三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

吉田五十八 山口逢春自邸訪問_1

2016年02月19日 06時52分31秒 | Weblog
今週は出張の身の上。
大きなテーマとしての製造業としての「住宅の作り手のマーケティング」
キックオフイベントとしての青森での講演のあと、
長距離移動で、岐阜県まで移動する日程であります。
で、移動の合間を縫って、この表題の住宅を見学致しました。
以前に、皇居のメインルームの建具の装飾画に採用された
山口逢春さんのモミジの絵を見て大きな感動を覚え、
その遺された自邸が、逗子からさらに奥の葉山にあると聞いて
一度、時間に余裕のあるときに、訪れてみたいと思ったのです。
そして調べるうちに、その美術館として使われている旧自邸が
昨年末に東京世田谷で見学した建築家、
近代数寄屋住宅の吉田五十八設計であるということも知った次第。
ということで、首都圏ローカルではあるけれど、
御用邸もある、念願の葉山まで訪れることができました。

取材ということにはなるのですが、
こういう住宅との出会いは、むしろ「対話」というような心理に近い。
その建て主の立地環境との関わり方、
その建築者の「そこに住む魅力の発見・最大化」の考え方の
両方と向き合って、浮かんでくる内語と現実のいごこちとが、
相乗作用を持って、その時間にエッジを立てていくような体験であります。
施主・建て主へのリスペクトと建築者へのリスペクトの
両方を持って豊かな時間を過ごすことが出来ました。
山口さんの作品は、いわば日本美術の華である琳派の系譜の中にも
位置づけられるのではないかと感じています。
日本の自然に対する感受性の部分で、
琳派の持つ、あの光沢感が作品にあふれ出ているように見ました。
そうした画家が、鎌倉からさらに奥の
葉山という終の棲家で、ゆったりと自然と対話し続けるに当たって
近代数寄屋住宅の吉田五十八さんに設計を依頼した。
太平洋の水平線も見晴らせるけれど、
視線はあくまで自然な範囲での高さに保たれた高台から、
傾斜を日本庭園で満たしながら、南西に向かっている敷地に建っていました。

庭にはほんの少し、梅の花も咲き始めていて、
空気は冷たいけれど、光には十分なやさしさも感受することが出来ました。
写真はある程度、たくさん撮ってきたのですが、
じっくりと整理整頓を楽しみながら、徐々に発表していきたいと思っています。
こういう生きている時間の活かし方もあると思います。
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そこに住む、魅力の発見・最大化

2016年02月18日 06時11分04秒 | Weblog
さて、「戸建て注文住宅」のマーケティング、
同時に「地域工務店の戦略マーケティング」というテーマに
しばらくの間、こだわって深掘りしていきたいと思っております。
今回の青森でのトライは、こうしたテーマを今後追求していくための
いわばキックオフとも捉えていた次第であります。

こういったことを考えて行くには
戸建て住宅の本質ってなんだろうか、
ということを深く考えていくことに他ならないと思います。
で、まずは、人間が住宅を求める究極の目的の分析。
表題のようなことに絞り込まれていくのではないかと。
考えてみれば、人類史的に考えてみて
わたしたちは、先祖のさまざまな経験知、体験の蓄積、長い経緯の末に
それぞれ、生誕の地を迎える。
親にとっては、それこそ人生をかけて選択した結果が、
つぎの世代にとっては「ふるさと」になる。
ずっとこういう世代経験が積層する固定的な社会であることもあったし
移動が常態化したような社会であったこともあった。
固定化か、流動化かは、その世代が経験する時代環境によって
大きな違いがあると思われる。
しかし、そういった個体差を超えて、「住む」ということの
いわば「人類知」のようなものは存在するだろうと思う。
「住めば都」というコトバがあるけれど、
そこに住み暮らすことに、最大の魅力体験を経験したいと思うことは
多くの人にとって、わかりやすい住宅の楽しみではあるだろう。

地域工務店という言語特定よりも、
やはり「住まいの作り手」という特定の方が似つかわしいだろうと思う。
人間が住む土地をどこに選択するか、という経緯・プロセスは
さまざまではあると思うけれど、いったん決まってしまったら、
「どう楽しめるか」ということが、最大のテーマになる。
その個人の嗜好傾向をも超えて、地が求める自然な切り取り方、
その土地を楽しませることに、作り手は集中力を高める必要がある。
いわば土地の魅力の感受力という部分だろうと。
写真はわが家の新築等時の写真であります。
わたしはこの新築の時に、はじめて地面に足を止めて住むという
そんな意識を強く感じていたと思います。
こういうことを意識してつくる注文住宅の良さは、
かならず、それを見る多くの人にもわかりやすく伝わるに違いない。
そしてそのようにつくられる家が多く集積する街は、
より魅力的になって行くに違いない。
資産価値を高めると言うことは、そこに暮らす人間に共通する
責務に近いものなのだろうと思う所以ですね。

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地域工務店マーケティング探求 in 青森

2016年02月17日 06時12分41秒 | Weblog
きのうは青森市内、ラプラス青い森にて
表題のような講演セミナーをこなしておりました。
今回は東北電力青森支店さんの主催セミナーで、
わたしが、表題のようなテーマについてその講演者の選定からアテンドを含めて
企画から講演者旅程管理引率、講演会での司会、発表、
パネルディスカッションの運営役と、こなさせていただきました。
これまでもいわゆる講演はなんども経験していますし、
つい12日前にも、同じ青森市内で講演させていただいていましたが、
今回は、役回りが多くてさすがに、やや疲労感(笑)。

今回のテーマは地域工務店の立場に立った
経営環境全般に及ぶような内容を企画して
札幌で活躍されている不動産マーケッター・志田真さん、
十勝帯広で2×4工法住宅の普及に30年以上、中核的に関わっている
ウッズ設計・山口さんと、わたしの3人トリオでのセミナー。
こういった内容にふさわしいと以前から考えていた人選で
都合3時間半を超える研修会となった次第です。
講演中で志田さんも触れられていましたが、
住宅建設という需要は、1年間で総世帯に対する発生率は
わずかに1.8%に過ぎません。
こういった領域に対する迫り方は、一般的な販売活動を想定する
いわゆるマーケティングの常識的対応は通用しにくい。
さらに需要に対しての、中小事業者を中心対象としたマーケティング研究は
いろいろな調査研究が十分とは言えない領域。
そういうなかで、地域工務店の実態に日頃から接触頻度が高いのを活かし
なんとかいろいろなケーススタディをもとに
地域エリアの特殊性も解析しながら、テーマに迫って見ているのです。

ただ、各人の発表は今回が一期一会のような内容であり、
自分自身もその発表者の一人でありながら、
それらの発表内容を丹念に聴取しながら、要点も整理して
最後のディスカッションテーマを抽出把握して、
会場のみなさんにわかりやすくテーマを絞り込んで発言も促すというのは、
けっこうな作業量だったわけです。
でも、なんとか初期の想定イメージに近い討論空間を導き出すことが
できたのではないかと、参加者のみなさんの声を
終了後の懇親会で聞かせていただきながら実感できました。
まぁこのテーマは、時々刻々と変化していくし、
ひとが変わればマーケティング手法も変わるので、
エンドレスに深掘りしていくべきテーマ領域だと思います。
終了後講演者3人で酒を酌み交わしながら、濃い(笑)反省会も持てて、
ひとつのキックオフにもなったなと、楽しく思えた次第です。

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きた住まいる会議&青森フライト

2016年02月16日 06時23分57秒 | Weblog
既報の通り、きのうは朝から社内会議を済ませたあと、
午後からは「きた住まいる会議」に出席。
ワーキンググループの具体的な検討を行っておりました。
星雲状態のような状況から、徐々に具体的な方向性が見えてきた。
あ、ご存知ない方にはなんのことやら、ですね(笑)。

