ALL FLOWERS IN TIME(FM COCOLO) #2

2011年02月13日 | 佐野元春 Radio Days

■ALL FLOWERS IN TIME #2
2011年2月12日(土) FM COCOLO 19:00 - 20:00
http://www.cocolo.co.jp/contpgm2/w_main.php?oya_id=278
出演: 佐野元春

Play List
1 ジュジュ / 佐野元春
2 アンジェリーナ / 佐野元春
3 New Age / 佐野元春
4 Strange Days / 佐野元春
5 水上バスに乗って / 佐野元春
6 荒野の何処かで / 佐野元春
7 Young Forever / 佐野元春
8 日曜の朝の憂鬱 / 佐野元春
9 シュガータイム / 佐野元春
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■内容の一部を抜粋
2010年春からFM802の支援を受けているFM COCOLOは"WHOLE EARTH STATION"をキャッチ・フレーズにして四十五歳以上の世代を対象にした大人のためのラジオ局として生まれ変わった。土曜日午後7時からのこの枠は月代わりでミュージシャンがDJを担当する。今月二月は佐野元春をフィーチャー。

全四回放送の第二回目、今週のテーマは「RECORDING」。

・ジュジュ
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。
「今回はホーボーキングバンドと一緒にモータウン・サウンドに挑戦しました」と元春。

Q1 レコーディングを行うとき、最もこだわることはなんですか?
サウンド作りに時間とお金をかけるそうだ。'80年代は日本のレコーディング環境に満足できなかったので、海外、ニューヨークやロンドンに行ってレコーディングする機会が多かったという。そこで出会ったロックンロールの歴史を深く刻んだエンジニア、プロデューサー、ミュージシャンたちからいろんなことを学んだとか。

Q2 そんなレコーディングの中で感じる音楽の持つ力とはどんなものですか?
文化の違う人間が一堂に集まり、ロックンロールを通じてひとつになれるということ。

・アンジェリーナ
元春: 「アンジェリーナ」は僕が1980年、『Back To The Street』というデビュー・アルバムに収録した曲であり、僕の最初のシングル・カット曲ですよね。僕が聴いてきたそれまでの日本語の曲というと、3分間の中で文字量が、全体を10とすると文字の量が6ぐらいに聴こえた。でも僕は「アンジェリーナ」という曲でもって、その文字の量を倍に増やしたかったんですね。というのは僕の上のジェネレーションが感じる情報処理能力よりも(笑)、若いほうが当然情報処理能力が高いわけで、3分間ウダウダ同じようなこと歌ってられてもつまんないなという話があって、それだったらば聴き手が追いついていけないくらい情報量がいっぱい詰まった詩が書きたい。で、ロックンロールのビートに乗せてそれを歌いたい。そのへんのことを考えて作ったのが「アンジェリーナ」でした。

Q3 今まででいちばん印象深いレコーディング・スタジオはどこですか?
ロンドンのオリンピック・スタジオ。UKのロックンロール・バンドが名盤を作ってきた歴史があるので雰囲気があった。元春がレコーディングしてたときには、二階でポール・マッカートニーやティアーズ・フォー・フィアーズがレコーディングしていたという。いちばん印象深いのはまだフレディ・マーキュリーが生きていた頃のクィーンがレコーディングしてたことだそうだ。朝早くスタジオに行って、アシスタント・レコーディング・エンジニアに「クィーンのレコーディング・スタジオを見たい」って言って、まだクィーンが来る前のスタジオを見学したのだという。

Q4 1983年にニューヨークでレコーディングを行いましたが、ニューヨークに求めたものはなんだったんですか?
元春: 1980年代中盤に差し掛かる頃、僕は日本でのキャリアを一旦横において、ニューヨークにかなり長い間住むことになるんですよね。そこで誰もやったことがないサウンドを作り出したい。そういうのが僕の希望としてあった。レコーディングの方法も日本にいる限り日本でのやり方でしかないですから、やはりニューヨークに行って、インターナショナルな世界基準のレコーディングの方法をスキルとして身につけたい。こういうのがあったんですね。当時最も僕の心を捉えたのはストリート・レベルで起こっていたヒップホップ・カルチャーの炸裂ですよね。僕と同じ年格好の若い連中がみんなマンハッタンに入ってきてました。西ドイツから、東アジアから、フランスからね、カナダから、みんな集まってた。そういう連中たちがここでヒップホップ、ラップの音楽をやってるのを見て、これは面白いなと思い、僕はファーイーストから来ましたので、日本語を使ってのラップ音楽を作ってみんなのことをびっくりさせようと、そんなところから、ニューヨークでのレコーディングはヒップホップ傾向の強いアルバムになりましたね。それが『Visitors』です。

