ここんところ、毎日のように森口さんという名前が露出している。
ちょうど山中教授のノーベル賞受賞とタイミングが重なったことで、
より注目度が上がってしまったのだけれど、
きのう、帰国しての成田での様子は報道の過熱ぶりを如実に表していた。
さて、今回の事件はいろいろな角度があると思うけれど、
メディアに多少なりとも関わって生きている人間からすると、
これが読売新聞の1面記事になったという事実がいちばんの関心事。
このことが表している大メディアというものの危機です。
わたしは住宅についての雑誌を作っているわけで、
とても他人事とは思えないのです。
わたしたちは、住宅という領域でだけ世間をウォッチしているのですが、
そうすると、専門性のある部分についてはある程度の「常識理解」がある。
その大枠としての理解の中で、新しい事象に対しての対応が日常なのですね。
一方、なんでもありの社会の全領域を扱っている新聞は
なかなかそういった専門性のある領域については、難しい対応になる。
わたしの領域でも、いろいろなマス媒体の記者の方と接する機会があるけれど、
そういう「住宅担当者」という記者さんも
2年程度の期間で担当をはずれていって、またイチから始める記者さんに替わる。
そのたびに専門性のあるわたしどもに訪ねてこられて、
下取材的なことを情報収集されていく。
こちらは、敬意も持ってなるべくていねいに対応しているつもりですが、
その都度ゼロに戻っての説明というのは、なかなか骨も折れる。
担当が替わって新鮮な感受性を持って、特定領域のことに触れるというのは
大変いい面も持っていると思うのですが、一方で知識不足と言うことは
免れない部分もある。
医学的な専門性を持った今回の読売新聞の記事について、
その掲載決定プロセスに、おいおいというまでに、それがモロに出てしまった。
一度出てしまえば、信用の失墜は避けられない。
しばらくの間、読売は差し障りのない記事構成に向かうことは目に見えている。
で、わたしの最大関心事は、そこです。
読売新聞がここで、どんなふうに対応していくのか?
契約で縛られている月極の読者は
簡単には契約解除には向かわないと思いますが、
コンビニや駅スタンド売りなどの、メディアの競争力を如実に示すバロメーターでは
確実に落ちていくだろう。
そういった現実を突きつけられて、
メディアとして、どのように「次の手」を出してくるか?
とりあえず、今回の大ミス記事関連事実の「徹底検証」という
取材・報道の姿勢は見せているようだけれど、
現在見る限りでは、他社の「この機会に読売をたたきつぶせ」という
「徹底取材」攻勢の方がずっと勢いを感じる。
メディアとしての大失態から、さてどんなふうな作戦で捲土重来を期すか、
そこに強い興味を持って見ている次第です。