「フォー」ってご存知ですか?今ならたいていの人は,何処かで耳にしたことがあるだろうベトナムの麺料理の一つです。
その「フォー」という言葉にまだ馴染みがなかった30年以上前。
よく連れて行ってもらっていた伊勢佐木町の中華料理店で父とお昼を食べていた時の事。
アジア系の旅行者らしき青年とスタッフが何やら押し問答をはじめました。青年の英語は訛が強く、お店のおじさんは全く英語がわからないというベタなシーン。
教師だった父が通訳をしたところ、希望の商品がない事がわかり、青年は寂しそうにお店を出て行きました。
「なんだったの?」と私。
「ポーだか、フォとかいう麺が食べたいそうだ。それはどんなものかと尋ねたら、米でできたそばだというので、ビーフンの事かと思ったんだが、それは違うといってた。パパもよくわからない。」
この時の話はそれでおしまいです。
しかし再びこの『ポー』だか『フォ』と出会うことになります。80年代後半のサンフランシスコで。
留学していた妹を訪ねた時のことでした。
当時の日本では珍しいキッチンカーがスタジアムの脇に何台も止まって営業しています。その中で、ちょっと離れた場所に陣取っている一台が目に留まりました。真っ白なキッチンカーの看板には『Vietnam』『Pho』と鮮やかな青いペンキで書かれていました。そして同じく手書きのベトナム国旗。
「今、こっちですごーく流行ってる。安くておいしい、量もたっぷり。アルバイト学生の味方。フォーっていう、ベトナム料理だよ,絶対おすすめ!」と妹。
その時初めて食べたフォーは、優しい優しい味。ライムを麺に絞って食べる、という行為にビックリしました。
ああ!突然のイマジネーション!そして思い出しました。
あの時の青年が食べたかったのは、この「フォー」だったのではないかしら??
知らない土地でちょっとへこんでいたとして、その時自分の慣れ親しんだ味に出会えたら、それはどんなに励ましにも勝るものでしょう。
青年は本当に寂しそうに店を出て行ったのです。それは、メニューがない事よりも、自分の国の料理を誰も知らないことが悲しかったのではないかなあ。
料理は空腹を満たすだけではなく、心も満たすもの。心からそう思います。
さて、時は21世紀です。
ヴェトナム・アリスの銀座のマロニエゲート店。ビルの名前より銀座で東急ハンズが入ってるビルとか、ユナイテッドアローズが入ってるとこ、と、説明したほうがわかり易いかも。そのビルの11階フロアにあります。ランチタイムが長いのでうれしい。つまり、最近のレストランによくある14時から17時までの閉店がないのです。だからランチ難民にならずにすみそうです。)
ランチメニューはフォーのセットとカレー他3セット全部で5種類。前菜、メイン、コーヒーか紅茶で1,500円。銀座でこれはリーズナブルです。デザートは300円+(プラス)
もちろん、迷わずフォーのセットを選びました。
これが前菜。
フォーです。スープはチキン、ビーフ、ポークから選べます。これはチキン。
蓮の実のお茶。ここまでがランチセット。
デザートも頼んでみました。コンデンスミルクを使った濃厚プリン。冷たくっておいしいよ。
各テーブルにおいてある調味料。グラスにいけてあるのはシャンツァイ。もちろんお好みでいくらでも使えます。
窓の向こうにスカイツリーが見えました。
日本だとレモンを使う店が多い。同じ柑橘類なんだけど、全然違ったものになるから不思議。
あ~あの時のフォーは本当においしかった!