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北朝鮮の脅威の下、日本は「非核二原則」への転換を目指せ

2017-09-27 11:27:16 | 正論より
9月27日付    産経新聞【正論】より



北朝鮮の脅威の下、日本は「非核二原則」への転換を目指せ 防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛氏


http://www.sankei.com/column/news/170927/clm1709270007-n1.html




 ≪核武装への調査は注目に値する≫


 金正恩体制下で加速する北朝鮮のミサイル発射と核実験を、日本の国民はどう見ているだろうか。

 産経新聞・FNN合同世論調査(9月16・17日)では、北朝鮮による核実験強行や日本の上空を通過する弾道ミサイル発射について、脅威を「感じる」が84・7%、「感じない」が14・4%、北朝鮮に対し「対話」と「圧力」のどちらに重点を置くべきかでは「対話」が38・4%、「圧力」が56・8%だ。要するに北朝鮮の核・ミサイル開発の急進展を脅威と受け止め、圧力をもって対応すべきだとの声が圧倒的に強い。

 さらに興味深いのは、非核三原則についての反応である。三原則見直しの是非については、「肯定」が43・2%、「否定」が53・7%。また米国核の日本への持ち込みの可否については、それを「可」とする声は26・2%、「否」は68・9%だ。持ち込み賛成論は反対論の4割に満たない。


 もうひとつ、「日本が将来核兵器を保有すべきだと思うか」と問われると、「思う」は17・7%、「思わない」は79・1%で、わが国の核武装を是認する声は、それを拒否する声に対して、なんと2割程度でしかない。

 注目に値するのは、わが国の核武装の是非が設問として登場したという事実そのものだろう。実際、非核三原則についての世論調査は従来、なきに等しかった。




 ≪曖昧だった「持ち込ませず」≫


 非核三原則、すなわち日本は核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」は昭和42年12月11日、佐藤栄作首相により衆議院予算委員会において表明された。しかし、これまで同原則に対する異論がなかったわけではない。


 平成18年11月、当時は自民党政調会長だった中川昭一衆院議員が、非核三原則はいまや非核四原則化していると語り、「言わせず」原則が加えられていると指摘した。そのうえで、非核三原則の是非を議論することさえ許されないのであれば、それは「考えさせず」を加えた非核五原則だと語った。同年10月9日に北朝鮮が金正日体制下で初の核実験を強行したときのことである。


 当時の私の考えでは、非核三原則は四原則化していた。中川議員の口を封じようとした勢力は、核問題について「議論せず」を求めていたからである。そのころ最も議論が分かれたのは、第3の「持ち込ませず」原則をめぐってであった。というのも、米軍核の「持ち込み」には、その陸上配備か一時寄港かが問題だったからだ。


 この区別はまことに奇妙というほかなかった。陸上配備された米軍核は当然、その使用、つまり発射を前提としている。他方、一時寄港した核搭載米艦は、その乗員の休養と燃料補給を目的としている。だから一時寄港も含む非核三原則とは、実質的に非核三・五原則に他ならなかった。議論は混迷していた。

 私見では、今日のわが国で必要なのは非核二原則、すなわち「持たず、作らず」へと非核三原則を変更することである。右に述べたように、第3の「持ち込ませず」原則にはもともと曖昧なところがあった。仮に核搭載艦の一時寄港を三原則に含むとしても、該当艦の核搭載の有無を確認する手立てがわが国になかったからである。





 ≪開発能力を北に示すことが重要≫


 わが国が「持ち込ませず」原則を放棄する場合、何がプラスに、何がマイナスになるだろうか。マイナス要因として考えられるのは、国民の間にみられる根強い核アレルギーである。これは、わが国が「唯一被爆体験国」であることからきている。

 他方、プラス要因としては何が考えられるか。核搭載米艦の一時寄港は、その目的が核使用ではないから省いてよい。陸上配備される米軍核は、わが国にとっての「人質」にほかならない。

 それはかつて冷戦期に、駐留米軍の核を自国にとっての人質だと考えた西ドイツのシュミット政権にみられた発想である。同政権は自党内からの激しい批判に晒(さら)されながらも、踏みとどまり冷戦の終結に向けての礎石を築いたのであった。問題は今日の安倍晋三政権に非核二原則化を敢行する決意があるかどうかである。


 折から、自民党の石破茂元防衛相が9月14日、核搭載米艦の日本領海通過や一時寄港の是非を問われて、それを認めた方が抑止力が高まるのであれば、許容すべきであったと語った。ただ、私の知る限りで、石破議員は米軍核のわが国領土配備をよしとするか否かについては何も語っていない。その点もぜひ、話してもらいたい。


 最後に、非核二原則に立つ場合のとるべき核政策について私見を述べる。わが国は核兵器を「作らず、持たない」が、しかし、核兵器開発研究は行うべきだ。研究を行うことと、実際に核兵器を持つこととは同じではない。ただ、核兵器能力を持ち、静かにそれを外国に、殊に北朝鮮をはじめ周辺の核保有国に対して示すことは、安全保障政策として必要である。それが、わが国の転換点となろう。(防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛 させ まさもり)











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