
きのうまで関西圏の各地を行脚していました。
終わり近くにうかがった、古民家改修して事務所利用している事例。
スタッフの方に「面白い事務所ですね」と話したら、
ご親切にぐるっと案内していただけました。
わたしは、古民家巡りが無上のたのしみという男ですので、
「おお、おお」と感嘆を繰り返しておりました。
っていうか、こういう「伝統的な手業」に深い愛着を持っている作り手さんに
強いリスペクトを感じてしまう部分があるのですね。
2枚目の写真は蔵の「錠前」です。
現代では銀行システムが発達して財産は貸金庫を使って保全したり、
住宅でも金属製のカギが一般的になっていますが、
そういう一般装置が普及する以前、大切な財産を保全する方法として
防火構造の蔵を建てて、それに錠を掛けておくというのが、
お金持ちの一般的なスタイルだったわけです。
その蔵の「錠前」は、ほとんど逸品生産的な職人手業で造作された。
使い勝手のディテールに至るまで、まことに人間的な感じがある。
一方、上の写真です。
こちらはその蔵の「引き戸」の下端の「滑車装置」です。
ふつうの滑らせ方とはあまりにも違う感覚だったので、
しげしげとその装置の構造に見入ってしまっていた次第。
この建物近隣は生駒山の麓にあたり、
この生駒山というのは山全体が独特の岩石の構造になっている。
そこで「石切」という神社まである地域なのですね。
その生駒山の石のうち、細かいものをローラーのように加工している。
現代で一般的な滑車がレールの上を滑るというタイプではなく、
たくさんのロール石の上を重い土塗り引き戸が「やわらかく滑っていく」。
実際に動かしてみて、その「応力」というか、反応が
なんともふしぎな心地よさをカラダにつたえてくるのです。
きっと日本列島にも存在したに違いない「石器時代」以来の石の技術が
さまざまな紆余曲折を経てはるかに伝わってきた感(笑)がある。
いわゆる伝統技術には、きっとこういったディテールがたくさんあるのでしょう。
見てみると、この「転石」たち、まことにカタチも不揃いで
それぞれが個性的ですらある。
いつの時代か知らないけれど、これをつくった人たちの様子が
そこはかとなく感じられて、思わずシャッターを押していた。
北海道から来てみるとやっぱりニッポンの伝統って、奥行きが深いです。