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少しずつ

暮れに親父が亡くなった。
もう覚悟はしていたので、ただ受け止めるしかなかった。
「昨日今日とは思わざりしを」という気持ちもあるが、
避けられないことである。
葬儀も済んだ。親父の骨は丈夫そうな骨だった。
一通りの事が済んで、四十九日を待っているある日、
朝から雪が降った。
私はダイニングでぼんやりと独り、窓越しに降る雪を眺めていた。
ふっと静かな時間が流れて、音もなく雪は舞っている。
その時初めて、「ああ親父は本当に死んでしまったのだな。」と思った。
人は死んだときに全て死んでしまうのではなくて、
こういうふうに少しずつ、親しかった者の心の中で、別れを告げて行くものなのかもしれない。
初めて親父が遠くに離れて行ったような気がして、
私はただ黙って窓を見つめているしかなかった。
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