今から書くことは、これらの諸事業を担当した大阪市職員の努力や資質を問題にしているのではなくて、その前提にある発想や、その努力が位置づけられている構造的なものを問題にしていると理解してください。
さて、下記のページで、昨年度の大阪市の「重点政策予算枠」での諸事業について、昨年度の「実績」が紹介されています。
http://www.city.osaka.jp/keieikikakushitsu/keieikikaku/yosanwaku/pdf/shinchoku/h1908_02.pdf
それで、この「実績」の内容ですが、産業関連の施策などについてはさておき、子ども・青少年施策の部分でいうと、「これが実績といわれてもなぁ」というのが私の率直な印象です。
たとえば、「個性と創造性を発揮できる子どもの育成」と称して、「キャリア教育推進事業」を挙げています。子どもの勤労観や職業観育成のために講話や体験事業を行うものだそうですが、これ、2006年度ですと、大阪市内の小学校の24校・中学校36校で実施したそうです。それでも2005年度より実施校が増えているようなのですが、「う~ん、大阪市内にある学校数を考えると、あまりに少ないんじゃないだろうか?」という感じがします。
それと「学校で行う単発の講話程度で、はたしてどんな職業観が子どもに育つのだろうか? もっと地道に、日ごろから学校のなかで進路形成をどうするか、多様な仕事のあり方を社会認識の教育と関連させてどうすすめるのかなど、職業観育成の取り組みについてはそこから議論してやるべきだろう」という思いもありますが。
あるいは、「子ども・青少年に関するセーフティーネット」というのは、「虐待防止」に向けての地域ボランティア育成の取り組みくらいしかないんですかね? それこそ、たとえば「ボランティア育成」ということだけにこだわっても、「非行防止・健全育成」の活動にとりくむボランティア、放課後いきいき事業などで子どもと関わるボランティア、障がいのある子ども支援のボランティア、夏休み中に小中学生の学習支援をするボランティアなど、多様な活動領域が考えられると思うのですが。ボランティア育成に限定しても、「まだまだ、やることあるよね」と言いたくなってしまうのです。
あるいは、「セーフティーネット」という以上は、経済的な面で生活困難な状況にある世帯の子どもたちへの支援施策も重要でしょうし、こういう世帯の将来の生活保障ということから考えると、先に述べた職業観育成等の取り組みだって「セーフティーネット」の形成だといえるでしょう。
他にもいろいろ例を挙げていくときりがないのでこの程度でやめますが、どうも私の目には、「鳴り物入りで取り組み始めているわりには、今、子どもや若者あるいはその子どもの保護者たちが直面している社会的諸課題にたいして、大阪市で実施されている新しい諸施策が中途半端で終わってる」という印象がぬぐえないのです。
そして、その「中途半端で終わっている」理由のなかに、おそらく、「いろいろ改革をすすめ、新しい施策を打ち出していこうにも、今の大阪市の財政状況のなかでは本格的な新規施策を打ち出すだけの財源が確保できそうにない」ということがあるのだとすると、「これはやっぱり、厳しい状況下でとにかくここまでがんばりました」という意味での「成果」として読まなくちゃいけないのかな、と思ってしまいます。だからこそ、冒頭で述べたように、「これらの新規事業を担当した大阪市職員の資質や努力を問題にしているのではない」という話になるわけです。
しかしながら、やっぱり私などは「う~ん、これで大阪市の子どもや若者にセーフティーネットを張ったと言われると・・・・、やっぱり、もっとこうして・・・・と言いたいよね」という思いがあります。たぶん、子ども施策・青少年施策の企画や実施に携わっている市職員のみなさんも、「ほんとうはもっと・・・・」という思いがあるのかもしれません。だからこそ、市職員のみなさんの努力には敬意を示したいのですが、どこか、これを「成果」といわれても、「正直、すっきりしないよね」というのが、今の私の率直な思いです。