北海道という地方自治体は、
開拓使の昔から、この積雪寒冷の地に日本人の大量移民を
実現するために、寒地住宅はどうあるべきか、
長い時間をかけて地域住宅運動を継続させてきた稀有な地域です。
民族がそのフロンティアに立ち向かって行くという経験は
歴史的にも北海道がいちばん極限的な体験だったといえるでしょう。
その北海道の住宅施策の最新の形が、この「きた住まいる」。
これまで「北方型住宅」という地域ブランドも創出してきたのですが、
そういった流れをさらに発展させて、よりユーザー本位に
社会制度資産的な「家づくりプラットホーム」を創り出そうというもの。
住宅政策をほとんど持ってこなかった日本政府が
2代目福田内閣以来、長期優良住宅という政策をはじめ
2020年には省エネ基準の「義務化」をかかげてきているなかで、
こういった地域の住宅運動的な動きは、どのように展開すべきか
知恵を絞らされている次第。
年度末になって来て、座長代理の鈴木大さんを中心に
濃密な頻度で会合を重ねてきています。
ちょっと、人使いが荒いかも(笑)・・・。
ということで成案を得るべくもう少し,回を重ねる必要があるようですが、
新しい仕組みの輪廓は像を為してきているところ。

で、会議をやや早めに切り上げさせてもらって、
わたしは青森への移動、同行者のアセンブル引率に。
心配していた荒天ですが、なんとか無事にクリア。
とは言っても、機体から足が出るときには、
かなりの衝撃音も発していて、そのすぐ上の座席だったので、
一瞬は、動揺もさせられていました(笑)。
さて、本日は3人一座での講演会であります。
地域工務店マーケティングの深掘り、がんばりたいと思います。



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ドキドキ冬の千歳ー青森航空便

2016年02月15日 05時32分17秒 | Weblog
さて今週は、出張で開けます。
16日火曜日には青森で、わたしがアテンドする工務店向け講演会。
青森県内の工務店さんに向けたもので、なんと講師が
わたしを含めて3人というものであります。
地域工務店の生き残り、マーケティングについて
いろいろな視点から考えるきっかけを提供しようというものですが、
なんといっても、3人のスケジュール調整からチケットの手配
講演資料の手配・準備等など、ふだんはやらないような段取り仕事を
たくさんこなさなければならない。
打合せ、人選、テーマ検討、提案、打合せ、打診、などなどのプロセスを経て
<って書くと、たくさんの山谷がありますね~(笑)~>
その仕上げが、本日夕刻からの出張移動であります。
その上わたしは、出発時間までにも道庁の会議などに出席せねばならず、
これはこれでやること、考えることは山積なので
そっちのこともあって、なかなか集中も出来ない。
3月に入っての韓国視察ツアーの頼まれアテンド役もあるのですが、
どうも気遣い仕事は、骨折れ感ハンパない。

とはいえ、人間に関わることは所詮は話せば通ずるけれど、
いちばん困るのが、この時期の天候と飛行機の運航状況。
冬と雪の神さまには、どうしたってかなわない。
とくに青森空港には、いろいろな想い出が(笑)あって、
これが、一筋縄ではいかないのであります。
青森空港って天候条件的に全国でもいちばん不安定な空港では?
冬の青森空港は鬼門でして、なるべくならば利用は避けたいのですが
講師の方には、時間が札幌からでは7時間かかるJR移動はお願いしにくい。
今回はおひとり、なんと帯広からお願いもしているのです。
帯広からだと、+2時間はかかるのです(泣)。
これが往復なので、まことに申し訳がなさ過ぎ。
まるで海外かよ? ってところですが、しっかり津軽海峡はある。
飛行機にしても当日移動だと、天候への対応ができない可能性もあるので、
やむなく、前日夜の便での移動をスケジュールした次第。
こういった移動では、今後はやはり新幹線開通がありがたいかも。
ただ、北海道新幹線は千歳はルートになっていない。
北海道の場合は、本州地域との交通の大動脈は千歳空港。
これとのアクセスがない新幹線って、どうなるのか。
まぁ、飛行機はライバルとして路線重複も避けたのでしょうが・・・。
さらに北海道の猛吹雪に、新幹線運行は大丈夫なのかと不安。
で、その天候条件、どうやらきのう千歳は大荒れの運行状況。
こういうイベント・移動スケジュール管理の担当者という役柄は
気苦労が絶えない仕事なので、できれば遠慮したいのではありますが、
行きがかり上、やむを得ない仕儀なのであります。
アテンド役と講演者役は、両方こなすのは厳しいものがある。
3日間ほどは、天候状況ともにらめっこで、
あれこれと気を揉まなければなりません、う~~む。


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ラッキーピエロでインスタントラーメン?

