【既得権との戦い】安芸高田・石丸市長をどうしても陥れたい老害達がこちらです
誘導する長期金利は0%、めどは0.5%、上限は1%―。一見、何のことか分からないこの数字。日銀が7月末に打ち出した金融政策の修正方針だ。かねてその難解さ故に「日銀文学」とも呼ばれてきた金融政策だが、近年はさらに磨きがかかり、金融市場のプロでさえも解釈に迷うことも珍しくない。一般人はもはや蚊帳の外状態だが、それでいいのか。最近の「日銀文学」を考えた。(岸本拓也)
◆あいまいな説明に質問相次ぐ
「これは金融緩和の縮小ではないのか」「正常化(利上げ)とは違うのか」
今年4月に就任した日銀の植田和男総裁が初めて政策の修正に踏み切った7月28日の記者会見。記者からは、その真意を問う質問が相次いだ。
しかし、植田総裁は「政策の正常化へ歩み出すという動きではなく、金融緩和全体の枠組みの持続性を高めるためだ」と繰り返し、あくまで、前総裁の黒田東彦氏が敷いた超金融緩和路線の継続だと強弁した。
それでもメディアやエコノミストたちの多くは、今回の日銀の動きを「実質的な利上げ」「正常化への一歩」と受け止めた。日銀の政策を分析する「日銀ウオッチャー」で、ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志氏は「今回のあいまいな対応はまさに日銀文学だ」と言う。なぜか。
◆現行の日銀の政策をざっくり言うと
現在の日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という難解な名前の金融政策を中心に据えている。ざっくり言うと、長期金利(償還期間10年の国債の利回り)を「0%程度」に誘導するものだ。金利を下げて景気を刺激し、日本経済にとって「理想的」とされる物価上昇率2%の実現を目指している。
長期金利を誘導するために日銀は日常的に債券市場で国債を購入している。国債の価格と金利はシーソーの関係にあり、国債が買われて値上がりすると、金利は下がるため、日銀は大量の国債買いで長期金利を低く抑え込んでいるのだ。
この枠組みは、黒田氏時代の2016年9月に導入し、微修正しながら今も続いている。しかし、東短リサーチの加藤出社長は「超低金利で国債発行ができるため、国の財政規律を緩めるなど、ゆがみを生みかねない政策だ」と指摘する。
◆金利上昇は容認する。でも「利上げではない」という主張
最近では、超低金利政策が激しい円安を招いているとの批判もある。インフレを抑制するために欧米の中央銀行がこぞって利上げを進め、低金利の円を売って、高金利のドルなどを買う動きが強まっているためだ。円安は輸入物価の値上げに直結するだけに日銀に厳しい目が注がれている。
今回の修正は、そんな状況下で打ち出され、冒頭で紹介したように日銀は三つの数字を混在させた。これまで長期金利を「0%」に誘導すると言いつつ、「0.5%程度」を上限に金利上昇は容認していたが、今回この0.5%は「めど」と言い換え、上限を「1.0%」に引き上げたのだ。
素直に受け止めれば0.5%の利上げで、円安を抑制したい意図があったと考えるのが自然だ。だが、日銀文学では、長期金利を0%に誘導する金融緩和の基本方針自体は維持しているので、「利上げではない」という主張になるという。
◆「現状維持と言わざるを得ないジレンマ」
何とも理解しがたいが、経済評論家の近藤駿介氏はこう読み解く。「植田総裁も本音では今の日銀の枠組みを変えたいと思っているはず。しかし、アベノミクスを信奉する政治家を中心に黒田路線の変更を感情的に許さない人たちがいて、現状維持と言わざるを得ないジレンマがあったのだろう。本音が隠され、元々分かりにくいものがさらに訳が分からなくなった」
日銀文学を読み取るために、日銀ウオッチャーたちは何に注目しているのか。
基本としているのは、毎回の金融政策を決める会合後に発表される公表文や、その後に出される議事要旨などの公文書だ。ニッセイの上野氏は「前回の公表文と、表現がどう変わったかをまず確認する」と話す。
例えば、景気の見方について「回復基調が続いている」から「回復が続いている」と、「基調」という言葉が外れると、「日銀が景気回復に自信を深めており、何らか政策変更があるかもしれない」などと読み解くといった具合だ。
