教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

教育は資質能力の育成にどう関わるか

2021年01月03日 23時55分55秒 | 教育研究メモ
 教育は資質能力の育成にどのように関わるか。
 資質能力は特定の個人に備わるもので、それだけを切り離して譲渡することはできない。教育は資質能力を育成することが可能だが、教育者の資質能力が被教育者に直接伝達されるのではない。教育者が提供する教材(知識や技術、価値観などを含む、教えるべき価値ある文化財)を学習者が自らの学習材として学習する過程で、学習者は自らの様々な資質能力を刺激され、働かせる。こうした過程で、学習者のもともともつ資質能力が、目覚め、開発、強化、変質する。つまり、資質能力は、学習を通して学習者が自ら育成するものである。被教育者が教育の客体であると同時に学習の主体であるからこそ、資質能力の育成は可能になる。
 資質能力育成が学習の結果だとはいえ、教育者は資質能力育成に対して関わることはできる。教育者が資質能力育成に関わるには、被教育者=学習者の可能性を見極め、被教育者=学習者の個性に応じてそのの資質能力育成を支援することが可能である。教育は知識や技術、価値観などの伝達だけを介して成立可能だが、それだけでは資質能力の育成を支援するには不十分である。まずもって、資質能力育成を支援しようとする意欲が必要である。
 育成すべき資質能力は、学習者が今、そしてこれからどのように生きていきたいかに応じて決まる。教育者は、すべての学習者の欲求に応じる支援を準備することはできないが、一般的な傾向を把握して、調整しながら実践することは可能である。教育者の学習者の欲求は、その生きる文化や時代に影響を受けて形成されるから、文化や時代を理解することで学習者の一般的な欲求を推し量ることは可能である。
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