写真は、龍雲閣主室書院の外側からのものです。
ご覧のように、嵌められている板の木目が杢の世界で珍重されるもの。
通常のヤチダモの板からこういった木目の板が取れると言うことはなく、
なんでも、きわめて貴重な板目として、
たとえば一山の木から一本でもこういう木が取れたら、
ものすごく儲かるんだそうであります。
まぁ確かに生物的な奇跡を見る思いがしてきます。
こういった銘木の世界というのは、北海道では、しかし、
大きく関心を持たれるということはない。
それよりも、実質的な「あたたかさ」というような目標に向かって
多くの努力が傾注されてきたのが、北海道の建築の歴史。
こういった銘木や板目を観賞するためには、
建築の作法も、当然、真壁工法になって、
柱や梁という素材が主役になっていきますね。
それに対して、北海道ではどうしても「壁」のほうにこそ深い意味がある。
もちろん最近でこそ、真壁での高断熱高気密ということも
追求されるようになってきているけれど、
まだ、こういった素材の世界の文化性まで顧みられることは少ない。
復元された幕末の日本建築・函館奉行所もそうなんですが、
こうした「日本建築美」は、厳しい気候風土の中では
夏場の一時期だけしか、北海道では、その良さを感受することが出来ない。
で、日本建築の側からそういった寒冷地へのアジャスト努力というのは
為されてこなかった。
茶室で、伝統的な文化格式を強調する美的「権威」的な強制はあったけれど、
そういうひとたちから、冬場のそうした施設の耐えられない寒さを
解消させるような工夫や努力というのはされたことがない。
関心がない、ということなのでしょうね。
日本の美的文化というのは、非常に求心的で、原理主義的になりやすく
他に対して権威的に対すると言うことが多いように思います。
ひたすら、そういう原理主義的な純粋性を求めるという方向になっていく。
私たち北海道人からすると、実質のない、空虚な権威をもって対されるように感じる。
ひたすら寒いけれど、見栄え的な美しさには深遠な文化性があるのだ、
というように説教されるみたいな感じですね。
説教したり、されたりしながら、お互いに寒さに震えているというような光景。
北に建てられた皇室ゆかりの建築として
この建物はきわめて面白い建築だけれど、
私たち北海道人にとっては、ほとんど意味が通じてこなかった。
どうもなかなか埋められない距離が存在しているのでしょうか。
さて、きのうから出張であります。
東京での要件が2件、お土産がずっしりでまとめるのが大変(笑)。
会ったのはむしろ木造伝統工法を一生懸命やっている方ですが、
人間的にはまったく志向性が同じというのは感じます。
やはり、日本の北と南、コミュニケーションの構築が必要ですね。
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