二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

シンスプリントについて

2008年03月05日 | スポーツ障害
当院は野球選手が多く来院しますが、最近はサッカー、バスケットボール、クラッシックバレー、ハンドボール、バレーボールなど多くの若い選手たちが痛みを訴えて来院します。様子を見ていると、このところ多い疾患が”シンスプリント”です。

『シンスプリント shin splints 』
日本整形外科学会篇『整形外科学用語集』によると「過労性脛部痛」とされており、一般的には、運動および運動後に、下腿の中下1/3の脛骨(shinとは、むこうずね のこと)内側部に慢性的な疼痛が出現し、また同部に圧痛があるものとされています。

ランニングやジャンプを行う全ての競技によく見られるスポーツ障害の代表の一つです。この他に下腿に痛みが起こるスポーツ障害は、脛骨疲労骨折や慢性コンパートメント症候群などがあります。

発症年齢は、運動量が格段に増加する高校に入ってからが多いようです。高校に入るとほとんど毎日が今まで経験したことのないハードな練習となります。体の使い方が上手くできないと下肢にかかる負担はさらに増すものと思われます。さらに基礎体力作りの時期でもありますので、筋肉、その付着部、そして骨などには強い負荷がかかってきます。

≪病 因≫
・ランニングやジャンプ動作により足関節を底背屈しますが、その際、この動作に関わる、ヒラメ筋、長趾屈筋、後脛骨筋、深下腿筋膜の伸張による引っ張り張力が機械的な反復刺激となり、脛骨内側中下部に炎症を起こすと考えられます。
・足のアーチの低下(偏平足)や回内足、脛骨の内反などの身体的要因
・練習時間や練習量などの問題
・グランドや体育館などの地面や床の状況
・シューズの問題
・他の部分の痛みや、違和感を我慢してかばっての運動継続

≪症 状≫
・運動量の増加に伴い、運動時や運動後に脛骨の中下1/3内側後縁の疼痛。
・その部分を押さえると圧痛が強い。
・慢性の難治例では膨隆が見られることがある。
・多くは慢性化し、上級生やベテランでも走ると痛い、押すと痛いという症状を持っていることが多い。
・足底腱膜炎、アキレス腱炎を併発していることもある。
・~Walshらによる疼痛ステージ分類~         
 ステージⅠ:運動後にのみ疼痛あり
 ステージⅡ:運動中に疼痛はあるが、スポーツ活動支障なし
 ステージⅢ:運動中に疼痛あり、スポーツ活動に支障あり
 ステージⅣ:安静時にも慢性的な持続する痛みあり     

≪診 断≫
・整形外科では、Ⅹ線、骨シンチグラム、MRI検査などを行う。
・上記の示すような場所に症状と圧痛があればシンスプリントであると思われる。
・シンスプリントの延長線上に疲労骨折があるかないかはハッキリしませんが、下腿や足の様々な部位に起こる疲労骨折とシンスプリントは関連はあるとは思われまる。
・足を地面についただけで痛む場合、あるいは脛骨の中央や内くるぶしに運動痛や圧痛が強い場合は、整形外科で一度診察して頂いたほうが良いと思われます。疲労骨折があったり、跳躍型の疲労骨折では慢性化、悪化しやすい場合もあるからです。

≪治 療≫
・まず、運動量を減らすか、または、ランニング、ジャンプなどを休止して頂きます。中にはチームの関係上どうしても練習を続けながら…という場合もありますが、治りは遅くなりますよ
・急性期(強い炎症期)には冷却。
・上記ステージⅢくらいの状態であれば、早期に対処すれば治りが早いと思われます。ほとんどの選手が出来る限りギリギリまで我慢して練習しています。少しでも痛みが回復するとすぐにでも練習に入りたい勢いです。回復してきたら徐々に運動量を増やしていくことが大切でしょう。
・身体を診ながら、なぜ痛みが起こったのかを理解してもらい、身体のバランスをみていきます。以外に足関節や股関節が硬く動きが悪かったり、姿勢が悪かったり、上半身と下半身が連動して上手に使えてなかったりしますので、その辺りを診ながら全身調整の鍼治療を行い、局所の鍼治療とパルス通電、関節のストレッチ、適宜テーピングなどを行います。
・痛みの状態にもよりますが、はじめは週2回か3回、その後徐々に治療間隔を伸ばしていき、1ヶ月あれば良い状態になってきます。
・治療の間に、姿勢の大切さ、身体感覚や重心の考え方、走り方など痛みの原因の一要因と思われるものを選手と一緒に考えていき、ケガのしにくい体を目指していきます。
・圧痛などは両足に反応が出ていることが多く、治療はほとんどの場合、両足に行います。

骨・筋肉ともに伸び盛りで、まさに筋肉が発達する、あるいは身長も伸びる成長期の選手は、様々な場所に負荷がかかりやすいようです。ことに練習量が多くなった時期や、ランニング、ジャンプなどの基礎練習が多くなった場合には発症の割合が高くなるのでしょう。

予防には、下肢の筋力強化と、ウォーミングアップ・クールダウンの徹底、痛みのある場合は早めのアイシングなどです。楽しく、全力でプレーするためには、自分の身体もしっかり見つめてあげることが大切であるし、ケガをしたら何が原因なのかしっかり把握することも大切でしょう。

頑張れ 明日を担う若きアスリートたち
コメント (27)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする