写真は伝統的な塗り壁仕上げの下地と仕上がった状態のものです。
現在では、防火構造認定を受けるために
プラスターボードといわれる不燃建材で大壁に仕上げて
その上から塗装する、というのが一般的で、
それのほうが作業肯定的にも合理的で、認定も受けられるということで、
まぁ、当然の流れですね。
それに本格的な下地を組んで塗ると言うことになれば、
当然、壁内部に断熱材を充填することは難しいので、
土の断熱性能は別にすれば、別に断熱は考えなければならない。
そんなことから、写真のような工法はごく一部でしか行われないでしょう。
なんですが、
きのう紹介した室町期の住宅でも塗り壁仕上げで
北上という冬の厳しい地域での暮らしを過ごしていたのがわたしたちの祖先。
昔のことで考えれば、やはり重厚な土による断熱は
もっとも安定的な室内環境をもたらせる工夫だったことでしょう。
ただ、ものすごく手間がかかったでしょうね。
木や竹などで格子状に下地を組み合わせ、
それをていねいに紐で結びあわせています。
伝統工法に強いこだわりを持った方たちの例では、
こういう細かい作業をこどもたちに体験させるというような
そういった取り組みを行っている場合もあります。
家中、こういう壁仕上げをするとしたら、さてどれくらいの工程になるか、
プラスターボード仕上げの10倍程度では済まないでしょう。
しかし、そのような手順というものが
愛着であったり、家を大切に思うこころを育てる部分もあるかも知れません。
それと、技術って、
一度失われると、再度獲得するのに大変時間がかかる。
実際にそういう仕事が存続して、生きた学習機会が保証されれば、
技術は延命し、また進歩も促される。
現代では、住宅内部に蓄熱装置を考えた方がいいという意見も強い。
そうならば、芯材にコンクリート壁を作った上から、
こういった土の壁を表面に造作するというのはどうでしょうか。
そしてそれを家のオーナーに作業してもらう、という仕掛け。
コンクリートだけであればその無表情さが問題だけれど、
このようなざらついた質感の土の壁であれば、
デザイン的にも心理的にも暖かい仕上げになっていくのではないでしょうか。
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