ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

ミナの物語

2018-10-05 19:15:08 | 読書
デイヴィッド・アーモンド『ミナの物語』




 デイヴィッド・アーモンドの日本語訳は、東京創元社と河出書房新社から出版されている。
 どちらも四六版ながら、並製と上製なので、別の作家の本のようだ。

 それぞれの出版社が、デイヴィッド・アーモンドの世界を、異なる方法で形にしている。
 どちらも、伝えにくい小説の雰囲気をうまく表していて、表紙をちらりと見るだけで、デイヴィッド・アーモンドの本だとわかる気がする。

 『ミナの物語』は東京創元社の本で、タイトル周りは既刊の本と統一されているのだが、全体の様子が少し違う。

 読み始めると、服装どころか、性格まで変わってしまった人のようにとっつきにくさがある。
 けれども、読み終えてみると、底流に流れる悲しみが、デイヴィッド・アーモンドだったと気づく。

 挿画はたなかみか氏、装丁は柳川貴代氏。(2013)



東京創元社の本たち





河出書房新社の本たち

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本SF短篇50

2018-10-04 22:20:53 | 読書
『日本SF短篇50』




 カバーを見た瞬間「おっ!」と手が伸び、じっくり見て「これは手元に置きたい」と思い、買う。

 解説を読むと、シリーズで5冊出ると知り、「それらも買おう」と思う。

 各巻10人の作家の短篇を、年代ごとに並べ、合計50人の50年分。
 日本SF作家クラブ創立50周年の記念アンソロジーなので、収録されているのは会員のみ。

 なんと編集が大変そうな本だろう。

 カバーは、文字の量がとても多い。
 書体を変え、大きさを工夫し、配置を調整して文庫サイズに収めてある。

 そして、5冊は同じフォーマットで色違い。この微妙な色の選択も渋い。
 
 カバーデザインはコードデザインスタジオ。(2013)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ノアの羅針盤

2018-10-03 22:43:30 | 読書
アン・タイラー『ノアの羅針盤』




 アン・タイラーの小説は、深い椅子に座り、くつろぎながら読みたい。
 読みながら眠ってしまってもいい。
 本が床に落ちても気づかず、そのままぐっすり眠ってしまいたい。

 退屈で眠くなるわけではない。
 でも、誰かに勧めるのはためらう。

『ノアの羅針盤』も、何が面白いの? と聞かれたら困る。
 ハラハラするとか、わーっと泣くとか、心が洗われるとか、そんなことではなくて、快適なソファに座っている心地の良さがあるだけ。

 テレビはつけない、ネットもしない、ゲームもなく、ただ座っている、そんな感じ。


 本の表紙は、女性に向けて作られているようで、男の自分には分からない、何か心惹かれる部分があるのかもしれない。

 手書きの「ANNE TYLER」という文字の、落ち着きつつ華やかな様子も含んだ、ちょっと可憐な姿は、想像するアン・タイラーという人物と似ていなくもない。

 挿画は前田ひさえ氏、装丁は名久井直子氏。(2013) 







 カバーをとり、表紙に直接帯を巻いてみる。
 同じ紙の一体感。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

接触

2018-10-01 22:23:49 | 読書
クレア・ノース『接触』




 『ハリー・オーガスト、15回目の人生』と同じ角川文庫から出ているのに、カバーのイラストレーターが違っている。
 どうしてだろう。
 ずっと疑問に思っていたが、調べてみると、いつの間にか『ハリー・オーガスト』のイラストとデザインの方が、『接触』に合わせて変わっていた。
 なぜだろう。
 kindle版の表紙と区別するため? ものすごく気になる。

 『接触』のイラストが違っているのは、小説の雰囲気を表すためだろうと想像していた。

 一瞬の接触で、相手の身体に乗り移ることができるゴースト。
 どんな人物にもなれるが、自身の肉体を持たない。
 つまり、帰るところがない。
 望めば、若い身体に移ることで、永遠に生きられる。
 苦手なことから、永遠に逃げ続けられる。

 ゴーストのこの生態を羨ましく思ったりはしない。
 むしろ、行き場のない閉塞感に包まれる。

 この感じ、『ハリー・オーガスト』の感触に似ている。
 
 ゴーストは、男にも女にもなれる。
 性を飛び越え、どちらも愛せる。
 それゆえ、カバーのイラストに漂う、ボーイズラブの匂いに納得したのだった。

 イラストはRe゜。
 デザインは西村弘美氏。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする