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ニッポンのゆる~い日常

中国の武威と文化の恫喝に屈した… 「永田町語」の底意

2012-07-15 00:07:11 | 日本
中国の武威と文化の恫喝に屈した… 「永田町語」の底意


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120714/stt12071420400005-n1.htm


 日本語の語義・表現は多様であるだけでなく、多義で奥深い。そうであるが故、書くに当たり、語るに当たり、残念だが生涯にわたって使うことのない言葉も少なくないだろう。語感・行間にそっと託した精緻な機微も加わると、深遠の度は加速していく。日本語は、国家にとっての至宝なのである。



■至宝を「言い訳」に


 ところが、至宝を「逃げ口上」「言い訳」に悪用する輩(やから)がいる。永田町に巣くう政治屋達だ。とりわけ、強者に媚びる際に悪知恵を絞って駆使される傾向が強い。だが、外交・安全保障分野において、言葉は警告とも成り得、状況次第で抑止力まで構築する。言葉表現によっては抑止力を剥奪(はくだつ)し、外国に間違ったシグナルを送る事態を招くということだ。

 その点、トルコ軍のF4戦闘機がシリア軍によって撃墜された問題について、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン首相(58)の警告は当然とはいえ、天晴(あっぱ)れ見事であった。曰(いわ)く-

 「敵対行為」

 「今後、トルコ国境に近付くシリア軍の動きは潜在的脅威とみなし、相応の対応を採る」

 「(トルコのこれまでの抑制的姿勢を)弱さだと誤解してはならない」

 同盟関係にあるNATO(北大西洋条約機構)諸国もけじめを付けた。曰く-

 「恥知らずで容認できない」(ヒラリー・クリントン米国務長官)

 「トルコ軍機撃墜は国際法違反の攻撃である」(フランス外務省)

 

日本政府の場合、こうした事態を受けると、判で押したように“声明”を棒読みする。

 「事実関係を確認している」

 「外交ルートを通じ抗議する」



■「粛々」や「大局的」


 「永田町語」では、こうした対応を「冷静」と呼ぶ。沖縄県・尖閣諸島付近で2010年9月、違法操業中の中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりし、船長を逮捕しながら釈放した事件では、この種の「逃げ口上」「言い訳」が乱発された。

 例えば、当時の菅直人首相(65)。「冷静に努力していくことが必要」などと、およそ「イラ菅」の異名にふさわしからぬ発言に終始した。

 「粛々」なる、便利この上ない言葉も大流行した。当時の前原誠司外相(50)は船長釈放後「もし同様の事案が起きれば、また同じような対応を粛々とすることに尽きる」と断言。実態は「同種事件が起きたら、また粛々と釈放する」と宣言したに等しい。

 「総合的」「大局的」という、もっと怪しげな言葉も跋扈(ばっこ)した。こんな具合だ。

 「総合的に判断するということは、現行制度上ありうる」(当時の岡田克也・民主党幹事長)

 「戦略的互恵関係を構築するについて、刑事事件の処理とは別に、何が良くて、何が悪いかというのは別途、われわれが考えるべき大局的な政治判断が必要だ」(当時の仙谷由人・官房長官)

 早い話が、民主党政権は「冷静」に「粛々」と、そして「総合的」かつ「大局的」判断から、中国の武威と経済・文化上の恫喝(どうかつ)に屈したのである。




■とんだ「柳腰外交」


 そういえば、仙谷氏という弁護士さんの駆使する日本語?の語意は多義などという生易しいレベルではない。何しろ「柳腰外交」という、新たな外交用語?を地球上にもたらしたのだ。

 記憶に残っている読者も多いだろうが、おさらいをしてみる。中国漁船の体当たり事件を受け、衆議院予算委員会で、自民党側が「弱腰」と批判すると、仙谷氏はこうかわした。

 「弱腰とは思っていない。柳腰という、したたかで強い腰の入れ方もある」

 「柳腰」とは、細くしなやかな腰つきの美人を意味する褒(ほ)め言葉。しなを作る媚態(びたい)などを表現する言葉でもある。川柳にも「♪もてた奴ばかり見返る柳なり」と唄われた通り、色街・吉原には柳腰を象徴して「見返り柳」が植えられていた。「したたかで強い腰の入れ方」を表現したかったのなら「二枚腰」「粘り腰」と表現するべきだったろう。


 仙谷氏の対中外交の要諦(ようてい)とは、中国に媚(こ)びへつらうこと。清国以前の伝統で冊封(さくほう)関係の証しとして隣国に強いた、額を地面に付ける土下座・三跪九叩頭(さんききゅうこうとう)だったのかと、疑ってしまう。


 そういえば09年12月、民主党の現職国会議員143人を含む600人超もの、過去最大規模の訪問団が訪中。国会議員一人一人が胡錦濤(こ・きんとう)国家主席(69)と握手し、記念撮影を行った。握手・撮影共に中国側が難色を示したにもかかわらず、当時の小沢一郎・民主党幹事長(70)の強い希望で実現した。


 民主党のこれまでの議員外交を見れば、仙谷氏の底意も推測できるというものだ。

 最後に、永田町のみならず日本社会全体を縛っている、ほぼ万民(ばんみん)が逆らえぬ究極の「脅し文句」「キメ言葉」を披露する。

 「平和」

 この2文字のためなら、現代日本人は国家主権も民族の矜恃(きょうじ)も捨てられるようになってしまった、のだろうか…。

2012.7.14 17:36
















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