先日の秋田県仁賀保での住宅取材から。
なかなか各地の工務店さんは頑張っているなぁと実感させられました。
というのは、夏の冷房対策についての取材でのひとこま。
北海道を中心に発行している住宅雑誌の側としては、
夏の室内気温のコントロール、涼房というものは新しい気付き分野。
頭では理解したつもりでも、なかなかとっさには実感を伴っては出てこない。
そういう取材の中で、1階の階高がやや高く3.5mくらいある居間に
高い位置に「排煙窓」が開けられていまして、
それの電動のセンサーが取り付けられていた。
ややごつくて、これはどうかなと思わされたのですが、
その機能面のメリットを教えていただいたとき、
「2階の窓といっしょに開けていると、この1階の高窓からは冷気が下りてきます」
と言われて、そううまくうくかなぁと思ってしまった。
で、そんな表情を浮かべてしまったのを、めざとく見つけられ
「温度差換気ですよ」と咄嗟に言われ、はっとさせられた次第。
そうなんです、
この「温度差換気」が日本の通風換気の基本要素なんだと再確認させられた。
北海道でも、冬の内外温度差を利用して、
「パッシブ換気」という名称をつけて普及が進んでいますが、
むしろ、日本の温暖地・蒸暑地ほど、
この「温度差換気」を活用しなければならない。
屋根のある建物の中では、空気は上に行くほど温度上昇するのは物理の基本。
で、その基本をわきまえていれば、
2階が高温になるのを利用して、
そこからは暑い空気を排出させ、下の階からは外気の新鮮空気を導入すればいい。
そうすれば、風のない日にも通風を呼び起こすことが出来る。
先日見学して来た沖縄の中村家住宅でも、やはり基本は同じ考えで
屋根頂部に空気抜きをしつらえ、室内空気の排出経路を明確にしていた。
いまから少なくとも250年ほど前の建築で実現させている
非常にパッシブな工夫であります。
中村家では日中にセラミックである屋根瓦に「蓄熱」させ、
夜間には、その屋根頂部に向かって、
開放的な室内をわたった空気が、どんどん上昇気流を起こしていた。
自立循環型住宅の研究では、
ひたすら方位にこだわった「卓越風」の分析が多かったけれど、
どうもそれでは解決はしないのではないかと思わされていました。
風は、その地域で確かに方位に卓越性はあると思うけれど、
その方位にこだわるよりも、
建築実務では、やはり通気の仕掛け、それも「通気」という言葉のイメージが
どちらかといえば、平面図的であるのに対して、
そうではなく、建築物理的に、見えない「温度差」に注目すべきなのではないか、
そんな風に思っております。
さて、どうなんでしょうかね?
写真は、いいのがなかったので、
涼やかな水の中を泳いでいるなまず、じゃなく、「みたいな」ヤツです。