Q5 その当時、佐野さんが感じたヒップホップの魅力とは何だったんですか?
元春: ヒップホップだか何だかそんな名前はどうでもよかった。僕ははなっから言葉と音楽に興味を持ってたし、特に'60年代ボブ・ディランの楽曲を聴くと、例えば「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」などは今聴いても言葉が中心となったスキッフル・ビートのロックンロール、それをヒップホップ、ラップの様式に変えてやろうとすればできなくはないと思うんですよね。ですので僕が興味があるのはヒップホップとかロックンロールとか、そうした様式ではなく、そこで何が歌われてるのか、言葉とビートの関係はごきげんなのかどうか、そこが僕のいちばんの関心事です。

・New Age
元春: これはアルバム『Visitors』に収録した曲ですよね。当時まだインターネットはなかったんですけれども、'80年代半ば頃の話ですから。ただ社会学者なんかがいろんなことを物を言いはじめていて、いわゆる産業が中心の社会から情報が中心の社会に変わろうとしているなんてことを予見してる社会学者など出て来始めた頃なんですね。で、僕も当時二十代にあって、何かこうこれからの世界どういうふうに捉えようかなというのにすごく興味があった。地球というものがひとつ神経細胞的な広がりをもって、それが後のネットワークというふうに言われることになるんですけれども。そして国境を越えて時間を越えて人々が結びつき合う、そんな世界がもうすぐ来てるんじゃないかなという予感があり、それに伴う痛みとか、それに伴う喜びとか、そういうのを3分間のロックンロールにできないのかなぁなんて思って作ったのがこの「New Age」という曲ですね。

Q6 佐野さんがレコーディングする中で大切にしてることってなんですか?
偶然なのだという。物事を理知的に進めて行って得られる結果もわかるが、それは予想される結果。音楽を制作する現場でいちばん大切なものは1+1が3にも4にも5にもなるという公式。そのためにはレコーディングへの取り組みは柔軟でなければいけないし、子どものような心、子どものような目を持って音楽に接しないと素晴らしい偶然というのは出てこない。バンドの仲間とバカ話をしながら、そのバカ話の中から瓢箪から駒のようにいいアイディアが出てくることがある。言ってみれば遊び。そうした遊びの精神を大切にしていると元春。

Q7 曲ができてレコーディングに進む、その間のプロセスはどうなってるんですか?
詩や曲はデジタル・レコーダの中に留めておいて、他のミュージシャンと緻密なコミュニケーションが必要なものはデモ・テープを作り、その必要のない、直感的にジャム・セッションで良い結果が得られると思ったものは、頭の中で組み立てて、リハーサルでバンドにフレーズなどを指定して、アンサンブルを聴きながら段々まとめ上げてゆく、クラシック音楽でいうと指揮者のような役割をしていると元春。

・水上バスに乗って
元春: '90年代にリリースした『FRUITS』というアルバムに収録した曲「水上バスに乗って」ですよね。レコーディングには10年くらい年の違うプレイグスというバンドとやりました。深沼元昭、後に僕のサブバンド、コヨーテバンドのギタリストとして活躍してくれる人なんですけれども、その彼のバンド、プレイグスをバックに歌った曲ですね。それまで僕は十数年来、exバンドであるハートランドをバックに歌ってきたわけですけれども、そうしてハートランド以外のバンドで演奏し、レコーディングするのはこれが初めての経験となりました。

Q8 ライヴでレコーディングされたものと違ったアレンジで演奏される曲もありますが、それはなぜですか?
元春: よく'80年代、'90年代とレコードにした曲をライヴでは大幅にアレンジを変えて披露することも多かったですね。それはなぜかと言うと演奏を楽しみたかったからです。そして長い長いツアー、同じ曲を同じかたちで何回も演奏すると飽きてしまいますから、そうすると演奏のスリルというものがなくなり、そうするとライヴに活気がなくなってくるんですね。僕自身もバンドも常にその楽曲に新しい新鮮な気持ちで付き合いたかったので、どんどんツアーの中でアレンジを変えてゆくという結果になりました。