2016年02月14日 08時17分35秒 | Weblog
先日の函館出張では、昼食にラッキーピエロを。
で、お決まりのチャイニーズバーガーセットを食べて満腹していましたが、
その出来上がってくる前に
港近くのお店の店内を見回していると、ごらんの包装のものが
店内の一隅にうずたかく積み上げられているではありませんか。
当然、なにごとかと気になるのは人情であります。
さっそく探検してみると、インスタントラーメンであります。
赤い色の包装がしょうゆ味で、黄色い方はしお味という次第。

ラッキーピエロは地ハンバーガーショップとして
函館らしさへのこだわりという、北海道内企業としては、
きわめて先進的なスタンスで商売している。
そのメニューの融通無碍さは、まことにリスペクトさせていただいていて
ラーメンまでメニューにあるということは聞き及んでいる。
しかしそれをまた一歩進めて、インスタントラーメンとは、
さすがに、そうか、その手かと驚かされる。
裏面を確認したところ、製造は旭川の知る人ぞ知るラーメンメーカー
藤原製麺と言うことでした。
ラッキーピエロは、これからの「地元」企業としての先導的な
マーケティング活動を行っており、
そういう展開の中で、押し寄せるアジア圏の観光客をにらんで
こういった戦略を選択したものとお見受け致しました。
このラーメン、食べてみると「寒干」の技術で製造した麺を使っている。
世界的には、一般的なインスタントラーメンが主流でしょうが、
生麺の食感を重視した寒干を採用するあたり、
インターネット時代のローカリズムへの先駆けという
なかなか先を見越していると思われる。
そして山盛りのディスプレーションは、
中国の爆買い志向のみなさんへのサブリミナル戦略としてのアピールと
受け取らせていただけました。
ということで、1食170円也という商品ですが、
こういうのは食べないカミさん以外の、坊主とわたしの分として、
各1食、ラッキーピエロの戦略にまんまと乗せられて
お買い上げとなった次第であります。
・・・まぁ、なかなか美味しかったということで。


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ミニマリズムと現代的快適性

2016年02月13日 10時31分53秒 | Weblog
現代の住宅デザインでは、ミニマリズムの傾向が強まっている。
ミニマリズムってなんだろうと調べてみると
完成度を追求するために装飾的趣向を凝らすのではなく,
それらを必要最小限まで省略する表現スタイル。
1960年代に音楽・美術の分野で生まれ,ファッションにも導入された。
というように記述表現されている。

現代住宅では、さまざまな「快適性」が実現されてきた。
電気が通って、まずは照明が家庭生活にもたらされた。
そして、水道が通って下水道も完備することが普遍化した。
その結果、数多くの生活利便性が一挙に家庭生活に導入された。
大きく透明な内外遮断装置であるガラス入りの窓は、
それが社会に導入されたときの興奮と価値感をいつしか忘却して
短時間に、もう後戻りは出来ない快適性として
「現代社会常識」を形成してきている。
多くの家電品などが、欲望喚起手法に乗って家庭に入り込んでもきた。
それらは、途中からは「人々が本当に欲しいのかどうか」よりも
欲望喚起の流れの方が「普通」とされて、
やがて一種の現代的豊かさのかたちそのものとして受け入れられていった。
そうなってくると、人間の「価値感」というものも
きわめておぼろげなものであることがわかってきて、
その結果、家庭の中はそういった「便利さ」が
人間を包囲するかのような状況に立ち至っていた。

そういった総体としての社会の流れに対して、
もう一回、「ほんとうに人間にとって必要不可欠であるもの」に目覚めようとする
そうした意味で、シンプルライフであるとか、ミニマリズムは正しい。
で、そういった人間性回復の流れは、
その精神性の部分で、どうも利休さんの茶道や茶室に通底すると感じられる。
極小のスペースに向かって、限界的に空間性を絞った流れは
日本にしか、その文化性は存在しなかったのかも知れない。
ただ、今起こりつつあるミニマリズムは、やはり宇宙ステーション的な
茶室空間であることは疑いがない。
人間は一度手にした「快適性」は本質としては絶対に手放しはしない。
利休さんや茶室の作り手たちが茶室で目指したものは、
コトバとしての「草庵」そのものではなく、
一見そのように見える中に、あらゆる快適要素を磨き上げたのだろうと思う。

