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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

自治体行政はこれから何に「責任」を持つのか?

2007-01-05 10:10:50 | 国際・政治

昨日から仕事始めで、大阪市役所でも市長が課長級以上の職員を前に新年の挨拶と訓示らしきことをしたと、昨夜、NHKの関西ローカルのニュースで見ました。そのときに、「今もなお差別が根深く残り続けている」という趣旨の話とともに、「行政としては特別扱いをしないことが差別解消につながる」という趣旨のことを大阪市長が言ったということが、このニュースのなかでは伝えられました。

もちろん、このことは私の記憶にもとづくので、不確かな面もあります。ただ、昨年5月の飛鳥会事件以後、青少年会館条例の「廃止」方針の提示など、一連の大阪市の「」施策見直しの動向を考えた場合、「ああ、この市長なら言いかねない話だなぁ」と思って、このニュースを見ました。

さて、問題はここからです。記憶にもとづくものなので不正確な面もありますが、テレビのニュース経由でこの大阪市長の話を聞いて思ったのは、「ではいったい、これからの大阪市を含めた地方自治体の行政は、例えば人権施策や青少年施策の何について、どのような形で責任を持った取組みをしていくのか?」ということです。

例えば、これからの地方自治体行政は、「当事者の主体的な努力で差別解消、人権意識の向上を」というのでしょうか。しかし、今までだって解放運動をはじめ、さまざまな人権課題について当事者たちが立ち上がり、いろんな形で人権意識の向上や差別の解消に向けて努力をしてきました。そのことについては、地方自治体行政の関係者はどう考えるのでしょうか? こうした「当事者の主体的な努力を促す」ために、過去長い間取り組んできたさまざまな人権施策、青少年施策には、それなりの「有効性」もあったはずです。

また、今後も引き続き「当事者の主体的な努力」を促す、その条件整備ということについて、地方自治体行政はどう考えていくのでしょうか? 例えば、人権関係や青少年育成の諸活動に取り組むNPOの努力に期待するといっても、こうしたNPOが活動の場として利用しやすい公的施設の整備、NPO認証手続きを円滑にすすめるための配慮、何か積極的に人権関係や青少年育成の活動に取り組みたい人々の学習や交流の場の整備など、地方自治体行政が取り組むべき条件整備の課題も多々あるはずです。そして、こうした条件整備の行政施策には、それほど多額の公的資金を必要としないはずですし、今、大阪市内にある青少年会館や人権文化センターなどをフル活用する方策を講じれば、既存施設の有効利用も可能です。

もっというと、地方自治体の社会教育・生涯学習行政は、本来、各自治体住民の抱える諸課題の主体的な解決を促すために、例えば公的施設の整備や各種の学習・文化活動の機会の提供、自発的な住民の学習・文化活動への支援などを行なうものではなかったのでしょうか。

また、昨年末に成立した新しい教育基本法においても、第3条で生涯学習の理念、第10条2項で家庭教育支援に関する国・地方公共団体の役割、第12条で社会教育の奨励・振興に対する国・地方公共団体の役割などが規定されています。これらの改正後教育基本法の規定は、人権関係や青少年育成の諸活動に取り組むNPOの育成など、社会教育・生涯学習分野での行政施策の充実という課題と無関係ではないはずです。

このことから考えるならば、今までに引き続き社会教育・生涯学習施策の充実を通じて、人権関係や青少年育成の諸活動に取り組む人々への積極的な支援を行なうことが、今後も地方自治体には求められているといっておかしくないのではないでしょうか。これは大阪市政だけに限らず、他の地方自治体においても同様ですが、今後、あらためて社会教育・生涯学習分野や人権施策、青少年施策の領域で、いったい行政は何に「責任」を負うのか。ぜひともこの際、じっくりとお考えいただきたいと思います。


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