果たして物価上昇に見合う年金は支給されるのか──。厚労省は来年4月からの年金支給額を試算した。
今年の物価上昇率を2.5%、賃金上昇率を2.8%として計算し、年金支給額は68歳以上が1.9%、67歳以下が2.2%増える。3年ぶりの増額となるが、物価や賃金の伸び率よりも支給額が低いのは、政府に都合のいい制度のせいだ。
年金支給額は前年の物価や賃金の変動率を踏まえて決定される。マイナスの場合は、物価か賃金かマイナス幅が大きい方を反映する。21年の物価変動率はマイナス0.2%、賃金変動率はマイナス0.4%だったため、6月から支給された今年度の年金は0.4%減額された。値上げラッシュの中、夫婦2人の標準的な世帯で年間約1万4000円のカットだった。
21年度を基準に今年度と来年度の「2年間」について、物価高に伴う負担増と年金支給額を並べてみた。
みずほリサーチ&テクノロジーズのリポート(11月22日付)によると、政府の物価対策を考慮しても、物価高による今年度の家計負担(2人以上世帯)は21年度に比べ9万6000円アップし、来年度はさらに4万円増えるという。2年間で約23万円の負担増だ。
他方、年金支給額(夫婦2人の標準的な世帯)は今年度が約マイナス1万4000円、来年度は今年度より6万円増えるが、2年間でわずか3万2000円の増額に過ぎないのだ。
立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏(税法)が言う。
「物価高騰による23万円の負担増に対し、3万2000円の年金増額ではまったく追いついていません。今年から始まった歴史的なインフレに対し、年金制度はまったく歯が立っていないということです。ましてや、この先、岸田政権は軍拡に邁進します。所得増税が行われることもあり、さらに年金生活者にしわ寄せがくる可能性が高い。自公政権が続けば、年金生活者の暮らしは、ますます苦しくなるでしょう」
「100年安心」どころか、足元、真っ暗だ。