ブクログより
ある日夫婦で散歩していた時、外来植物のナガミヒナゲシがたくさん咲いているのを見て、どうやら意図的に咲かせてあると思った寮さんは、管理者を探し声をかけた。
それがなっちゃんとの出会い。
なっちゃんの家は、堤防敷の一部の公共の土地にあり、川岸にへばりつくようにして建っている。
昔は親族で住んでいた家が何軒かあり、今は借家にしてなっちゃんは自分の家で一人暮らし。
獣道のような土の道を、セメントで年月をかけて少しづつ少しづつ、コンクリート敷にしたり、蛇やカエルの住みかだった草野原を手入れして、花壇まで作ってある。
以来、寮さんと交流ができ、壮大な壮大ななっちゃんの人生を聞き、一冊の本に仕上げた。
なっちゃんは在日2世。
二度結婚して三人の男の子をもうけるが、結婚生活はいづれもうまくいかず、女手で育て上げた。
54歳で夜間中学に通うまで、ろくに読み書きもできなかった。
できなかったのに、それまでに原付バイクの免許を取っている。はっ?どうやって?
万事がこういう調子、なっちゃんの人生。
行きあたりばったりとかやけくそとかそんなんじゃなくて、学校に行って勉強はしてこなかったけど、なっちゃんには生きる知恵、力、度胸があった。
逞しい、頼もしい、若いころのものすごい苦労もなっちゃんが語ると、なんでもないのかなと思うけど、生半可な苦労では無かったと想像できる。
80歳を超えてのそのエネルギー、明るさはそういう苦労を乗り越えてきたから、「今が一番幸せ」と笑うなっちゃんにはまだまだやりたいことがある。
なっちゃんの花園 / 寮三千子