三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【香りで彩る テイカカズラと建築空間】

2018年05月20日 11時39分19秒 | Weblog


わたしは東京にいくと時間を見て
ちょこちょこと美術館巡りをするのを楽しみにしております。
とくに恵比寿駅を出て広尾の閑静な住宅街にある山種美術館はお気に入り。
琳派コレクションが特徴の美術館で、年に5−6回の展示会でも
ハズレがきわめて少ない美術館だと思っています。
今回も俵屋宗達から田中一光へ、と題した展示会。
伝・俵屋宗達の「槇楓図」、尾形光琳「白楽天図」、鈴木其一「四季花鳥図」
などの大作と並んで、というか、それらを引っ張るような展示作品として
昭和の時代のデザイナー・田中一光のグラフィックアートを展示していた。
こういう展示構成の一本のスジはこの美術館ならでは。
さらに、以前からすばらしいなと思っていた1階壁面を飾る鶴の飛翔と濤の図、
たぶん1コ30cm角の陶板多数に描かれたそれが、
加山又造さんの作品であることも今回知った。
やはり見れば見るほどに、琳派という日本美術の奔流に強く惹かれる。

という余韻にひたりながら、屋外に出て渋谷・國學院大学方面に
脚を向けようとしたら、なにやら強く引き留めさせられる芳香。
すばらしい絵画を見てややアップビートになった心象に
その香りは強烈なマハラジャ感で迫ってきた(笑)。
香りの源は、すぐに知れました。ごらんの「テイカカズラ」であります。
その馥郁たる香りに、名を問いたくて美術館に引き返して聞いた。
スタッフの方が即座にこの名を聞かせてくれた。
そしてその説明プリントを1枚くれた。
「山種美術館のエントランスにある葛垣の植物はテイカカズラです。
テイカカズラは林内に生育する常緑つる植物で、茎は長く伸びて
不着根を出して樹や岩を這い上ります。
5月頃に白い花を咲かせ、香りを放ちます。
花ははじめ白色で後に淡黄色になります。
和名は、歌人の藤原定家に由来すると言われています。」
と書かれていました。たぶん問う人が多いのでしょうね。
最後の件はWikipediaに「式子内親王を愛した藤原定家が、
死後も彼女を忘れられず、ついに定家葛(テイカカズラ)に生まれ変わって
彼女の墓にからみついたという伝説(能『定家』)に基づく。」という。
そういわれてみると、恋愛感情の強烈な麝香感に通じる香りかも。
そういった由来の事は置くとして、
わたしにはやはり建築としてこういう香り領域も取り込んでいる、
美術館建築の奥行きが深く感じられた次第。
たしかに五感の感受性が刺激されると、こういう香りの領域も
より鋭敏に迫ってくる気がします。
現代の住宅建築ではこういう植栽との暮らしの中での協同、
相互関係というのはなかなか意図されることはないと
気付かされた次第であります。
こういう雅びた王朝風の名付けが文化として遺されてきたということは、
先人の日本人は、こういうところにも気付き、演出すべき対象として
考えてきたことに間違いはないのでしょう。
さて寒冷地、高断熱高気密住宅は、文化としてこういうものを生み出せるのか、
錘を自分の中に深く降ろしてみたいなと思いました。
コメント
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