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でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

下山の哲学

2023年10月19日 | 「本」のひきだし

ブクログより



地球上に8000m超えの山が14座ある。
著者は2012年に日本人初14座登頂のサミッターとなる。
その1座から14座までの主に下山の記録が綴られている。標高8000mを超える世界はデスゾーンと言われるように、どの山も一筋縄ではいかない、どころか何度か挑戦の末、何年もかけて登頂を果たした山もある。

形成される登山隊もまちまちで、第一座目のマカルーは立正大学の学生として、日本山岳隊の一員として参加している。
ほかに、公募隊に応募しての参加、ここでいう公募とは、お金を払ってガイドに連れて行ってもらうというものではなく、参加の一人一人が、ある一定の技術を持ち備えて、一人でも行動できるレベルに達していて、費用を出し合い参加するというもの。
そういうところでいろんな国のいろんな人に出会えることを楽しみに参加していた。
またそこで知り合った人たちと次、別の山に行ったりしている。

8000m峰もある程度征服すると、自然14座制覇という目標ができ、各国の志を同じくする人たちと行動を共にしていくが、制覇を達成した人から抜けていき、最後の3・4座は仲間を一般から公募したりしている。

さて、14座の中で特に印象に残った山は、7座目のシシャパンマ、標高8027m。チベットの奥深くに位置し、8000m峰で唯一完全に中国領内にある山。
竹内にとって三度目の挑戦で、なんと無酸素でアルパインスタイルで登るというとんでもない発想に驚く。
アルパインスタイルとは、日本のアルプスを何日かかけて縦走するようなもの、普通、7000・8000m級の山は極地法といってベースキャンプから上にいくつもキャンプを設営しながら登るところを、荷物全部を持ってシシャパンマをぐるっと一周10日間、本当に楽しい旅だったと振り返る。

ここで常々、竹内が言う「頂上は通過点」をより実感することができる。
頂上に着いたからあとは半分だなとか、下山は楽だから7割がた終わったなとかいう感情は持たないと。頂上は登山の行程の通過点のひとつでしかなくて、それが全行程のどの部分なのかは終わってみなければわからないと。
改めて共感する。

あと印象的な山はやはり、体調不良やけがをおしての山。
シシャパンマ下山後、なんと翌々日後にはエベレストに登りに行っている。
いくら高度順応ができているとか、お隣の山だからとか、ちょっと凡人には考えられないんだけど、やはり体に無理があったのか、体調を崩し、意識を無くし一時は呼吸停止になり体は冷たくなっていき、元薬剤師と看護師のパートナーの必死の手当てで一命をとりとめたという。
もう一つは、ガッシャーブルム2峰での雪崩に巻き込まれての大けが。
何とか掘り出されたが、背骨の破裂骨折、肋骨が5本折れて肺が片方つぶれていた。
ドクターに明日まで持たない、家族にメッセージを残せ。と言われたほど。
それでも生還を果たし、翌年に背骨にボルトを入れて再度ガッシャーブルムに挑戦、10座目制覇。

こういう風に書いていると、竹内さんてギラギラした、根性の塊の山やさんのように思いますが、メディアなどでお見かけすると、ウエーブのかかった長髪に、ジャケットを羽織り、ストールなんか巻いてらして、長身だし細身なので、雑誌のモデルさんのようです。
話し方も穏やかで、どこにそんな根性があるの?と思うようなお姿です。
山は下りて初めて完結、ということで、次の山に登るために下山するんだと、14座制覇の次も新たな挑戦を続けておられます。



下山の哲学 / 竹内洋岳

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