PRINCOの今日のパチパチ
Sidosso Princoちゃんの思わず拍手パチパチ記録
 



『夜明けのすべて』観てきました。パチパチ!
原作は未読。瀬尾まいこの『そして、バトンは渡された』は、どうも自分には理解が進まなかったので、あまり期待していなかったのですが、監督が『ケイコ 目を澄ませて』の人だったし、映友が今年のベスト候補だ!と絶賛するのでいそいそと。

朝ドラの『カムカムエヴリバディ』で夫婦役だった松村北斗と上白石萌音が、今回は会社の同僚役で主演しています。藤間爽子も出てて思わず「あ、タイ子ちゃんやないの!」と(^^)

PMSに苦しむ藤沢さんとパニック障害を抱える山添くん、どうにかしなきゃと、もがけばもがくほどぬかるみに足を取られる。パーキンソン病の母親、実は自死遺族の元の会社の上司、今の会社の社長。バリバリ働いているように見えて、訳アリっぽい人や同僚たち。みんな見えない傷を抱えながら毎日を淡々と暮らしている。途中から「一体どこへ着地するのだろう」と思っていたのですが、ラストですべて伏線回収されました。ああそういうことだったのか、、、、、と、もう涙があふれて止まりませんでした。「夜についてのメモ」をもう一度味わいたくて、パンフも買いました。そしたら全文がちゃんと載ってました。わーい。




以下ネタバレあり。反転させて読んでください。












パニック障害で電車に乗れなくなり転職した山添くんは、自分で自分の将来を呪い、腐っています。せっかく「一緒に頑張ろう」と声を掛けてくれた先輩の藤沢さんにも、パニック障害とPMSは違うと拒絶してしまう。しかし、自分はもしかしたら藤沢さんのことを助けることが出来るかもしれないと気づいてからめきめき変わっていきます。

藤沢さんの家に忘れ物を届けに自転車に乗る場面。行きは坂道を自転車を押しながら歩くのですが、帰りは緩やかなくだり坂をのびのびとすすんでいきます。光の使い方もよくて、山添くんの心が変化していくのを自転車に乗ることだけで表現した素晴らしいシーンでした。やがて山添くんが会社を変わらないと宣言して、今の仕事をイキイキと語る場面で、それを聞いていた元上司が思わず涙を流すのですが、あのシーンは私もヤバかった(^^;)

中学校の体育館で開催される、移動式プラネタリウムの原稿作成とナレーションをそれぞれ担当することになっていた山添くんと藤沢さんは、いっしょに仕事を進めながら心の距離を近づけていきます。しかし恋人にはなりません。あくまでも生き辛さを抱えた同志。
会社には社長の弟によって30年前に吹き込まれたカセットテープのナレーションがあり、それを文字起こししながら、原稿を作っていました。そのテープは社長弟が自死したこともあってか、途中までしかなく、ナレーションの最後をどうやってまとめようか、藤沢さんは悩みます。そんなときに、倉庫にあった手帳に弟さんが遺したメモ書きを見つけ、、、、

プラネタリムのナレーションをどうやってまとめるかと悩んでいた主人公と、この映画をどうやって終わらせるのか気になっていた私の思いが見事にクロスしました。
そして遺された「夜についてのメモ」を藤沢さんが読むシーンで涙腺崩壊。上白石萌音の優しい声はホントいいなあ。
病気になっていいことなんてあるのかと問う山添くんに「私はヨガをやるようになったから身体が柔らかくなったよー」と答える藤沢さん。
病気になっていいことなんてない。だけど、病気になったからこそ世界の広さや生き物の多様性、人のありがたみを知った。そして明日、誰も知らない私の夜明けがやって来る、、、、、そんな温かな余韻を持ったラストでした。




~夜についてのメモ~

夜明け前がいちばん暗い。
これはイギリスのことわざだが、人間は古来から(※)夜明けに希望を感じる生き物のようだ。
たしかに、朝が存在しなければ、あらゆる生命は誕生しなかっただろう。
しかし、夜が存在しなければ、地球の外の世界に気づくこともできなかっただろう。
夜がやってくるから、私たちは闇の向こうの途轍もない広がりを想像することができる。
私はしばしば、このままずっと夜が続いてほしい、永遠に夜空を眺めていたいと思う。
暗闇と静寂が私をこの世界に繋ぎとめている。
どこか別の街で暮らす誰かは眠れぬ夜を過ごし、朝が来るのを待ちわびているかも知れない。
しかし、そんな人間たちの感情とは無関係に、この世界は動いている。
地球が時速1700キロメートルで自転している限り、夜も朝も等しくめぐって来る。
そして、地球が時速11万キロメートルで公転している限り、同じ夜や朝は存在し得ない。
いま、ここにしかない闇と光 ーー すべては移り変わっていく。
一つの科学的な真実 ーー 喜びに満ちた日も、悲しみに沈んだ日も、
地球が動き続ける限り、必ず終わる。
そして、新しい夜明けがやって来る。


※「古来」もしくは「古から」


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