日本の住宅から姿を消しつつあるものに
「雨戸収納」があります。
アルミ製のものはいざ知らず、木製の雨戸はほとんど新築では見られない。
雨戸を開け閉めするという行為は、
家のメンテナンスを習慣づけるのに、たいへん有効だったと思うのですが、
ガラスの窓が普及するのに反比例していたのではないかと推測します。
考えてみると雨戸を必要とする家屋は、同時に壁のない柱だけの室内空間も持っていた。
長い縁側空間が容易に想定できる。
そういう空間であれば、雨戸をメンテナンスする動作場所も確保されている。
その終末端にあって、普段の雨戸格納に利用されたのが
この雨戸収納です。
たぶん、昔の日本家屋にあっては、必要不可欠な装備であったのでしょう。
写真は、先日の住田見学時に見たデザイン収納の様子。
このように見せられてしまえば、
確かに日本家屋において、面のデザインを必要とする
数少ない部位であることを知らされる。
しかしたぶん、他の壁面に比較してより「仮設」的な装置であり、
そこまでの配慮は普通一般には思い至らなかったに違いない。
縦縁で区切られた壁面の5分割された面を木張りの木目の変化で表装する。
さらにその上下部には用途としては濡れた雨戸の乾燥を狙って
欄間が作られ、まるで室内デザインと同様な透かし彫りで仕上げている。
この家は商家とも農家とも言えるような「旦那」様の家のようでしたが、
江戸期、まさに経済の主体であった、そういう層の富貴さを
物語っているかのようであります。
この家には蔵だけでも3棟あったのです。
それも、みんな豪壮な建物。
そういうなかでもこの雨戸収納、あまりにも立派で、家具とも見まごうばかり。
ひょっとすると、大工の仕事と言うよりも建具職人・家具職人の仕事かも。
いずれにせよ、木工技術や生活文化の積層の素晴らしさを垣間見せてくれるもの。
しばし感嘆の声を上げていた次第でした。