◆AIまで使って「日銀の本音」を探る
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「総裁や副総裁といった主要幹部の発言の変化も念入りに見ている」と話す。ただ、「裏切られることも多々ある。特に7月の政策修正は唐突感があった。事前の植田総裁の会見で、焦っている印象はなかったからだ。こういう情報発信をされると市場は疑心暗鬼になる」とも。実際に7月に政策修正が発表されると、日銀文学の難解な表現も相まって市場は乱高下した。
本来、相場を混乱させないために、日銀には分かりやすい情報発信が求められるが、現実には黒田氏時代からサプライズ的な手法が目立つ。このため、市場関係者はあの手この手で日銀の本音を探ろうとしている。人工知能(AI)を使った手法はその一つだ。
野村証券金融経済研究所の水門善之氏らは2017年、黒田総裁(当時)の記者会見の映像をAIで解析した研究を発表。重大な金融政策の変更を決める直前の記者会見で黒田総裁の表情は、「怒り」「嫌悪」といったネガティブな感情を多く示す傾向などがみられたという。
◆日銀総裁の「ネクタイの色」、FRB議長のバッグのふくらみ
アナログなケースでは、記者会見で黒田氏が着けるネクタイの色が注目されたことも。ネクタイの色が「赤」の時は緩和に積極的で、「青」の時は緩和に消極的な姿勢を見せる法則があると、14年に経済メディアが報じた。真偽は定かではないが、クールビズでネクタイを着けない夏場には、この法則は使えないというオチも付いた。
日本だけでなく、米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)でも1990年代に、グリーンスパン議長(当時)が会議に持ち込むかばんの厚さが注目されたことがある。かばんが膨らんでいれば、資料が多いので政策が修正される可能性がある、として議長が出勤する様子がテレビ中継された。
◆分かりやすい説明が必要なのでは…
市場に影響を与える中央銀行の注目度の高さを物語るが、裏を返せば、分かりやすい説明をしていないとも言える。一般人にはなおさらで、日銀が6月に行ったアンケートでは、日銀の外部への説明は分かりやすいかという問いに「分かりやすい」と答えたのはわずか5.9%止まりだった。
植田総裁は5月の講演で「金融政策は、金融市場や広く人々の行動に働きかけることを通じて効果を発揮する。そのために政策判断の背景の理解を得ることが大切だ。丁寧な説明に努める」と話した。であれば、独善的な文学表現で国民や市場をけむに巻くことは本意ではないはずだ。
実のところ、植田総裁の説明姿勢は、黒田氏と比べて丁寧だと評価するエコノミストは多い。日銀の情報発信は今後どうあるべきか。大和の岩下氏は、2014年9月にFRBが利上げに向けた行程表を明らかにした例を挙げ、こう注文を付ける。「パッチワークのように複雑化した今の政策を正常化させるハードルは高いが、どういう順番で正常化に向かうかを広く示すのは大切だ。誠意を持って対応することが求められる」
◆デスクメモ
これを文学という芸術になぞらえていいのか。日銀の熟慮と迷いの表れか。植田総裁は就任時、「市場との対話力」が期待されただけに理解に苦しむ。日銀の説明はさておき、金融政策を巡る庶民の問いかけは今、シンプルかもしれない。「あれもこれも値上がり。何とかならない?」(北)
ジャーナリスト田原総一朗氏(89)が20日、都内で映画「テレビ、沈黙。放送不可能。2」の公開記念トークイベントに出席した。
映画は89歳という高齢の田原氏が、話しておかなければならない人物と、タブーや忖度(そんたく)なしで語り合う「田原が墓場に持っていけない話」として映像化した「放送不可能。」シリーズの第2弾。テーマは「政府によるメディアへの圧力の実態」で、立憲民主党の小西洋之参院議員と対談した。田原氏は「テレビ局は免許事業。政府の言うこと聞かないとつぶれる可能性がある。みんなおっかなびっくりやってる。逆に免許事業のテレビがどこまで政府とけんかできるか。それが僕の楽しみです」と話した。