三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

新冠牧場・龍雲閣_1

2012年05月08日 06時15分21秒 | Weblog





さて、きのうご案内した「龍雲閣」であります。
まったく不勉強のそしりを免れません。
そこに行って見るまで、こういった建築が北海道のこの地にあることを
不覚にも知りませんでした。
建築で日本の国宝になっているのは、北海道にはまだ存在していません。
国宝指定には、要件として歴史性が大きくあって
そのため、高々百数十年の歴史時間しかない北海道では
そういった条件をクリアする資格を持った建物がないのです。
しかし、たとえば北海道庁赤煉瓦庁舎とか、時計台とか、
函館の五稜郭、小樽の石造り倉庫群など、
その候補はたくさんある。
「北海道開拓」というのは、明治以降の日本近代国家が
夢と危機感を託して取り組んだ「国家プロジェクト」ではあるのですが・・・。
しかし、日本の国宝要件というか、
建築に関わって、そうした「国家プロジェクト」性を表現するものとしての
皇室との関係というような由緒には圧倒的に乏しい。
そんな風に思ってきていました。

ところが、
馬産という、明治国家がこれも軍備増強・農業開拓振興政策の一環として
取り組んできた事業が存在していたのですね。
そしてその創始として、新冠に「御料牧場」が開かれたのは
間違いなく「国家プロジェクト」であった。
御料牧場とは、皇室や宮家の食材を飼育・栽培する宮内庁直轄の牧場。
この牧場は1872(明治3)年に起業し、1889(同22)年御料牧場となった。
迎賓館として建てられたこの建物には、
大正天皇、昭和天皇が皇太子のときに行啓しています。
皇室の世継ぎの台臨を仰ぐための建築だったのですね。
案内書きなどには、明治国家の重鎮、伊藤博文などの名が残され、
大正天皇から今上まで、この建築への行啓記録が存在している。



建物は2階建の主屋と、その前後に突き出た平屋の付属屋2棟。
主屋2階から見渡す広大な牧場の景色は圧巻だったと偲ばれる。
上の写真のような欄干から、眼下に勇壮な馬群の乱舞を高覧されたのでしょう。
まさに明治国家が目指した近代君主制システムに則って
次代の君主への軍事的素養の涵養というような国家意志も感じられます。
新冠牧場・龍雲閣という貴賓館は、こうした目的を持った建築だったのですね。
こういった「皇室ゆかりの」というような木造建築って
北海道には縁のないものと思い込んでいたので、
驚きの連続だったのです。
しかし、それは予備知識として入っていたわけではなく、
実は、公開されているちょっとした古建築、くらいしか認識がなかった。
本当は、2階の殿舎内部を見学している内に、
「これは・・・」という驚きの連続だったからなのですね。
あしたは、その驚かされた建築内部の様子をご紹介します。
この建物は、しずない桜まつり (5月13日まで開催です)期間中だけ、
一般に公開されています。お時間がある方はぜひご覧ください。
って、別に宣伝料をもらっているわけではありません(笑)。


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