信州では、リンゴや草ボケが花盛りだとか。草ボケといえば、軽井沢では「地梨」のこと。原野を真っ赤に染めて咲いていた光景を思い出します。過去の記事からの再現です。
「季節の花300」
「地梨の花を取ると火事になる」
「だから、花を取ってはだめ」
沢の畑への小径近くの原野を、真っ赤に染めて地梨が咲きだすと、子どもたちは、大人からよく言われました。
地梨とは、草木瓜のことで、3~40センチから60センチにもなるバラ科の低木ですが、千ヶ滝の人たちは、みなそう呼んでいました。
木には、バラ科の証明のように鋭い刺があるので、子どもたちがそんな藪で遊ぼうものなら、大変。引っかき傷だらけになってしまいます。
大人たちの危険回避から出た知恵だったのでしょう。
朱赤色の花が、あたり一面埋め尽くすさまは、燃え盛る火の海のようで、子ども心にも、何か尋常でない恐ろしさを感じたものです。
それが、大人たちの言う「火事」に結びついたのかもしれません。
子どもたちは、誰も近寄りませんでしたが、花の後に実る、たくさんの実を目当てに、祖父だけは近寄りました。
渋みが強く酸っぱい果実は、子どもにも大人にも見向きもされなかったのですが、祖父は、それを焼酎に漬けて果実酒を作っては、食前酒として飲んでいました。
草木瓜の恩恵に浴したのは、たぶん、祖父だけだったのではないでしょうか。そのせいか、祖父は健康で、自称105歳まで生きました。
疎開した人々が開墾した沢の畑はその役目を終えて、もとの自然に戻りかけました。が、後に別荘地として開発されて、今その場所には小区画の別荘がたくさん建っています。
渓流は、コンクリートの川床になってしまいましたが、川は昔の場所を流れています。
かつての日には、フデリンドウやオキナグサなどが咲いていた、軽井沢・千ヶ滝の、花たちの物語を書いておこうと思います。
2006-04-26 15:08:53 / の記事より
あっという間になくなってしまいました。
今こちらはいたるところで、その見事な朱色を輝かせています。
子供の頃から、本当に親しみのある花です。
そして、野に咲く花では、抜群にきれいな花ですね。
地梨の花のインパクトは強く、今でもパッと目裏に思い出すことができます。
そんな自然が残っていること、いつまでもとねがいます。
「千曲川のスケッチ」に、君影草のことが出ていましたね。スズランの原っぱは、今も何処かにあるのでしょうか。
ご訪問有り難うございます。
おかげさまで、祖父の地梨酒のこと、昔の軽井沢のことなど、懐かしく思いだしました。
同じ長野県、似たような言い伝えがあって興味深いものですね。
漬け方の細かい作業も、貴ブログでハッキリと知ることができました。ありがとうございました。
地梨酒がうまく熟成する日が楽しみですね!