この曲は、私にとっては少なくとも、ある時代を象徴する1曲だ。バブル崩壊直前、日本経済の絶頂期。日本にとっての「古き良き時代」だった。今から思えば馬鹿げた時代でもあったが、懐かしくもある。といってもバブルの馬鹿騒ぐ事態とはまったく無縁だった。 私はユーミンのコアなファンを自称する者なので、この映画に先つ1989年発表の「LOVE WARS」に収録されたこの曲を映画で知る前に聴いていたはずだ。「はず」というのは86年の「ALARM à la mode」あたりからちょっとつまらなくなった気がしてて、一時期それまでほど熱心に聴かなくなっっていたからだ。「LOVE WARS」と「ALARM à la mode」は間違いなく発売時には購入しなかった。 だからこの曲は私としては中山美穂と織田裕二が主演する映画「波の数だけ抱きしめて」を見た時の圧倒的な感動とともにある。ただし、この映画の公開は1991年だが私が見たのは劇場ではなく、TVで、おそらく97,98年ころに見たのが最初だと思う。すでにバブル景気は崩壊した後だ。 この映画は素晴らしい。脚本、音楽、キャスティング、ロケ地から小物まですべてが完璧に近い。単なる好き嫌いで言うなら、あるいは繰り返し見ても飽きないと言う基準で言うなら、宮崎アニメのいくつかと並んで日本映画で最も好きな映画かもしれない。 この映画の中の中山美穂は本当に美しい。松下由樹だって今とは全然違う(しかもこの頃から抜群に演技がうまい)。織田裕二ものちの「カンチ」をほうふつとさせる不器用な芝居が印象的だ。別所哲也の広告代理店社員ぶりがまたはまっている。この映画の冒頭にマツダのロードスターが登場するが、これがまたとてもカッコいい。ロードスターがこの映画に間に合ってくれてよかった。89年の発表だそうだ。 音楽ではなく映画の話になってしまったが、そういう人はやはり多いようで、YouTubeにはこの曲が流れる「波の数だけ抱きしめて」の1シーンがアップされていて、録画して何度も観ているにもかかわらず、久しぶりに観いって、また感動してしまった。 実はこの映画に使われている曲で、この曲以上に大好きな曲がある。これはもう本当に名曲だと思うが、よく考えてみるとやはり曲の流れるシーンの感動と曲への評価が離れがたく結び付いているのは確からしい。その曲もいずれ紹介したい。