ビアンカ・ピッツォルノ『ミシンの見る夢』
丁寧で品が良く、センスも抜群で美しく、また可愛らしい。
イラストが素敵なだけでなく、文字の選び、配置も素晴らしいカバーだ。
カバーを外して現れる表紙は、まるで少し古いイタリア語の本のよう。
疫病で両親を亡くした少女は祖母に育てられ、針仕事を教わる。やがてそれは彼女の生計を立てる手段となる。
祖母がいなくなった後も、祖母の教え、言葉は、少女が生きていく中での指針を示してくれる。
彼女は責任感が強く、丁寧な仕事で周りの信頼を得ていく。
舞台は19世紀末のイタリア。
厳しい階級があり、底辺にいる少女は日々を生き抜くだけで精一杯だ。
お針子の仕事だけでは、一人で家賃を払い食事をしていくことが無理だと見られている社会。理不尽な理由で巻き込まれるトラブル。
彼女の一挙一動が見逃せない。
ところどころに挟み込まれる裁縫の描写は、針仕事を知らないぼくでさえ魅了する。
装画はNaffy、装丁は名久井直子氏。(2021)
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