(これはガスコンロじゃないですよ。湯沸し器でしょ、ガス湯沸し器でしょ)
おおぜいのお客さんの中には、いろんなクセの方ってありますね。
電話を掛けてきても自分の名を名乗らないお方、こちらから『どちら様でしょうか』と尋ねると、「わしだ、わしだっちゃ。わしの声を聞いて分からんのか、何年電気屋やっとるんか」と云うお方、
「赤木(仮名)だ、赤木だがな」と苗字だけを云い続けて、どこの誰かがぜんぜん分からないお方、
「豊岡(地名・仮名)だ、豊岡のもんだがな」と、自分の地区名だけを云い続けて、お客の名前ぐらいは知っとるだろうと名前を名乗ろうとしないお方、本当に不思議なクセのお方がおられます。
Fさんの場合です。
「Fで~す。Fなんだけど」と、電話では名前を名乗ります苗字だけ、でもFさんの場合は声で分かります。それは宜しいですが、Fさんののクセはいけません。
今朝のことです。電話を受けた家内は嘆きます。
「Fさんったらね、いつものように電話掛けてくるのはいいが、どんなご用件でしょうかといくら尋ねても、来たら分かるっちゃ、来て~な頼みます」、
「ほんで、いつ来てもらえる~、いつ来てもらえますか~」の催促なんよ。
「ハイ、今はエアコン工事に行ってますから、帰って午後になります」と云うと、「帰ってきたらいつ来てもらえるか返事して~」だったと嘆きます。
Fさんは、私が電話に出た場合は名前も云わない、用件も云わない、なのに「いつ来てもらえるの~・・・・」の困った時もありますね。
午後です。エアコン工事から帰って電話です。
『Fさんですか、昼前にお電話いただいたようですが、どんなご用件でしょうか』、
「いつ来てもらえるの~、何時になりますか~」、
『あのね、Fさん聞こえますか。何を診て欲しいのでしょうか、何か用意していくものは何でしょうか』、
「えっ、電話の声が小さく聞こえんわ~、何ですって」、
大きな声で、
『あのね、こちらにはよ~く聞こえてますよ。音が小さいですか。どんなご用件でしょうか』と力いっぱい大声で、
「あ~あ、ガスコンロが火が点かんの、ガスコンロが」と、やっと用件を答えます。
とり合えず、電池を二個持って訪問します。
『こんにちわ~、Fさん、ガスコンロが点火できないって?、見せて下さい診に来ましたよ』、
台所に案内したFさんは、「これが点かんの、湯が出んの・・・・」と、湯沸し器を指差しますね。
『あのね、Fさん、これは湯沸し器、ガスコンロと違いますよ』、
「えっ、ガスコンロって云いましたか?、この湯の出るのガスコンロって云ったかね???」ととぼけます。
『ハイ、火の点かないのは乾電池、乾電池が古くて点火しないのですよ。これで直りました。ボッと火が点いて、それ湯も出ますね』と説明します。
「来ておくれと云ったのは、あれもして欲しい、これもして欲しいの二つ三つして欲しいことがあったの、早く来て欲しかったの」と云って、次から次へと細かい用事です。
『あのね、子機見せてごらん。あらら、受話音量ってマークが出てるでしょ。目盛りが二つ目だがね、小さすぎて聞こえんかったんよ』と、子機の音量調整までさせられますね。
おおぜいのお客さまの中には、実に不可解な、妙なクセのお方がおられます。
《適わんね 要件告げず すぐ来いと》