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繋がれた三段跳びの命脈

全日本実業団陸上を見ていたら、女子三段跳びで3位に入った選手が、男子三段跳びの日本記録(17m15)保持者・山下訓史(やました・のりふみ)さんのお嬢さんだと知ってびっくりした。
山下選手の記録はもう36年間破られていない大記録である。日本人初の17mジャンパーだ。
実は私はその現場を間近で目撃している。1986年の日本選手権、旧国立競技場でのことだった。
私は日頃さほど試合を見ていたわけではないが、その時はたまたま見たくなって出かけていた。
山下選手は練習の時から調子がよさそうだった。
スピードも出ていた。そしてゴム毬のような、というかスーパーボールのような、というか、とにかくバネがものすごく利いている動きだった。
スタジアム全体が、「今日は何か起こるぞ」という雰囲気になっていた。
そのちょっと異様な期待感の中、山下選手は見事に17mの壁を突破した。
ちょっと忘れられない記憶である。
私もちょっと陸上競技をかじったことがあるが、それは織田幹雄さんの自伝を読んであこがれたのが入口だった。
もちろん私の実力などお笑い種で、町内大会レベルのものである。
それでも三段跳びという競技の難しさはほんのちょっぴり分かる気がする。
会心の、すべてにスピードとバランスが調和したジャンプなど、競技人生の中でそう何度も経験できない競技だと思う。
山下選手は、聞いた話では、お子さんに日本記録のことなど一切話していなかったそうである。
しかし息子さん二人と娘さんは、今や全国大会レベルの(いや息子さん二人はオリンピック代表にまでなっている)選手である。
息子さんのお一人と娘さんは、お父さんと同じ三段跳び選手。
語らなくても自然にお父さんのすごさは、お子さんに理解されていたのだろう。
かつて日本のお家芸だった三段跳び。その命脈はこんなところにも息づいていたのだな、とちょっと心を打たれた。

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