澧王をも殺害しました。宦官中尉梁守謙・馬進潭・劉承偕・韋元素・王守澄などが加担しています。当然宦官だけでこのような大事はできず、郭一族や太子が背後にいることは確実です。弘志はこれだけのことをしたにも関わらず処罰されませんでした。またこの時神策軍等の軍人の疑惑・憤懣を抑えるため多額の賞賜をばらまきました。以降それが慣例となり財政の重い負担となりました。

閏月丁未，貶皇甫鎛為崖州司戸參軍。
憲宗の財政面の寵臣鎛が左遷されました。周囲が庇ったので殺害されることはありません。

閏月辛亥，翰林院から蕭俛、段文昌が宰相に登用された。
小心で誠実な二人が登用されましたが、なんらの経綸もなく宰相としては無能でした。

閏月乙卯，尊母為皇太后。
郭氏です。穆宗・敬宗・文宗・武宗は郭皇太后の子孫です。

二月幸丹鳳門觀俳優。丁亥，幸左神策軍觀角牴、倡戲。
憲宗が見抜いていたとおり穆宗は遊び好きの愚人でした。

二月乙未，吐蕃寇靈州。三月乙巳，杜叔良及吐蕃戰，敗之。
癸未，吐蕃寇涇州，右神策軍中尉梁守謙為左右神策京西京北行營都監以御之。
憲宗没後の混乱を狙って吐蕃が侵攻してきましたが、この時点では態勢ができている唐朝軍に撃退されました。

十月庚辰，王承宗卒。成德軍觀察支使王承元以鎮趙深冀四州歸於有司。
さんざん反乱していたが、うまい時点で帰服していた承宗が卒しました。子供は唐朝に人質に取られています。そこで弟承元が擁立されましたが、小心な彼は唐朝が圧倒的に優位な状況を知っているので自立を承諾しません。そして成德軍を完全に歸順させようとします。

十一月癸卯，赦鎮趙深冀四州死罪以下，賜成德軍將士錢。
唐朝は承元を義成節度使に移し、成德に魏博の田弘正を、魏博に昭義の李愬を、昭義に義成の劉悟をという異動を行います。まだまだ憲宗時代の威權がきいていますので、逆らおうとする者はいません。
◎田弘正　魏博の田一族、淄青討伐に功績があり、王承宗の歸順を斡旋しました。仇敵であった成德への赴任に際しては魏博から親衛軍三千をつれ自衛しました。
◎李愬　淮西吳元濟を奇襲により捕らえた名将です。
◎劉悟　李師道を殺して帰順した元淄青将。親軍二千を帯同しています。

十二月庚辰，獵于城南。壬午，擊鞠於右神策軍，遂獵於城西。甲申，獵于苑北。
馬鹿な穆宗は遊び回っています。