ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件

2018-10-11 19:11:49 | 読書
アンドリュー・カウフマン『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』






 『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』は、タイトル通りのストーリー。
 どうして縮むのか。これは何かの比喩なのか。
 
 縮み続けた先に何があるのか、夫は想像できない。
 日常生活の小さな悩みを抱えたまま、極めて普通に過ごそうとしている。

 一方、縮み始めた妻は、この先どうなるのか見極めているが、そのことを夫に話さない。

 このズレ。

 いつの間にか、あ、こんなところに傷がある、いつ切ったのだろう、みたいな感覚。
 小さい傷でも、大きな災厄を招くかもしれない。


 表紙は黄色。
 タイトル文字は黒で、危険を告げる組み合わせ。

 注意して読まないと、危険を察知できない。

 装丁は森田恭行氏。(2013)


見返しも黄色





本文にはイラストが散りばめられている

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見えない日本の紳士たち

2018-10-09 18:57:35 | 読書
グレアム・グリーン『見えない日本の紳士たち』




 グレアム・グリーンの小説は、とくに好きなわけではないが、ハヤカワepi文庫の「グレアム・グリーン・セレクション」は、つい買ってしまう。

 表紙が素敵だ。
 上半分は薄い茶色、下は濃い緑色の背景で、文字とイラストは黒。
 落ち着き過ぎて地味になりそうな色合いなのに、タイトルに合わせて配置されたイラストが、軽やかな空気を作り出している。
 グレアム・グリーンの文章にしっくり馴染み、ユーモアを含んだ視線を感じさせる。

 シリーズの最新刊『見えない日本の紳士たち』は、久しぶりに読んだためか、より面白く感じられた。

 もしかしたら、待ちわびていたのか。
 いや、それほど好きな作家じゃないんだけど。

 装丁はアキタ・デザイン・カン、イラストは谷山彩子氏。(2013)








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都市と都市

2018-10-08 22:22:19 | 読書
チャイナ・ミエヴィル『都市と都市』

「カズオ・イシグロ絶賛!」

 帯の一番下に小さく印刷された文字。
 メインは「このミステリーがすごい! 第7位」と、微妙なコピー。

 警察小説らしいのだが、表紙のイラスト(写真?)は一瞬、未来都市を題材にしたSFを思わせる。

 はじまりは普通のミステリーのよう。でも、なんだか違う。

 存在するのに、しないものとして「見ない」とは、どういうことだ?

 理解できない。
 なかなか馴染めない。
 まどろっこしい。

 それが、この小説の独特な世界を作り上げている。

 どちらの国にも属さない歩き方って、どんなふうだ?


 表紙の街並を見る。
 青い街を見るとき、赤い街は見てはいけない。
 赤い街のときは、その逆。
 そういうことか。

 装丁は岩郷重力+N.S。

 カズオ・イシグロは、どう絶賛したのだろう。(2013)
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ナイーヴ・スーパー

2018-10-07 22:31:07 | 読書
アーレン・ロー『ナイーヴ・スーパー』





 もっと若いときに読んでいれば、もう少し気持ちが揺れたのかもしれない。

 そう感じる本がある。

 アーレン・ローの『ナイーヴ・スーパー』はそんな小説なのか?
 
 時間の積み重ねに、ついていけなくなる。
 人生の意味がわからなくなる。
 そして、アーレン・ローは、立ち止まってしまう。

 といって、引きこもるわけではなく、屈折しているようでもない。
 素直に、日々起こる出来事に対応していく。

 表紙に描かれた6個の円には、人物らしき像が映っているが、偏光レンズを通しているかのようにはっきりしない。

 同じものでも、レンズを変えるように、立ち位置をちょっとずらすだけで、見え方が違ってくる。
 
 そうやって、希望はたぐりよせるのだ。


 装丁はミルキィ・イソベ氏。(2013)






タイトルの文字は、紙に吸い込まれていくかのように薄い


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日本語の作法

2018-10-06 23:08:35 | 読書
外山滋比古『日本語の作法』





 「先生、その話まえにも聞きました」
 無邪気にそんなことが言えるのは、子どものときだけだろう。

 大人になり、カルチャースクールで詩吟を習っているとする。
 齢八十の先生は優しいおじいちゃんで、話も面白い。
 でも、何度も同じ話題が出てきて、そのことを先生自身は気づいていない様子。
 受講生たちはみな大人なので、初めて聞くようなふりをしてあげる。

 『日本語の作法』を読んでいると、そんな気分になる。

 装丁と本文組の柔らかさは、なんとも心地いい。
 中見出しの文字も、ひとつひとつ加工してある。
 既存のフォントをいじっているようだけど、ときおり手書きのようにも見える。

 しかし、いまはデザインの変わってしまった文庫本しかないようで、ちょっと残念。

 デザインはchutte。(2014)



ひとつひとつの中見出しを、このように組んでいくのは、きっと大変な作業





万年筆のインクのような、微妙なグラデーション

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