李龍徳『死にたくなったら電話して』
真っ黒な表紙に浮かび上がる女性の横顔。
眼差しの強さが印象的だが、タイトル「死にたくなったら電話して」のインパクトがそれを上回る。
隙間なく並べられたピンクの文字が、いかがわしさを演出する。
ところどころ文字は赤の濃度を変え、単調にならず、小さな違和感を生んで、さらに忘れがたくさせる。
鬱陶しさを感じさせるのは、おそらく帯の文字だろう。
表紙のほぼ半分を埋める黒い帯に、タイトルと同じように字間を詰めた「文学のスキャンダル」。
隣に並ぶ著名人の推薦文がおとなしく見え、落ち着いて読むことができる。
背のタイトルは、帯に隠れて一部分が見えない。
面出しに特化した帯に、版元の意気込みが感じられる。
カバーを見ているだけで満腹になる。
読むと食べ過ぎた気分になる。
後半になるにつれ悪意が加速し、ぐったりしてくる。
それでも不思議ともたれないのは、悪意に含まれる悲しみが毒を中和させるからだろうか。
装画は赤、装丁は鈴木誠一デザイン室。(2021)
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