教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

1940年代日本における全国教育団体の変容と再編

2014年08月17日 16時14分14秒 | 教育会史研究

 みなさん、お盆休みはきちんと取りましたでしょうか。しっかり仕事をするためにも、しっかり休みましょう。
 私は、幸いに比較的うまい具合に休めました。明日から今まで以上に超多忙な日々がやってきますが、なんとかスタートは切れそうです。

 さて、研究論文業績一覧に挙げておきながら、紹介していない論文がもう一つありました。24番の「1940年代日本における全国教育団体の変容と再編(年表解説)」(教育情報回路研究会編『近代日本における教育情報回路と教育統制に関する総合的研究』 日本学術振興会科学研究費助成事業(基盤研究(B))中間報告書(Ⅰ)、東北大学大学院教育学研究科内教育情報回路研究会、2012年、1~10頁)です。2013年3月付で発行された梶山雅史氏代表の科研グループ報告書に掲載された小論(解説3頁・残り年表)です。

 本論文は、1940年代日本における全国教育団体の変容と再編とについて作成した年表について、その概要を解説したものです。年表は、1940年代を中心に1950年代初頭までを対象時期にして、中央教育会(帝国教育会・大日本教育会・日本教育会・日本教育協会・日本連合教育会)の組織再編にかかわる事項と大規模事業、および1940年代後半以降は日本教職員組合の結成にかかわる事項と大規模事業、都道府県教育会の解散、都道府県教職員組合の結成について整理しました。なお、教組の結成年月については、異説がありすぎるので、とりあえず『日教組十年史』に依拠しています。ですので、完璧な年表ができたとは思っていません。
 解説部分の構成は以下の通り。

 はじめに
1.1940年代前半における教育会の統合再編と教育職能団体の形成
2.1940年代後半における教員組合の勃興と教育会(教育職能団体)の解体・再編
 今後の課題

 1940年代を前半・後半に分けて、教育会の組織再編と教職員組合の勃興との関連に注目して、全国教育団体の変容過程を概説しました。
 1940年代前半における全国教育団体の変容・再編は、1930年代以来の教育団体の統合と、文部大臣を頂点とした全国の全学校教職員を包摂する一大職能団体の誕生を同時に実現させました。1940年代後半には、このように成立した中央教育会が解体されます。1940年代後半における中央教育会の解体は、全国・学校種をカバーする職能団体の解体にほかなりませんでした。解体に至った背景には、中央教育会の連合単位であった地方教育会の解体・不安定化があります。1940年代後半には、日本教職員組合が結成される一方で、いくつかの地方教育会の連合によって中央教育会としての日本教育協会がつくられました。
 しかし、日教組・日本教育協会は、ともに職能団体として教員の職能向上機能を十分展開することはできませんでした。教員の待遇改善が叫ばれるなか、教育会の解体と教職員組合の勃興によって、ある意味で「後回しにされた」職能団体的機能は、どこがどのように担うようになったか。そのあたりを明らかにするには、1950年代の教育団体史研究が必要です。

 とまあ、こんな感じの解説です。ちなみに、「後回しにされた」職能団体的機能に関する研究は、1940年代後半以降の各種教育研究団体・校長会などの勃興や、教職員組合の教育研究活動の開始(1951年~)などが重要な検討課題だと思っています。もちろん、戦後に「生き残った」教育会や、1970年代以降に「復活した」教育会(日本教育会やその支部など)についても、気になる課題です。そもそも「職能団体」という言葉の同時代的意味や歴史的意義もしっかりとらえなければなりません。

 今までの戦後日本教育団体史は、教職員組合中心史(とくに待遇改善中心史)または個別団体史ともいうべき様相を呈していましたが、その直前まで巨大な組織規模を誇っていた教育会の歴史と連続させて、その歴史像を再構築することは大事なことだと思います。とくに、日本の現状において教職員組合の衰退・課題が大きく取りざたされるなか、教組だけでない教育団体・教員団体の将来のあり方を考えるうえで、教育団体史の再構築は重要な研究課題なんじゃないでしょうか。そのためには、もちろん冷静・客観的な教組史研究も大事ですね。いろんな意味できわめて難しい課題ですけども。
 戦後の中央教育会史研究については、2009年に一度発表しました(口頭発表業績一覧の20番)。しかし、その成果は凍結したままですので、そのうち「解凍」・再検討して活字化しようと思います。

コメント
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