ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

棕櫚の葉を風によそがせよ

2018-10-19 20:04:24 | 読書
野呂邦暢『棕櫚の葉を風によそがせよ』





 好きな作家だけれど、まさか小説集成として新しく本が出るとは思っていなかった。

 40年以上も前に書かれた文章とは、とても思えない。
 作中に出てくる戦争の影さえ、ついこの間のことのように感じられてしまう。
 そんな瑞々しい世界に浸った。

 一遍読み終わると、次の作品の扉が目に入る。
 薄くアミのかかったページが、余韻をすーっと吸収していく。

 表紙は、野呂邦暢のファンでないと手に取らないだろうと思うくらい主張していなくて、そっとしておいてと囁かれているようだ。

 でも見つけてしまったので、次の2巻も読みますよ。

 装丁(書容設計)は羽良田平吉氏。(2013)


帯、カバー、表紙、見返し

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インド夜想曲

2018-10-17 19:27:39 | 読書
アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』





 最初に読んだアントニオ・タブッキは『インド夜想曲』。

 なんとも刺激的な本だった。

 まるで夢物語のような、イタリア人のインド旅行記、のような小説。

 インドにいれば、目の前で起きていることが、夢か現実かわからなくなる感覚。


 ぼくが持っているのは、白水社のハードカバー。

 華美でなく、地味でない表紙。折り返しに見える模様が奥行きを感じさせ、一筋縄ではいかないインドを表現しているようにも見えてくる。

 装丁は田淵裕一氏。 (2012年)





1992年発行のこの本は、バーコードがなくすっきりしている。

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インパラの朝

2018-10-15 19:51:12 | 読書
中村安希『インパラの朝』





 本棚の中で4年眠っていた本は、開くと、紙の四囲がうっすら黄色に変色していた。

 もともと経年変化が顕著な紙だろうから、版元はこうなることを想定していただろう。

 やや古くさくなったように見える本文用紙は、著者の2年間に及ぶ旅の疲れや汚れを象徴しているようにも見える。

 しかし、カバーは変色することなく、写真の真ん中に配置されたまっ白な明朝のタイトル、まっ白な角背の中央にスミ文字と、極めて凛々しい。
 著者の真っすぐな姿勢と重なってくる。


 装丁は鈴木成一デザイン室。(2014)


帯の著者の写真が大きい。





カバー袖の著者プロフィール。
ここまで写真を大きくしなくても。
写真は小林紀晴氏。

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旅路

2018-10-13 22:34:18 | 読書
藤原てい『旅路』





 表紙には、茶褐色に変色した轍の写真。
 緩く曲がりながら伸びていく道の先に、小さく写る女性の姿。

 そこから浮かぶイメージは、むかしの話、苦労を重ねた半生、振り返る余裕の生まれた幸せな現在。
 その程度のことしか想像できない。

 ところが、230ページほどの薄い文庫本には、壮絶な体験が綴られていた。
 敗戦後、満州から引き揚げる際の、混乱した状況。

 命からがらとは、このことを言うのだろう。

 月並みな感想だが、いまこの瞬間生きていることに感謝しつつ、できることは精一杯やろうと思う。

 カバーデザインは山影麻奈氏。(2018)
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奇妙という名の五人兄妹

2018-10-12 19:10:03 | 読書
アンドリュー・カウフマン『奇妙という名の五人兄妹』





 書店でターコイズブルーの表紙を見たとき、『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』の著者の最新作だとわかった。

 ところが、2冊を並べてみると、似ているようで似ていない。

 タイトルの書体が違うし、加工のしかたも異なる。
 前作『銀行強盗~』よりはるかに、タイトル文字を壊し、遊んでいる。
 同じなのは、使用している紙くらいなもの。
 それなのに、こうも印象が近くなるとは。
 もしも何も印刷しないで、同じ紙で刷り色だけを変えていったら、同一シリーズの本と認識されるのだろうか。
 
 「奇妙な」という名前は、書類のちょっとした間違いからで、元からいわくつきな一族だったわけではない。
 そのちょっとした感は、兄妹たちが持つ不思議な力、祖母の魔女的な雰囲気、死んだ父の影を追いかけることなどにまとわりついてきて、歯切れの悪さがある。

 次回作に期待したいところ。
 表紙の色にも期待。

 装丁は森田恭行氏。(2016)


カバーを外した状態





カバーのタイトル文字の変化





2冊を並べてみる



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