・荒野の何処かで
元春: 僕は2004年に自分のレーベルを設立します。DaisyMusicレーベルですね。で、そのDaisyMusicレーベルからの第一弾アルバムが『THE SUN』。それに続く二枚目のアルバムがこの『COYOTE』ですね。それまでのサ・ホーボーキングバンドではなく、新しいバンドを求めて、僕よりもずっとキャリアの若いドラム、ベース、ギター、キーボードを集めてのレコーディングとなりました。何を歌いたいか明確な時でしたから、『COYOTE』というアルバムは自分のキャリアの中でも、すごくうまくいったいいアルバムになりましたね。

・山下久美子からのメッセージ
久美子: 山下久美子です。佐野くん、お元気ですか? まずは30周年おめでとうございます。同じデビューということで、'80年代はいろんな場面でご一緒させていただくことがたくさんあったから、今でも思い出すことがものすごくあって、なかなか短い時間では語り尽くせなかったりする(笑)、そのくらい、ものすごく胸に溢れてしまうという、そんな感じで困ってしまうんですけれど。今回30周年を迎えたということで、今もなお佐野くんがものすごく元気で、キラキラ輝いて活躍してるってことが、すっごくうれしいです。そしてこれからも素敵に思い描いてることを、いろんな形にしてゆくんだろうなと、そんなふうに思うと楽しみでしょうがないんですけれど。あの、ちょぅど20周年のとき、佐野くんとお会いして、「これは僕にとって通過点だ」と語ってたことが、すっごい印象に残ってまして。きっと、だから今もそういう大きな通過点を過ごしてるんだろうなぁっていうふうに勝手に想像しています。そして、ちょっと余談ですが、その頃、双子の娘の一人を、一歳になったばかりの娘を連れて佐野くんのコンサート、渋谷公会堂、我々にとってもひじょうに思い出深い場所にて、佐野くんのコーサートを観に行ったことが、今もすっごい私にとっては大切な宝物のような思い出になってるんですけど。娘がすごーい楽しそうに佐野くんのライヴを最初から最後までニコニコで踊りながら観ていた姿が、なんかとっても微笑ましいといいますか、すっごく一緒に過ごせたというか、同じく空間とか時間を共有できたことが、とっても私誇らしくて。なんていっても彼女にとって初めてのコンサートが佐野元春だよって(笑)、いつか誰かに語るってことが、私はなんか今からとても楽しみでしょうがありません。そういうことも含めていろんな場面でいつも佐野くんに力をもらってるような気がしてます。是非、これからも、益々輝いて、益々真のアーティストとして、いろいろな思いを貫いてほしいなと思います。今度3月6日の大阪城ホールでのコンサート、すごく楽しみにしてます。十年ぶりでしょうか、一緒に歌えるのは。本当に楽しみにしてます。これからも是非、がんばってください。山下久美子でした。

元春: 3月6日、大阪城ホールでの僕の30周年アニバーサリー・ツアー・ファイナル。僕の友人である山下久美子さんも出演してくれるということ、うれしいですね。みなさんも楽しみにしていてください。では、ここで先月リリースした僕のニュー・アルバム『月と専制君主』から、オリジナルは1984年のアルバム『Visitors』からの一曲、「日曜の朝の憂鬱」。

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2 コメント

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レコーディング秘話と山下久美子さんとの共演 (korokoro)
2011-02-14 02:15:53
どいさん、こんばんは。

今回のALL FLOWERS IN TIME#2も充実していましたね。RECORDINGにまつわるお話とても興味深かったです。また「偶然」という言葉が印象に残りました。その場限りで起こる偶然はのちに大きなものに繋がるんですね。ピュアな気持ちを僕も大切にしたいです。

そして山下久美子さんとの共演。僕も彼女のライブはまだ生で観たことがないので、今回どんなステージが繰り広げられるのか楽しみです。
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Unknown (どい)
2011-02-14 23:52:23
☆korokoroさん
コメント、ありがとうございます。
今回は「日曜の朝の憂鬱」がよかったです。
なんというか味わい深い曲ですね。
アルバム『月と先制君主』は長く聴き続ける愛聴盤となりそうです。

山下久美子さんとの共演もノスタルジーではなく、なにか与えてくれることを期待したいです。
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