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写真は鎌倉・円覚寺の各所で見られた外壁や石垣。
北海道は比較的に空気が乾燥気味で大陸的な気候だからか、
あんまりコケやシダ類での特徴的建築外皮はみられない傾向があるけれど、
本州地域を巡っていると、こういった植生を建築意匠に取り込んだ
そういう意図を持った空間が目に付くと思っています。
積雪という条件があるいはコケシダの類にはあまり適さないのでしょうか。
日本の神社仏閣建築で、このコケシダ類の被覆がないという光景は
どうも想像しにくい。それくらい、
日本の建築空間にはこれらによる外皮装飾が欠かせないものだと思います。
上の写真では、こういった苔むした石垣の上に
目に鮮やかなムラのない塗り壁が対置されていて
みごとなコントラストを垣間見せてくれていた。
この面としての対比をデザインに昇華させていることがあきらか。
そういえば国歌である君が代の一節にも、
「苔のむすまで」というコトバが自然に歌い込まれていたりする。
どうもコケというヤツ、日本人の精神性に深く「根付いて」いる。
世界の気候の中でも稀なほどに「蒸暑」の夏があって、
年間を通して安定的な降雨があるという気候条件が大きいのでしょうか。
最初に書いたように、しかし北海道はこういうコケ文化から
比較的に縁遠いというように思える。
気候条件的なことと、日本民族による定住歴史がまだ日が浅い、
という条件が大きいのかも知れないと思っています。
北海道での「コケ文化」としては建築的にはあまり想起しない。
まぁ自然の洞窟で「苔の洞門」という名所が思い浮かぶ程度。
しかしやはり日本人DNAなので、やがてこういう苔を活かした建築が
この北海道でも根付いていくのだろうか、と思ったりもする。
まだまだ北海道は本格的集住から高々150年程度なので、
こういった積層的な時間が作用する建築意匠にまでたどりついていないのかも。
しかし高断熱高気密住宅技術が確立していく過程で
「カビ・ダニ・結露」という微生物的な脅威にさらされた住宅史があるので、
心理的にはそういった拒否的連想が働くようにも思われる。
写真のような日本的マザーの光景を見て
これからの北海道人がどういった受容を行っていくのかと興味を持つ。