パッシブということを考えていくと、
ドイツというのは、日本で言えば秋田県のような冬を持つ地域。
とにかく冬場の日照はほとんど期待できない気候になっている。
そうすると勢い、ひたすら断熱の強化という方向に向かわざるを得ない。
その過程で実現していく、たとえば窓の高性能化などや
断熱基準の高さなどは、大いに注目していくべきだと思うのですが、
しかし、ドイツの考え方をそのまま取り入れて、
金科玉条とする、とか、「世界最高水準」というように言うのも、疑問を感じる。
というのは、やはり気候条件が世界中でそれぞれ違いがあるからであり、
なにより日本は、大部分の地域で
冬場でも豊富な日射取得があるという特徴がある。
ドイツはそのうえ、国中の気候条件の違いがそれほどなく、
ほぼ同一の気候条件のなかにある。
そういう条件下で、世界最高水準の工学的レベルの工業国が
全力を挙げて断熱に絞って強化する方向性を打ち出している。
ひるがえって、日本では気候区分がいまの基準でも8地域に別れている。
そして、ヨーロッパのように乾燥した夏ではなく、
たっぷりの蒸暑の夏を持っている。
このような気候の違いを考えに入れて「パッシブ」を考えていかなければならない。
そうするとおのずと、太陽とどう対話していくかということが緊喫の課題。
冬場に太陽光をどのように上手に取り入れていくのか、ということと、
一方で、夏場にはどうやって日射遮蔽していくかが重要。
で、北海道であります。
北海道は日本が相手にしてくれない中でも(笑)、
ドイツにも先駆けるようなかたちで断熱基準を、ほぼ独自のように
地域として定めるよう、日本のなかで運動してきた。
現状の断熱基準(規制基準ではないけれど、ほぼ常識的基準になっている)
において、Q値が1.6というレベルを保ってきた。
しかし、そういう断熱の基準は高いけれど、
片方の「遮熱」ということは、あんまり考慮されてこなかった。
夏であっても、遮熱しなければならない期間が少なく、
むしろ民族的な気候経験である「暑さ」を心待ちするような心理を持っていた。
夏の北海道で猛暑が来ると、
みんな半分はうれしそうに「暑いね~(笑)」と会話するのが
常だったのです。
そういう状況が、温暖化の猛暑の夏が続いてきて
やや反省の気持ちが出てきていると感じます。
しかし、写真のようなたっぷりの軒の出、日射遮蔽デザインは
あまり一般的ではない。
必ずしも、日本の場合、パッシブに
全国共通の物差しを当てはめることが現実的とも思えないけれど、
しかし、いろいろな基準化の動きの中で
北海道の家の日射遮蔽への鈍感さが、あげつらわれるようになる可能性も
やや感じる次第であります。どうなんだろうか・・・。