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蜜蜂と遠雷(映画)

2021年05月08日 | 映画

国際ピアノコンクールを舞台に、音楽に魅せられた若きピアニストたちの挑戦と奮闘を描いた恩田陸さんの直木賞・本屋大賞W受賞作を映画化。主要4人のコンテスタントを、松岡茉優さん、松坂桃李さん、森崎ウィンさん、鈴鹿央士さんが演じています。

影の演奏家(ボディダブル)はそれぞれ、川村尚子さん、福間洸太朗さん、金子三勇士さん、藤田真央さん。

蜜蜂と遠雷

劇場で見逃した作品が AmazonPrime に上がっていたので見てみました。以前、原作の感想も書いています。⇒ 蜜蜂と遠雷

映画が公開された時にピアノの演奏シーンが多いと聞いていましたが、思ったほどではなく、ドラマと音楽がバランスよく配されていたという印象です。個人的には、もっとたくさん演奏シーンがあってもよかったと思うくらい。

そして主要4人が原作のイメージぴったりで驚きました。特に原作の感想で
>コンクールの台風の目で、コンテスタントから審査員までいい意味で引っ掻き回す存在
と書いた風間塵は、どこでこんな子を見つけてきたの!?と感動しました。^^

演じた鈴鹿央士さんは新人さんとのことですが、くるくるよく動く表情、自由奔放な演奏スタイルはまさに風間塵のイメージそのものでした。

実は、栄伝亜夜を演じるのが松岡茉優さんと知った時は、ちょっとイメージと違うと思っていたのです。原作ではもっと弱々しい感じの女の子を想像していたので。でも繊細さの中に強さもあって、奇跡の復活を果たす亜夜に、松岡さんはぴったりのキャスティングでした。

松岡さんがソロで弾く時と、連弾で弾く時とでまったく違う表情に演じ分けていたのは、映画ならではの表現でした。幼少期の母との連弾の楽しさが彼女の演奏に大きな影響を与えているという設定ですが、相手に合わせて弾く時の艶めかしい表情にどきっとしました。

小説に登場するフィクションの課題曲「春と修羅」がどんな曲になるのかも楽しみでした。原作を読んだ時には、武満徹さんのような和を感じさせる前衛的な音楽を想像していましたが、映画ではどことなくラベルを思わせる音楽でした。(作曲は藤倉大さん)

四者四様のカデンツァも見どころのひとつでしたが、他の3人が修羅を激しい音楽で表現していたのに対し、松坂桃李さん演じる高島明石の「春と修羅」はどこまでも優しく透明感あふれていました。雨の表現はラベルの「水の戯れ」を思い出しました。

というわけで大いに堪能した本作ですが、4人以外では斉藤由貴さんが、こんな風に酸いも甘いも嚙み分けた大人の女性を演じるようになったんだ、というのが感慨深かったです。最近では「三度目の殺人」も記憶に新しいですが、本作でとどめを刺されました。^^

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