五十嵐淳さんの還元手法的マンションリフォームで
剥き出しにされた換気ダクトが白く彩色されて
モノトーンに還元されても、機能性としては有用に利用されている様子を見て
こんな雑感に浸っておりました。








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建築家・五十嵐淳 MSリノベの茶室的自由感

2016年02月12日 05時39分10秒 | Weblog


きのう、札幌市内は雪まつりの特異日。
市内中心部は、どこに行っても駐車場が満杯状態。
そんななか、市内でもほぼ真ん中で、大通会場にも200-300mと
ほど近い都心型マンションをリフォームした現場を見学。

交通立地のいいマンションって、
中古であろうが、その立地性で今後ニーズが高まるように思っています。
このマンションも名古屋在住の現代アート作家の方が
札幌での工房兼用的「別荘」として利用するという用途でのもの。
大都市札幌の現代的利便性をフルに享受して
用途としては、生活というよりも少し非日常的なステージに、という希望要件。
どうも、こういった希望要件での需要には
古い札幌都心型マンションというものは似合っていそうな気がする。
マンションって、日本で提供されているものは多少古くても
耐震強度など、スケルトンとしての耐久性は高いものがあると思います。
さてそういった希望に対して、建築家・五十嵐淳さんは、
こんな改造を提案して応えたという次第です。
まずはスケルトンに還元して、できるだけシンプルな空間獲得を目指した。
水回りのための「水勾配」確保の必要があるので、
新設した床面はやや高めにつくられ、電気配線など必要な装備を収容できた。
天井はどうしても撤去できない「銅管」や換気ダクト以外はすべて撤去して
コンクリート素地に還元してから、白く塗装。
キッチンは造作の建具でまるで壁面収納のように仕舞い込まれ、
寝室空間もカーテンで仕切られた細長い空間に納められて、
きわめてシンプルな広めの空間が確保できた。
床は、表情の豊かな木質フロアが一面に敷き込まれて、
天井の質感とあいまって、モノトーンな静寂が意図されている。
それをさらにテーマ性豊かに感じさせてくれるのが、
窓面側に造作された「間仕切り壁」。
これは、いかにも一般的なマンションの掃き出し窓の無機質感への緩衝装置。
タテ横の寸法感覚がほどよく、室内に導入する光や風景が制御されている。
間接照明が窓面側に仕込まれているので、
そういった意図がさらにコントラストが際だたせられている。
わたし個人的には、この間仕切り壁、茶室の床の間的なものと思われました。
できるだけシンプルに造作された室内空間に対して、
この仕切壁は、光や眺望を制御する装置として、
いろいろな表情を暮らすひとに見せる演出装置のように思われた次第。
窓面には、遮光カーテンやレースというように多重での
採光・眺望コントロール装置が備えられています。
考えてみると、現代のマンション改造って、
利休さんの時代からの茶室建築と似通った創作的気分が感じられる。
現代の町家としての集合住宅・マンションを還元したら、
どうも、茶室建築にやがて通じていく設計モチーフになっていくのではないか。
そんな自由さを感じさせられた。



でもこの間仕切り壁、
北海道の建築家である五十嵐淳さんの意図開示では、
右手寝室側に設置されたFF暖房器からの温風送風を、
室内側と窓面側の両方に意図的に送る「仕掛け」として機能させているとのこと。
掃き出し窓として床面まで下りてくるコールドドラフトに対して
その端部まで十分な役割を果たしてくれるか、といったところですが、
バッファーというものが、機能的にもデザイン的にも二重奏になっている。
発想の部分にこういう温熱的意図を持って、しかも
有用なデザイン機能も果たしているということで、好感が持てました。
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旧正月、数え年齢、北東アジア世界

