ブクログより
時代は・・・明治時代。
千島列島の先端にある占守島と内地との連絡船があるとき、遭難して太平洋の真ん中の無人島に漂着した。
連絡船の名前は龍睡丸、乗組員16人の決死の生還の記録だ。
似たようなので最近では桐野夏生の「東京島」が記憶に新しいが、物語としてどちらがおもしろいかと言うとそれは比較にならない。
なぜならこちらは実話だから。
報効義会という千島列島の開拓に勤める団体の船なので、ほとんど国の組織と思われる。
なので時代も時代だけれど、きちんとした規律があり、上下関係もしっかりしているので、無人島に漂着という非常事態にも船長の指揮のもと、するべき事を冷静にこなして、一致団結、救出の日を待つ。
誰かが誰かの物を盗んだり、ひとりで抜け駆けして食べ物をこっそり食べたり、そういうことは一切無し。
分け合い、譲り合い、何もない中でも工夫して喜びを見つけたり、すばらしい景色に見とれる余裕を持ったり、島での生活を楽しんでいるとすら思える。
16人に悲壮感が無いからだ。遭難記録というよりは冒険小説だ。
救出されてからも、この16人の行動は諸外国人たちの賞賛を浴びたとか、まさに日本男児ここにあり。
無人島に生きる一六人 / 須川邦彦
★★★★☆