ジェスミン・ウォード『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』
墨絵を思わせる1本の黒い木がカバーに描かれている。
複雑に伸びた枝に葉は見当たらず、英語のタイトルがまるで枝の一部のように入っている。
寒々しい。
日本語のタイトルが金色に光り、一見華やかだが、ここに漂うよそよそしさと禍々しさが、死のイメージを呼ぶ。
読み進めると、カバーの木の意味を知るし、この本の表紙としてふさわしいと思うのだが、手に取ったときに歓迎されている感じがしなかった。
物語は、ヤギの場面から始まる。無駄のない荒々しい描写に、年配の男が書いたのだろうかと思ってしまった。
祖父母に育てられている13歳の少年と幼い妹。
両親は親として無能で、人間として無様だ。
少年は幼くして自立しなくてはいけない。彼にぴたりとくっついて離れない妹を守るためにも。
真っ赤に熱せられた鉄のような小説だ。
読むだけで火傷を負わされてしまう。心に切り込み、傷ができる。少年の痛みを、ぼくも抱えてしまう。
装丁は水崎真奈美氏。(2021)
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