2016年02月11日 07時14分05秒 | Weblog
韓国人スタッフが新たに加わって、
いろいろと習慣の違いを教えられることが多くなっています。
日本という国は、北東アジアからの離脱を「脱亜入欧」という形で
この140年以上継続してきたといえる社会だということを
あらためて知らされるような思いがしてきます。
すっかり風物詩と化したかのような中国からの「爆」ツアーも
かの東アジア世界での「旧正月」がこの8日に始まったことで
それと前後して、大きな動きになっているようです。
とくに札幌は、毎年同時期に雪まつりが行われる関係で
年間で300万人近くが北海道に来てくれるきっかけになっているようです。
暦も、日本はいち早くアジア世界の常識を脱して、
太陽暦に変えたことで、新正月しか祝わない国になった。
実際に採用している暦と、旧暦が同居していて、
いろいろ不便ではなのかと思いますが、
こういった部分も、日本が経験したように変わっていくのかどうか。
で、風習としてこの旧正月を境にして、
「年を取る」ことになるのだそうで、
わが社のスタッフは、2月8日以降、本当は28歳なのが30歳になるそうです。
数えでは、生まれたとたんに1歳なので、
そういうことになるのだとか。
そうすると、2月7日に生まれた子どもは、ことしの2月8日には
もうすでに2歳という年齢になることになる。
生まれて2日で2歳だ、って、まぁいろいろ不都合が考えられる(笑)。

一方で、食べ物で言うと
お雑煮は、韓国では日本とほぼ同様なんだとか。
ただしお餅は、長くつくっておいたヤツを、
切って汁の中に入れて食べるのだそうです。
日本の場合の「のし餅」のような習慣とのこと。
やっぱり、顔かたち同様、韓国・朝鮮と日本は同じ国にならなかったことの方が
むしろちょっとした行き違いというようなことだったのかも知れません。
あ、写真はふぐ刺しでありますが、
韓国でもふぐはポピュラーな食材なんだそうであります(笑)。
今度の3月の視察ツアーが楽しみであります(笑)。
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森林管理・木造進化・国土保全

2016年02月10日 07時33分29秒 | Weblog


きのうの投稿には、多くのみなさんからの反響がいただけました。
出雲の博物館学芸員の方からも森林資源史についてのご教示もいただけました。
インターネット時代というのは、まことに素晴らしい。
SNSの広がりはたいへん大きな知の進化を生むのだと実感。

そういったなかで、やはり日本の森林の状況について
大きな危惧を多くのみなさんが持っていることが伝わってきます。
わたしたち、住宅建築に関連する人間にとって
その原材料としての日本国土の森林には思いを致さざるを得ません。
資本主義が全地球規模でその効率主義を開花させていく時代、
森林資源についても、世界的な競争原理に基づいて
原材料が、コストパフォーマンス原理で選別されることになるのは
市場圧力としては、ある意味、当然ではあります。
しかし、それによって日本の森林はコストに見合わないという理由から
森林管理もままならず、放置されることでやがて荒廃の危機に至ることも
近年の集中豪雨被害などから明らかだと思います。
適切な下草処理、間伐作業などの地道な営為がコスト面で
競争に耐えられないから,放置されると言うことは、
結果として、わたしたちの生命財産を大きく毀損させることになる。
ここは大きな「知恵」を出す必要があるのだと思います。
単純に、補助金を多く出して補助金付けの産業を生み出すという
安易な「解決法」ではない、持続可能な解決が求められている。
とはいっても、残念ながらいい考えはいまのところ、浮かんでは来ない。
そういうなかで、先日も紹介した丸谷博男さんから知らされた
オーストリア・ファールベルク州の村の例は参考になるかも。
それは、日本と同様の急斜面で
機械投入による森林管理に適していない杜を抱えている地域。
そこでは、地域でつくる公共建築を自分たちのヤマの木材資源を使うと
基本政策を決めたと言うことなのです。
この結果、人口減少地域であったものが、産業の勃興を招き
人口増加、新ビジネスの発達といった効果を生んだそうで、
いまや、20階建てのビルすら木造で建てられるという技術革新を生んだ。

先日のカナダアルバータ州でも、多層階木造技術は
いろいろに進化していたけれど、世界有数の木造技術大国日本でも
行政のなかの人々と、建築の側の人間が相呼応していけば、
こうした道は開けていくように思えます。
その萌芽や、実験的な動きはすでにあるのですから、
わたしたちは、そうした動きをサポートし、
みんなの知恵を集めていければと強く念願しています。



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